メビック発のコラボレーション事例の紹介

想いをカタチにしてくれるクリエイターとの出会いを求めて
発酵調味料のパッケージやWebサイト制作とブランディング

「HAKKO RONDO」ウェブサイトイメージ(PC、スマートフォン)

クリエイター募集プレゼンをきっかけにチーム結成

家族の病気や介護をきっかけに予防栄養学を学び、発酵料理研究家として活動するOFFICE ESIL代表の三井嘉子さん。長年温めてきた発酵調味料の開発が最終試作段階まで進む中、大きな壁に直面していた。

「商品の完成は間近。でも、パッケージやWebサイト、販売戦略を決めていなかったんです。最初は自分でデザインしようとも思いましたが、『素人のデザインでは、誰も信用してくれない』という気持ちが芽生えたんです」

そこで、メビックが開催するクリエイターとのマッチングイベントなどに参加した三井さん。何度か参加するうちに、今度は誰に頼めば良いのかがわからなくなってしまい、メビックに相談した。

「メビックの方に『私の依頼に合うクリエイターをどう探せばいいんですか?』と質問すると、『自分の想いをクリエイターにプレゼンしてみては?』という提案でした。自分でもこの流れに驚きましたよ(笑)」

後日、メビックが開催する「企業によるクリエイター募集プレゼンテーション」に登壇した三井さんは、プレゼンを行って30名以上のクリエイターと名刺交換し、後日連絡をもらったクリエイター10組以上と面談した。そして最終的に株式会社こふれの北中賢治さんにロゴや商品シール、送付用パッケージ、チラシなどのデザイン&制作を、株式会社ヨロコバレーナの宗琢未さんにはLP制作や商品撮影、マーケティング支援などを依頼すると決めた。

「北中さんは、私の話を興味を持って聞いてくれて、その場で具体的なイメージの提案など一歩踏み込んだ話ができて、見積も早かったんです。宗さんはWeb以外にも売り方に関する知見や経験を具体的に話してくれて、私が思いつかない販売アイデアを提案してもらえると考えました。役割を分担し、私が調整役を務めるかたちでお願いしました」

2024年8月に開催された「企業によるクリエイター募集プレゼンテーション」で、三井さんがプレゼンテーションする様子。自身の想いを中心に、三井さんの「人となり」の紹介が中心だった。

北中さんと宗さんがプレゼンや面談で感じたことは、三井さんの商品に対する強い想いと、それを明確に言語化する力だった。

「想いが明確だと感じたので、ロゴやデザインに落とし込みやすいと感じました。でも、それ以上に一人でされているので、時間不足でやりたいけれどできないことが多い方が気になりました。そこで印刷工程まで任せてもらうなど、三井さんのフットワークが軽くなる提案をさせてもらいました」と北中さん。

宗さんも「三井さんの想いがこもった商品だと感じたので『ご一緒できたら楽しいだろうな』と思いました。ヨロコバレーナは食品の実績が多いので、マーケティングやSNSなど『売るためのお手伝い』部分の経験や知見をお話しさせてもらいました」

メビックでのイベント翌月となる9月、初めて三社が揃って行ったミーティングを皮切りに、発酵調味料「HAKKO RONDO」プロジェクトがスタートした。

多彩な切り口のデザイン提案で制作期間を短縮

デザインの方向性やおおよそのスケジュール感を確認しながら、北中さんはロゴや商品シール、送付用パッケージのデザイン、宗さんは撮影とLP制作の準備を進めていった。

ロゴデザインについては、11月の商談会に間に合わせる必要があり、方向性の異なる7案を提示した。

「HAKKO RONDO」のロゴデザイン提案書。精度が高くてスピード感のある提案が、三井さんの心に刺さった。

「ロゴと商品シールデザインは、先に商談会に出すため時間的制約がありました。プレゼンやコミュニケーションから三井さんが好きなデザインの方向性も見えていたので、好きなデザイン系統の案をはじめ、薬膳モチーフの案、『HAKKO RONDO』の商品名からイメージした『ロンド=踊る』、お腹の中で巡るイメージから『巡る=輪廻』など、いろいろな角度からイメージを膨らませました」と北中さん。

