「好き」と「努力」が切り拓いた起業への道
クリエイティブサロン Vol.247 山下悦令氏

「売り方プロデューサー」の肩書を掲げ、Twitterを中心としたSNSの発信サポートやオンライン講座での講師業などに取り組むほか、これまで万年筆に関する電子書籍を2冊上梓した経験も持つスポットライトの代表、山下悦令氏。「人・モノ・コトにスポットライトをあてて輝かせる」をコンセプトに、「売る」や「伝える」に悩む企業のサポートに取り組む山下氏が、自らの過去・現在・未来について語った。

山下悦令氏

捨てられなかった夢「起業」を実現

「小学3年生から野球一筋」と語る山下さん。中学時代は全国大会にも出場し、高校生になると体育科で野球三昧の日々を送っていた。その後、指導者としても大学のソフトボール部や国体チームの監督を歴任した経験を持つ。今も大学ソフトボール部でアドバイザーを務めるなど、スポーツと関わり続ける山下氏の社会人生活は旅行専門紙の会社から始まった。紙面作成や広告制作などを担当しながら5年ほど働くも、お客さんと直接やり取りがしたいと考えるようになり、父親が印刷関連の仕事で独立した影響もあって、印刷会社に転職。カタログやチラシ、モデルオーディションや撮影など多彩な業務の経験を積んだ。だが結婚を機に働く環境を変えたいと再び転職を決意。物販を経験したいと商社に入社し、販売企画やカタログ作成、SNS更新、さらにはインスタライブ出演などに取り組んだ。だがコロナ禍で社会が変化する中、山下氏の心にはある想いが湧きあがる。

「結婚して子どもが生まれて成長するに従い、夢である起業のハードルが上がるのを感じていて、夢を諦めるべきなのか悩みました」

悩んだ末に起業を決意した山下氏。その決意には理由があった。

「『良い商品でも、認知されなければ売れないのでちゃんと良さを伝えて必要な人に届けたい』と『向上心を持って仕事に取り組む人が活躍できる場所を作りたい』という2つの“想い”です。そこで『そんな悩みを持つ企業は多いはずだ』と考え、自分が持つ売ることに関するスキルを活かせば企業の力になれるんじゃないかと考えたんです」

こうして、2022年3月の「一粒万倍日」「天赦日」「寅の日」が重なる最強開運日に開業届を提出して独立開業した。

セミナー風景
講師として「Twitter活用術」のテーマで登壇(2022年12月 / 大阪産業創造館)

どん底経験が「強み」を際立たせた

実は独立前、開業日に向け「1日8時間Twitterと向き合う」や「1日10ツイート×100日チャレンジ宣言」など、SNSを活用して独立前から動いていた。しかも、これらの取り組みがたった10日で1000フォロワーを達成したり、100名を超えるライティングスクールの講師を依頼されるなど、独立後の成長につながるきっかけを生み出した。

「今思えば大変な努力なのかもしれませんが、当時は覚悟があったので全然苦痛じゃなかった。Twitterが仕事になるとは思っていませんでしたが、Twitterで人生を変えようという気持ちで取り組んでいましたね」

独立後は大阪デザイン振興プラザ(ODP)に入所。入所仲間から仕事の依頼を受けたり、自主開催でセミナー講師を担当するなど、着実にネットワークを広げている。そんな山下氏だが、「高校2年の時に人生でどん底を味わった」と語る。

「それまで順風満帆な野球人生でしたが、骨折を機になかなか試合に出られない日々が続きました。その時は野球が大嫌いになって、野球を辞めたい気持ちしかなかった。でもそんなある時、大和川の土手で寝ていたら、夢の中で神様に殴られて目が覚めたような気持ちになったんです。そして毎日ひとりで朝練をはじめたら、不思議とまた試合に出られるようになりました」

どん底から立ち直った経験を通じて、自分には特に飛び抜けた才能がないために鬼努力するしかないことに気づき、その結果『誰にでもできることを誰にでもできないレベルでする』ことが自分の強みになった、と山下氏。

