「手の届く一人でも多くの人を幸せにする」ための会社経営をめざす
クリエイティブサロン Vol.233 須田亘輝氏

文系大学を卒業して働きはじめた営業職を退職し、クリエイティブの世界に飛び込んだ株式会社blissCreativeの代表取締役・須田亘輝氏。現在は、多くの企業のブランディングやマーケティングのトータルサポートに携わっている。そんな須田氏が掲げる人生の目標が「クリエイティブの力で、手の届く一人でも多くの人を幸せにする」というもの。今回は、クリエイティブの世界に飛び込んだきっかけやこれまでの道のり、自分自身の夢などについて語った。

須田亘輝氏

職業訓練校でデザインする楽しさに気づく

兵庫県出身で文系の大学を卒業し、インテリアメーカーに就職して営業として働きはじめたが退職。その後、職業訓練校に入学した時に出会ったのがデザインだった。職業訓練校でデザインの基本やソフトの使い方を学ぶ中で、新たな自身の興味分野に気づくことになる。「デザインだけじゃなく、Photoshopを使った画像加工なんかも楽しくて。『デザインの仕事をしたい』と思いました」

クリエイティブ系の会社は東京の方が多いと考えて東京で就職活動をした結果、雑誌のデザインなどを手掛けるデザイン会社に就職した。仕事はハードだったが、ここでもPhotoshopでの画像加工が楽しくてやりがいも感じられた。その後、Web制作会社に転職。当初デザイナーとして入社したが、社長に見込まれてディレクターに転向した。

blissCreativeロゴ
https://blisscreative.jp/

コロナ禍での支援活動が、その後の仕事につながる

その後、結婚を機に夫婦の故郷である関西に戻ることを決意し、神戸の制作会社に転職。副業としてデザインの依頼を受けていたが、本業よりも忙しくなって独立を決意。神戸時代の元同僚と二人で株式会社blissCreativeを設立。自分ひとりが食べていくぐらいの仕事はあると考えて起業したものの、最初はうまくいかなかった。「会社設立直後は、仕事がないわけではないが赤字という状態が続いて……。するとコロナ禍に突入し、社会全体が停止したような状態になり、さすがにどうしようかと悩みました」

そんな時、知人であるバンドマンのシステム会社社長が、当時コロナ禍で営業できないライブハウスを支援するWebサイトを作るので手伝ってほしいという相談を受けた。「自分も元バンドマンだったのでその趣旨に賛同し、ロゴ制作やサイトデザインを手伝いました。結局3日間でライブハウスを支援する「SAVE THE LIVEHOUSE」というWebサイトを立ち上げたのですが、多くのアーティストがTwitterなどで紹介してくれて、メディアで紹介されたりして超バズったんです。すると、会社もこれをきっかけに軌道に乗りはじめ、仕事も楽しくなっていきました」

さらに「自分が開発した化粧水を実際に作って販売したい」と相談を受けたお客さまに対しては、Webサイトや広告戦略はもちろんのこと、商品名やパッケージすら決まっていない状態からサポートするなど、マーケティングやクリエイティブをトータルサポートする依頼に応えた。「最適な道筋を提案して成功に導く仕事は、楽しいしやりがいもありました」

「SAVE THE LIVEHOUSE」ウェブサイト
仲間とともに3日間で立ち上げた、コロナ禍のライブハウスを支援するWebサイト「SAVE THE LIVEHOUSE

自主的に考え、主体的に行動するスタッフに感謝

Web、パンフレット、動画など、さまざまなツールを使ってマーケティングやブランディングをトータルサポートするblissCreativeの強みは、多彩な強みを持つスタッフにある、と須田氏。「デザインやシステム、マーケティング、動画など、各人が異なる強みを持っています。お客さまをトータルサポートする上で必要だと考えて、今のようなスタッフ構成をめざしました」

さらにお互いの得意分野を教えあうことで、ひとりで複数のスキルが持てるように取り組んでいるという。「デザイナーはデザインする役割を担いますが、他の人からデザイン以外の仕事を学べば、必ず役に立ちます。お互いの刺激にもなりますし、スキルや知識の幅が広い方が転職しやすいですしね(笑)」