どのロゴ案も良いと感じた三井さんは、本当に悩んだそう。

「私は誰かが踊っているビジュアルイメージを考えていました。そんな案もありましたが、食品ならもっと想像力が膨らむような抽象度が高いロゴデザインの方が良いと考えて、スムーズに今のデザインを選べました。出してもらったロゴ案が全部良くて、最終的にロゴ案のいくつかのデザイン要素を商品シールのデザインに反映させてもらいました。そのぐらい満足のいく仕上がりでした」

また発送用パッケージに関してもコスト面や発注数を考慮し、木型を使わないタイプを一部加工して使用。細かい加工作業は北中さんが行い、シール作成や貼付は三井さん自身が行うことで、コストや納期を目標に近づけていった。

「淡路島産 玉ねぎ麹」パッケージ
発酵調味料「HAKKO RONDO」は、「淡路島たまねぎ」とまろやかな淡路島産の藻塩を使用した「玉ねぎ麹」と、麹のUMAMIに中華が香るちょっと変わった新しい塩麹調味料「薬膳塩麹」の2種類を展開。

商品の特徴を体感できる料理レシピを提案

ロゴデザインやパッケージの制作と並行して宗さんに依頼したLP制作も進んでいた。「使いやすさ」や「旨みを引き出す力」といった「HAKKO RONDO」の特徴を的確に伝えるため、「HAKKO RONDO」を使った料理をメインとすることと、宗さんの知人である料理研究家のチーム参加を提案した。

「LP内で紹介する料理レシピは、料理研究家でもある三井さんと依頼した料理研究家の両者に考えていただきました。簡単にできて『HAKKO RONDO』の特徴を体感できるレシピを選んでいます。このメニューとレシピ、完成した料理のビジュアルが、このLPの成否を握っていると考え、時間をかけて議論を重ねました」

「HAKKO RONDO」ウェブサイト
Webサイトには、「HAKKO RONDO」を使った料理レシピが11種類紹介されている。

また、宗さんが担当するLPと北中さんが担当するチラシについては、三井さん自身がスケジュール管理に加えてディレクションも担い、デザイン的に統一感のある制作物が完成していった。

今回、三社を結びつけたメビックについて、三井さんは「想いを自分の言葉で語る機会をいただいたことで、自分の言葉に責任を持つことができました。さらに、北中さんと宗さんに私の想いを形にしてもらえたのもメビックがあったからですよね」と、その気持ちを語っていた。

その言葉を受けて北中さんは「メビックでは、クライアントさんはもちろんですが、つながりが生まれたクリエイターからも相談されることに驚いています。出会いの場としてメビックがあるのは大きいですよね」と語る。

続いて宗さんは「メビックで出会った人からの依頼は、私自身を知った上で依頼してくださることが多いんです。その結果、良いものができるんですよね。あと、飲んで仲良くなった上で一緒に仕事をすることが多いので他の案件より楽しいですね(笑)」と、お互いの人となりを理解した上で仕事をすることの大切さを教えてくれた。

チームで挑戦を続け、さらなる成長をめざす

発酵調味料「HAKKO RONDO」は、2025年1月11日に発売され、メディアにも取り上げられるなど話題となっている。今後の展開について、三井さんは「これからは展示会などに出展してさらに認知の向上を進めていきます。同時に、食品商社をはじめとする販路拡大のため、今後も両社の力を借りながら取り組んでいきたいです」と語った。

北中さんは「『HAKKO RONDO』の成長のために、今後は広告や展示会などに参加されることが増えると思うので、引き続き協力していきたいですね」、宗さんも「ヨロコバレーナは、制作よりもマーケティング支援に強みを持つ会社なので、ここからが腕の見せどころ。販売して見えてきた課題もあると思うので、状況をヒアリングしながら最適な提案をしていきたいです」と、今後もこのチームで成長をめざすイメージを持っていた。

「あなたは食べものでできています。」がコンセプトの「HAKKO RONDO」。ネーミングのように成長のロンド(輪舞)を続けるべく、3人のチャレンジはまだまだ続いていく。

集合写真
左から宗さん、三井さん、北中さん

OFFICCE ESIL

代表
三井嘉子氏

https://hakkorondo.com/

株式会社こふれ

ディレクター
北中賢治氏

https://coffret-design.co.jp/

株式会社ヨロコバレーナ

ディレクター / 販促コンサルタント
宗琢未氏

https://465807.co.jp/

公開:2025年9月1日(月)
取材・文:中直照氏(株式会社ショートカプチーノ

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。