コンセプトは「カッコイイヲキワメタイ」
井上 タケシ氏・Jung-mee氏:(株)QOOV(クーヴ)

井上氏とJung-mee氏

CM制作、プロモーション映像制作を手がける一方、オリジナル映像作品で、世界各国の賞を数々受賞しているQOOV。映像作家でクリエイティブディレクターの井上タケシ氏と、同じく映像作家でプランニングディレクターのJung-mee(じゅんみぃ)氏とがタッグを組んで活躍されています。掲げる旗印は「カッコイイヲキワメタイ」。社名のQOOVも「カッコイイ」という意味を持つCOOLということばの造語だそうです。人との絆を大切にし、信念を貫く凛とした生き方を重ねていくことで夢や希望が実現していくという真の「カッコイイ」を目指し、目標に向かって進むお二人の、歩みや思いについてお話を伺いました。

クリエイティブなことがやりたい!

株式会社QOOVの設立は2005年の12月。しかし、立ち上げの構想は2000年までさかのぼります。
代表取締役の井上氏は、当時も映像に関わる仕事の会社に勤めていました。けれど、「もっとクリエイティブなことがやりたい」。そんな思いからモノ創りにこだわる“デザイナー”としての資質が目覚め始め、クリエイティブ色の強いQOOVを社内の一部門として立ち上げ、これが今のQOOVのもととなります。

運命のエポックメーキング

井上氏とJung-mee氏

2001年。井上氏は、当時のQOOVで業務のひとつとして手がけたWebデザインの「作品」をドイツのワールドメディアフェスティバルにエントリーします。すると、これが受賞の快挙に。このフェスティバルをきっかけに、井上氏と、当時ファッション・アパレル業界で活躍されていたJung-mee氏が出会うとともに、お二人の映像作家としての道がスタートします。

世界レベルの映像を目の当たりに

そのフェスティバルは、世界各国のCMやプロモーション映像ほか、Webも含めてさまざまなジャンルの媒体が参加してのものでした。井上氏とJung-mee氏は、そこで観た映像作品の数々に驚きと衝撃を受けます。華やかなイベントの雰囲気にも触発され、「わたしたちならきっとできる!」「今度は映像作品で受賞して、またここに来る!」と強く心に誓い、人生の進路を映像一本へと舵を切り替えます。

強力ユニットが誕生!

元々アグレッシブな個性を持ち合わせていたお二人。井上氏は、「自分はへんてこりんだがJung-meeはもっとへんてこりん。ユニットを組めば、色んな意味で無敵だろうと思いました」と。Jung-mee氏も、「井上さんには映像に対する無限の感性が眠っている。いつか世界に通用する映像作家になる可能性を感じた」と、当時の気持ちを振り返ります。

カッコイイの道は険しく

当初の構想から5年、それぞれにスキルを高めるとともに、会社法の改正のタイミングもあって分社・独立という形で株式会社QOOVを設立します。ところが、設立当初は仕事もなく苦労の連続。井上氏は「営業用のチラシをポスティングしながら、オフィスのある十三から心斎橋まで歩いて回りました」と、地道な営業活動も。カッコイイは一日にして成らずです。
QOOVコンセプトを確固たるものにするため、苦心して築いたのはQOOV自身のブランディング。どういうスタイルがカッコイイか、逆にどういうことをすればカッコ悪いか、自ら課せた“真のカッコイイ”は、ときに二人を苦しめることに。当初は「ケンカばっかりしてました」「目指すところは同じなのに、そのための方法が違うんです」。とお二人。
「お互い、それこそ罵り合うぐらいまでやってました」と、激しく、そして本気でぶつかり合いながらの日々でした。不況の最中であれ、コンセプトに合わないジャンルの仕事は辞退したこともあるとのこと。
ただ、本物だけが残るという信念のもと、お互いに切磋琢磨しながら、モーション・グラフィックス、3DCGやアニメーション、立体映像等、次々と映像テクニックのスキルを身につけていきました。

QOOV

わお!まさかQOOVがM&A?!

よーち隊

そんな苦労や変遷をたどりながら、気がつけば会社設立からも早5年。お二人は「あっと言う間の5年でした」と振り返ります。
QOOVでは、会社経営としての仕事はもちろんながら、お互いそれぞれ「自身のスキルアップのため」と、映像作家として作品創りにも力を注ぎます。それも、海外のコンクールや映画祭に出品し、スペイン、チリ、セルビア、ルーマニア、ギリシャ等、様々な国での受賞歴も数々。
そんな華々しい実績が認められて(?)か、大手上場企業と映像分野に進出を図るIT企業から、過去2度にわたって買収のM&Aを持ちかけられたといいます。
しかし、「自分たちにはやりたい夢がある」「考え方がまったく噛み合わない」と、井上氏もJung-mee氏も根本的なところでの思いが一致しているのでM&Aはキッパリ一蹴。「QOOVは一般的な企業とはベクトルが違うんです」とJung-mee氏。井上氏も「事業規模を大きくするとかガッツリ儲けたいとか、そんなことを目標にはしていません」と話す。そんなQOOVのビジョンが、オリジナルキャラクター「よーち隊」に集約されています。

進め! よーち隊!

Unicef News

お二人は「未来を担う子どもたちに、夢や希望、笑顔や情熱を届けたいという未来図を描いています」と言います。そんな思いから生まれたビジョンが「よーち隊」。「わたし達は周りの色んな方々に支えられ応援していただいて今日があります。その感謝の気持ちを社会貢献という形でお返ししたい」という思いの一方、「二人とも幼稚やから(笑)」ということで命名されました。
サイトの中では、お二人を模したような3DCGキャラクターが歌って踊ります。そこに掲げる「よーち隊憲章」では「ちっちゃくてもがんばる」「困っている人を助ける」「願いが叶うまであきらめない」など、シンプルながら、お二人の熱く深い思いが込められています。
具体的な活動としては、ユニセフのマンスリーサポートプログラム。「ささやかながら」と言いながらも、ユニセフを通じての寄付活動を会社の設立当初から行っておられます。

その先にある夢に向かって

井上氏とJung-mee氏

映像作家としての活動ではショートムービーを中心に数々の作品を手がけるお二人ですが、密かに長編映画の構想も温めておられ、すでにシナリオは出来上がっているといいます。叙情的なイメージなのだそうで「興行的なことを考えた作品ではなく、世界の映画祭で認められ、人々の心に残る作品を創りたい」とJung-mee氏。井上氏も「自分の持ち味は固定観念を打破した斬新さ。しかし、わかる人だけわかる、というマニアックなレベルのものではなく、誰が観ても『さすが』と言われるような、芸術の域まで高めた映像作品を創りたい」と夢を語ります。
また今後の展開として、映像という枠にとらわれず、“デザイン”“モノ創り”という視点からクリエイトの幅を広げていきたいとも。
Jung-mee氏は「辿り着きたい場所があるので、それまでは学びの連続。まだまだ試練は続きます」と言う隣で、井上氏は「目指すところがブレていないので」と、イバラの道も何のその。今は「夢の途中をもがきながら楽しんでいる」と、屈託のない笑顔が印象的なお二人でした。

公開日:2010年01月25日(月)
取材・文:福 信行氏
取材班:株式会社ゼック・エンタープライズ 原田 将志氏