あくまで顧客第一主義―常に考えているのは“お客様の求める希望に真摯に応えること”
藤井 貴幸氏:アッシュデザイン

藤井氏

福島区海老江に事務所を構えるアッシュデザインは、設計・パッケージ・グラフィックとデザインにまつわる多ジャンルの仕事を手がけている。独立から12年目、代表をつとめるデザイナー藤井貴幸氏は1人で事務所を運営、顧客第一主義をモットーに多くのクライアントとコミュニケーションをはかり展開してきた。今回は藤井氏に独立に至る経緯から1人で多ジャンルの仕事をこなすにあたっての苦労点、そして今後の展望などについてうかがった。

ひょんなことからデザイナーの道へ

取材風景

「最初は特にデザイナーを目指していたわけでもなかったんです。中学・高校では美術は得意な程度だったのですが、まさかその道に進もうとは夢にも思っていなかった」。
高校3年生の冬、大学入試で悩んでいる折、友人から芸術系の大学があると聞き、まともにデッサンも学ばず受験。新設3年目だった滋賀県の成安造形大学デザイン学科になんとか入学できた。

在学中はデッサンや模型制作などを学びつつ、住環境デザイン・インテリアプロダクトに所属。当時はインテリアやカフェブームが到来した頃だったこともあり、家具やインテリアに関心を抱き、卒業制作では『HAPPY』をテーマに椅子を制作したという。
大手企業への就職に対して微妙な反発心があり、「将来は小さなデザイン事務所に就職できたらいいな」と、漠然ながらも思い描いていた。

2001年独立-若干23歳の大きな転身

大学卒業後、京町堀の事務所で5ヶ月、南船場の事務所で1年、デザイン関係にまつわる業務全般とCAD設計の経験を積む。
最初の頃は図面もまともに書けずパソコンも苦手だったため、Illustratorなどのソフトも扱えなかったそうだが、仕事で必要となるにつれ、独学でどんどん修得していった。
得意先からの勧めもあり、2001年に独立。若干23歳で大きな転身を果たし、自宅を事務所に構えるところからスタートした。

「自分から飛び込んでチャレンジしたことがなかったので良い機会でした。今思えばまともに独立できるスキルもなかったので、ずいぶんリスキーな試みではありましたね」。

2002年より現在の福島区海老江で事務所を構える。

1人で多ジャンルを手がけるには「クライアントの求めるものを素早く理解すること」

作品

藤井氏の主な仕事は、設計、パッケージデザイン、グラフィックデザインの三本柱だ。さらにWebデザインなど他の仕事を含めると多岐に渡る。
設計の仕事はアパレルメーカーから直接任されており、インポートブランドの店舗にまつわる入札作業から発注・実施設計・監理まで手がけている。
同時に最大手パッケージメーカーからはデザイン業務の外部委託、さらには企業や個人店舗からもグラフィックデザインの依頼を受け、ロゴデザインからハガキ、パンフレット、名刺、ノベルティ、Webデザインなどと幅広い。
1人で多ジャンルを手がける中での苦労点は、仕事の波がありすぎることだ。
基本的に依頼された仕事を断ることをしない藤井氏の場合、仕事が重なる時は本当に重なってしまう。

「そんな時は本当に休みがありません。かといって人に頼むとなると、忙しい時は厳しい納期でお願いしないといけなくなる。お願いする時にはいい条件でフォローもできるようにしたいので、余計に頼めない」。

仕事の受注はすべて紹介から紹介へ、営業や売り込みは一切せずとも人のつながりと実績が次々と仕事を運んで来た。
11年間不況のあおりにも影響されず、1人で全てやって来ることができたのはクライアントの求めるものを誠心誠意で返すことができているからに違いない。

「仕事内容というより自分を作り上げる上で結果的にいい方向に持っていくことができたんじゃないかな。大手企業になればなるほど危機感がなく、仕事をやる人とやらない人の差があまりにも大きい。僕は弱いので、もし会社勤めをしていたらそういった環境に流されていたかもしれません。自分を鍛えるには独立してよかったと思っています」。

目標は事務所を会社として拡大、そして夢は…

作品

近年、ありがたいことに仕事が順調に増え多忙を極めている。
藤井氏は仕事において、自分の個性や好みでああしよう、こうしようと作家的な部分を出すことよりも常に考えているのは、お客様の求めているものは何なのかということだ。企業と個人ではニーズも異なるし、エンドユーザーのニーズももちろん異なる。それでも真摯に、それぞれの要求に臨機応変に対応し全力で応えていく。

「対価にあうもの、期待に応える面白いものを作り、よりスムーズに運べるようにすることを一番に考えています。専門に特化している人の場合、その特化したところでシビアだったりしますが、僕には『何でも』というのが強みであり弱みであったりします。けれども『何でも屋』という言葉を借りるなら、お客様にとってオールマイティな存在。ご相談いただいた際は、お客様の求める理想に近づけるよう精一杯お手伝いさせていただきます」。

今後のビジネス展開における目標はスタッフを雇い、事務所を会社として規模を拡大していくこと。「クリエイターはそれぞれプライドがあるので相性もありますが、その中でベストパートナーを見つけたい。利益重視ではなく、先を見据えたいい形での人脈の輪を広げていきたいです」。

夢はカフェを経営しながらその傍らにデザイン事務所をおき、自分でデザインした家具やセレクトした家具を販売することだ。大学でインテリアに興味を持ったことも影響しているのか、やっぱりインテリアや家具が好きだという藤井氏。
「あくまでビジネスとしての仕事と、自分の夢をうまく両立して実現させていきたい」。

公開日:2012年05月25日(金)
取材・文:堀内優美 堀内 優美氏
取材班:株式会社ライフサイズ 南 啓史氏