出版した電子書籍『印象を良くする万年筆戦略』と『万年筆で人生を切り拓く』
上梓した電子書籍2冊は、ともにAmazonのベストセラー1位を獲得

万年筆が人生を変えた

2022年3月に独立開業した山下氏だが、実は万年筆愛用歴が20年以上という。長い愛用歴に加えてさまざまな万年筆を使った経験をもとに、万年筆に関する2冊の電子書籍を上梓しており、2冊ともAmazonのベストセラー1位を獲得している。万年筆愛好家になったのは、自分の文字に対するコンプレックスがきっかけになったという。

「宛名書きや書類記入など、とにかく仕事の中で『書く仕事』が一番嫌いでした。でも、万年筆を使うようになって書くことが楽しくなり、その結果仕事が楽しくなったんです」

万年筆を使いはじめてからは、転職活動の履歴書や資料送付時の一筆箋に記す文字、商談時のメモなど、すべて万年筆を使うようになった。すると思わぬ効果が生まれた。

「面接は上手くいくし、資料送付相手から電話があって商談に発展したり、万年筆が話題のきっかけとなって商談が上手くいくなど、良い効果がたくさんありました。きっとプロ野球選手がバットやグローブにこだわるように、万年筆へのこだわりが成功への意欲を盛り上げ、成功に導いてくれたのだと思います」

山下氏自身、万年筆が自分の人生を変えてくれたと考えている。

「自分と同じように文字にコンプレックスを持つ多くの人と巡りあえましたし、書いた文字が汚いという自分自身の弱みと向き合うことができました。しかも、それによって万年筆と出会い、電子書籍まで出版できて自分の強みにすることができましたから『万年筆が人生を変えた』と言えると思います」

「伝える力」でお客様の悩みを解決したい

独立後はコンサルティングや講師、ネットショップの運営のほか、コンテンツ制作のライティングなど、多彩なジャンルの仕事に取り組んでいる。

「どんなジャンルの仕事でも、自ら実践&経験して仕組みを理解し、他の人に自信を持っておすすめできる状態になってから取り組むことを意識しています。最近はジャンルの幅が広がりすぎて、名刺に入れる自分の肩書きをどうするか悩むこともありますが(笑)」

今後は「売り方×伝え方」の戦略構築を強みとして、お客様の素敵な商品やサービスが必要な人に届くよう、伝える力で企業さんの悩みを解決していきたいと話す。

「今後は、たくさんのプロジェクトに関わり、さまざまなクリエイターと仕事をしたい。それが、スポットライトのコンセプトを実現することに繋がると思っています」

好きな万年筆と野球やSNS発信で培った努力で磨かれた山下氏の「伝え方」で、これからも多くの人・モノ・コトにスポットライトがあたり、輝くことだろう。

イベント風景

イベント概要

人・モノ・コトにスポットライトを当てて輝かせる。伝えることの難しさと大切さ。
クリエイティブサロン Vol.247 山下悦令氏

屋号のスポットライトには、2つの“想い”を込めています。ひとつは、情報や商品・サービスが溢れる時代に、いい商品だけが売れるわけではありません。そんな埋もれる時代に、素敵な商品・サービスにスポットライトを当てて輝かせる。もう一つは、自分の好きや得意なことで、自由に働きたい人にスポットライトを当てて輝かせるです。仕事をする上で、想いや伝えたいことをいかに相手に分かりやすく伝えるかを大切にしてきました。“想い”を言語化すること、自分の力で稼ぐための選択肢を増やすことについてお話しできればと思います。

開催日:

山下悦令氏(やました よしのり)

スポットライト 代表
売り方プロデューサー

1979年7月4日大阪府生まれ、43歳。旅行業界紙の出版社・印刷会社・商社を経て2022年独立。売上アップ・ブランディングの活動に紙媒体からSNSまでフル活用。独立後、デザイン会社の社長などのTwitter発信についてサポート。100名を超えるライティングスクールでTwitter講師&ストアカ講師。万年筆の電子書籍を2冊出版し15部門で売筋1位 ダブルベストセラー。自身のTwitterはえつという名前で活動し、10日で1000フォロワー、1日10ツイート×100日更新、ツイート添削50名以上。その他、企業のnote執筆代行やHP更新などの広報活動を行なっています。

https://spotwrite-fp.com/

山下悦令氏

公開:
取材・文:中直照氏(株式会社ショートカプチーノ

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。