自分の仕事は投資か経費か……「覚悟と姿勢」で決まる
クリエイティブサロン Vol.218 濱本輝彦氏

「誰でも売れるマニュアルプレゼン営業」をコンセプトに、営業を成功に導くコンサルティングや戦略企画、さらにはパワーポイントによる営業ツール制作を行う株式会社セールスプロモーションの代表取締役・濱本輝彦さん。BtoB営業を中心に、リモート営業やプレゼン営業、商談営業のほか、講師として企業研修なども担当する。今回は、営業力に悩む企業をサポートし続ける濱本さんが、どんな苦労を乗り越えて仕事を獲得し、そして結果を出してきたのか……その根源に流れる想いについて語った。

濱本輝彦氏

さまざまな仕事を通じ、今の仕事の礎を築く

セミナー冒頭から「子どもの頃は貧乏でおもちゃなんて買ってもらえなかったです」と笑いながら語る濱本さん。

「当時人気だったガンダムのプラモデルが買ってもらえず、洗濯バサミを組み立てて遊んでいました。でも、今のクリエイティブな発想は、貧乏時代の経験が役に立っているかな、と(笑)」

中学生の頃から建築デザインに興味を持っていた濱本さん。工業高校を卒業した後は、現場を知ろうと現場監督の仕事に就いて現場を学び、その後は営業力を身につけるためにファッション業界で販売の仕事に就こうと考えた。そして面接に行ってみると、そこはホストクラブの面接だった。

「面接相手のホストクラブオーナーに『若いうちに一番しんどいことをしておくべき。100万円のお酒という狂った価値の商品をあなたの魅力だけで買ってもらえる営業力を身につければ、会社の営業なんて楽勝だよ』と言われ、なぜか納得してホストになることを決めたんです(笑)」

ホストの仕事を1年半ほど続けたあとは、ホストで鍛えた営業力を試すべくテレアポのアルバイトを開始。すると、半年で関西ナンバーワンの実績を叩きだし、アルバイトから約20名の部下を抱える正社員に昇格して法人営業を担当するようになった。ここで営業トークをマニュアル化することやプレゼン資料作成の腕が磨かれたという。その後は、改めて建築の仕事に就きたいと働きながら専門学校に通っていたものの、リーマンショックで勤め先が倒産したのを機に起業を決意した。

デザインを作るのではなく、売上を創るお手伝いがしたい

起業を決めた濱本さんが選んだのは、セミナー講師の仕事だった。

「働いていた時に、人前に出て教えたりしていたのですが、たまたまセミナー講師の大会があると知って出場してみたら優勝して……。『これは独立して稼げる!』と勘違いしてしまった。初めてのセミナーを開いてみると、受講者はたったひとり。しかも、その受講者からネットワークビジネスに勧誘されたんですよ(笑)」

すぐにセミナー講師の仕事を軌道に乗せるのは厳しいと感じたものの、食べていくにはすぐお金を稼ぐ必要がある。そこで目を付けたのがパワーポイントだった。

「セミナーのスライドづくりには自信がありました。以前からパワーポイントの機能をフル活用したスライドがカッコイイと、知り合いのセミナー講師からも好評だったんです。そこで思いついたのが、講師仲間の“セミナースライドをお洒落にする”仕事でした」

この仕事が評判を呼び、パワーポイントのスライド作成依頼がどんどん増えていった。だが、濱本さんは顧客満足が高まるほどに、あるジレンマを感じ始める。

「顧客満足度はとても高いんですが、実は成果が出ていない。どれだけデザインを頑張っても、ダイレクトに顧客の売上にはつながらないんですよ。顧客が求めるのはデザインではなく売上のはず。『デザインを作るのではなく、売上を創りたい。そうしないと自分も生き残れない』と考えるようになりました」

そこで、新たにマーケティングとプレゼンのストーリー要素を学ぶことを決断する。

大会風景
なぜか優勝してしまったセミナー講師の大会風景

圧倒的顧客満足が紹介や単価アップを生む

営業力で有名なマーケティングの先生のもとで、マーケティングとストーリーづくりを徹底して学んだ濱本さん。サービス自体もスライド作りにコンサルティング要素を加えた内容に変更し、学んだ内容をお客様へのアドバイスや営業戦略に反映させた。すると一気に顧客の売上アップという成果が生まれはじめた。