そんな須田氏が今最も力を入れているのが、社内のルール作り。「4人目のスタッフが入社する頃『そろそろ会社らしくすべきかな』と考えるようになり、シェアオフィスを出て事務所を借りました。その頃からルールを決めるようになりました」

ルールはできるだけスタッフと話し合って決めている。「会社は、一人でも多くの人が幸せになるための場所。仕事は頑張ってほしいけど、無理はしないでほしい。縛るためではなく、無理をしすぎないための歯止めとしてルールを決めています」

スタッフのことを最大限に考えながら経営に取り組む須田氏だが、「私が社内で一番意識が低いですよ」と笑う。「多彩な職種のメンバーが揃う分、それぞれ忙しいタイミングも異なります。他のスタッフが忙しい時、各自の判断で自主的に他のスタッフを手伝ったりしてくれます。そんな主体的に行動できるスタッフに囲まれている私は幸せ者です」

イラスト
自社で立ち上げたレディースのヴィンテージアイテムを取扱うユーズドセレクトショップ「ヨキニハカラエ

社員の夢を叶えることが、手の届く範囲の人を幸せにする第一歩

今後は、「トータルブランディングのサポートに強みがある会社として成長していきたい」と語る須田氏。先述した化粧水のほか、BGMサイト「Vace Music Library」では、Webサイトの構築や運用など、トータルブランディングと呼ぶにふさわしい幅広い領域をサポートしている。また、最近はECサイトの構築も増えている。「特に、BASEやShopifyといった低価格でECサイトが構築できるシステムの提案が増えています」

実は自社ECサイトの運営にも取り組んでおり、ここでの経験をお客さまへの提案にフィードバックしている。「アパレル関連のお客さまが多いので、そのご縁でレディースのセレクト古着を販売するECサイトを自社で立ち上げました。担当は『古着屋をやるのが夢』という女性スタッフ。予算を渡し、仕入れやサイト運営など、ほぼすべてを彼女に任せています」

スタッフはプレッシャーを感じていたようだが、須田氏自身は利益よりも大切な目的があった。それは『スタッフの夢を叶える』ということ。「『古着屋をやる』という夢を叶えた後、別のスタッフの『憧れの会社で働く』という夢も、その憧れの会社からの仕事を受注することで叶えました。会社として『クリエイティブの力で、手の届く一人でも多くの人を幸せにする』の実践として、まずはスタッフ全員の夢を叶えたい。そうして少しずつ手の届く範囲を広げ、自分の周囲の皆を笑顔にするのが私の夢です」

イベント風景

イベント概要

クリエイティブの力で、手の届く一人でも多くの人を幸せにする
クリエイティブサロン Vol.233 須田亘輝氏

文系大学を卒業後、営業職を退職しクリエイティブの世界に入り、様々な成功や失敗を繰り返した結果、「クリエイティブの力で、手の届く一人でも多くの人を幸せにする」が人生の目標になりました。思い返してみると苦労も多かったですが、常に全ての事象を楽しめていたような気がします。クリエイティブを必要としている人やクリエイティブを作りたい人、そんなクリエイティブに関わりたい人を一人でも多く幸せにしたいと思った過程とこれからについて、お話しさせていただければと思います。

開催日:2022年6月30日(木)

須田亘輝氏(すだ こうき)

株式会社blissCreative 代表取締役

東京都内にてエディトリアルデザイナー → Webデザイナー → Webディレクターと経歴を重ねる。神戸市へ転居後、制作会社にてアートディレクターとして勤務し、令和元年に株式会社blissCreativeを設立。Web・DTP制作を中心に撮影・編集(静止画/動画)やブランディング・マーケティング等、幅広くクリエイティブに携わっている。

デジタルハリウッドSTUDIO非常勤講師。

https://blisscreative.jp/

公開:
取材・文:中直照氏(株式会社ショートカプチーノ

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。