「中小企業で成果を出すために必要なのは、『お客様の売上を創る!』という覚悟と姿勢だと気づきました。その意識があれば、たとえ背伸びした提案内容でも『この仕事で自分はここまで成長する!』と信じてプレゼンできるし、それが受注につながって本当に成長できる、と」

売上という成果につながるサービスを提供できるようになり、紹介や口コミで仕事がどんどん舞い込むように。そうすると、自分の仕事はお客様の売上を創ると同時に、人の命や人生をも預かる仕事だと考えるようになった。

「覚悟あるところには覚悟あるお客様が集まる。するとお客さまの質が上がり、ひいては仕事の単価アップにつながります。そして単価アップがさらに良質な仕事につながっていきました」

ここで、より多くのお客様に貢献したいと考えた濱本さんは、新規営業に明け暮れることに。だが、新規営業への傾倒はさまざまな弊害を生みはじめる。

「まず新規獲得には体力と精神力を要するため、過労で体調を崩しました。それに伴って既存顧客の仕事にも遅延が生じ、納期遅れやクレームなどが起きはじめたんです。ひとり経営なら新規顧客獲得よりも、既存顧客からの紹介を増やすのが賢明だと知りました」

ディレクション能力を強化し、改めて圧倒的な顧客満足を生み出すことに成功した濱本さんは、自分をブランディングしてお客様からの紹介を数多く受けるようになり、同時に「単価が安すぎる。もっと高くしても良いよ」という言葉を受け、仕事の単価を高く設定することに成功した。

製作物
これまでに手がけた、国内外のさまざまな企業や団体の営業ツールやプレゼンツール

説得や誘導ではなく、「利用したい」と言わせるのが最高の営業

濱本さんは「お客様はデザインではなく売上アップを求めている」と気づいて成果を出す中で、さらに重要なことに気がついた。

「中小企業経営者の多くが、デザインを依頼する費用はデザイン費という経費だと考え、売上を上げるための取り組みは投資だと考えます。そして経費にはお金を使わない経営者も、投資にはどんどんお金を使う。提案がどちらに入るかの判断基準は『覚悟と姿勢』にあるんだ、と」

2年前に比べると、同じ仕事でも単価を2倍にできたと語る濱本さん。実績の数よりも、他社の実績ストーリーと自社の成功イメージを想像してもらえるかどうかが単価アップのポイントになるという。今後もお客様を説得して受注に導くのではなく、「利用したい」と言ってもらえるサービスを提供したいと考えており、今まさにそのための準備を進めているそう。

「パワーポイント塾を立ち上げてパワポ動画の制作方法を教え、塾の卒業生には仕事を手伝ってもらっています。制作を手伝ってくれるパートナーをどんどん増やしていきたいですね。また、自分が得意なスキルを事業化する方法が確立できたので、今後はさまざまな人の起業をお手伝いしていきます」

イベント風景

イベント概要

高単価で仕事を獲得してきたクリエイターのここだけの話
クリエイティブサロン Vol.218 濱本輝彦氏

一人経営ながら、国内や海外の一流企業の仕事を直契約で、かつ高単価で獲得してきました。よく周りからは「どのように仕事を獲得しているの?」と聞かれます。これまで辿ってきた道のりは決して順風満帆ではありませんでした。数多くの苦難を乗り越えて今に至ります。今回はクリエイターである自分がどんな苦労を乗り越えて様々な案件を獲得してきたか、今後クリエイターとしてどのように生き残っていくかという処世術とともに、いま力を入れている「パワポクリエイター募集&無料育成&パートナー化」についてもお話ししたいと思います。

開催日:2021年11月25日(木)

濱本輝彦氏(はまもと てるひこ)

株式会社セールスプロモーション 代表取締役

1982年大阪府生まれ。営業&プレゼンのコンサルタント兼クリエイター。全国の中小企業はもちろん、国内・海外大手企業の営業の仕組み化・プレゼン創りから、タイ行政と連携したタイ企業100社へのオンラインセミナー実施、ファビオ ランボルギーニ ジャパン社の営業プレゼン創りまで、オンラインのみで外出することなく国内・海外企業の営業&プレゼン創りをサポートしている。

https://www.mebic.com/cluster/sales-promotion.html

濱本輝彦氏

公開:
取材・文:中直照氏(株式会社ショートカプチーノ

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