メビック発のコラボレーション事例の紹介

ブランドの想いを伝え利便性もアップ
家具ブランド「SWITCH」のサイトリニューアル

「SWITCH」ウェブサイト

メビック主催の研修旅行へ参加し、かけがえのない仲間と出会った

木材の節やひび割れをあえて生かしたテーブルや、オイルレザーや倉敷帆布といった上質な張り地のチェアやソファ。無骨で飾らない、でもどこかあたたかで、時が経つほどに味わい深い表情となり、人生に寄り添ってくれるーーそんな世界観で1999年頃に、「株式会社カナタ製作所」が立ち上げたオリジナル家具ブラン「SWITCH(スウィッチ)」。

同社は戦前から藤家具などの製造を手がけていたが、景気の低迷とともにおもな取引先である百貨店が斜陽の時代へ。そこで、他社に依存しないありようを模索するなか、発想や進むべき方向性を「SWITCH=切り替える」という言葉に込めた新たな挑戦だった。

近い将来、四代目となる金田直也さんは曽祖父の代から続くこの製作所に、3年前に入社。同社では「SWITCH」のオフィシャルサイトとECサイトがすでに稼働していた。しかし、デザインはもちろん、ユーザーにとっての利便性という点からも、到底納得のいくものではなかったという。

「ブランドの世界観にそぐわない安っぽいバナーがあったり、更新してほしいと依頼しても1週間以上、返信がなかったりとレスポンスの点でも問題がありました」(金田さん)

そんなある日、父である現社長が1枚のチラシを持ち帰った。見ると、メビックが主催する「イタリアンデザインの本質、プロジェッタツィオーネを学ぶ旅」の参加者を募る内容。父に背中を押されて参加したこのツアーが、コラボのきっかけとなる。

ツアーはローマ在住の演出家・批評家である多木陽介さんがアテンドし、北イタリアの各都市でデザインやものづくりの本質について学ぶという、他では類を見ないコンセプトのもの。大阪で活動するクリエイターが10名ほど参加したが、その中に、マウントグラフィックスの溝手真一郎さんと高木知佳さんがいた。すぐに意気投合し、ともに学び、ともに飲んで語らい、就寝中以外はずっと一緒という1週間を過ごす。かなりの珍道中で、宿泊した修道院の部屋のドアが開かなくなり、溝手さんが閉じ込められるなど、笑いありハプニングありの思い出深い旅となった。

メビック主催のイタリアデザイン研修ツアー。仲間として濃密な1週間をともに過ごしたことが、コラボのきっかけに。

デザインからコーディングまでメビックで築いた人脈が軸に

帰国後、金田さんは「SWITCH」のオフィシャルサイトECサイトのリニューアルを溝手さんに相談。イタリアで気心が知れていたこともあり、自然な流れでマウントグラフィックスがディレクションを手がけることになった。

「オフィシャルでは『SWITCH』のコンセプトをきっちり伝え、ECはカートの使いやすさなど利便性を重視するかたちに。以前のものは、オフィシャルなのに内容が販売のほうへ寄っていたりと、役割が明確でなく、混在しているところがあったんです。そこで、抽象的な表現をなくし、より具体的な言葉で想いや魅力を伝えるようにしました。また、そのメッセージを際立たせるため、シンプルなデザインにしています。これは、ご依頼時の金田さんの意向でもありました」(溝手さん)

一方、マウントグラフィックスはウェブに特化した事務所でないこともあり、オフィシャルサイトのコーディングを、日平結さんに依頼。溝手さんと日平さんとの出会いもまた、メビックだった。彼女がメビックを訪れた際に、コーディネーターとして趣旨説明に同席したのが溝手さんで、その後、Webの仕事で協業しあう関係に発展したという。

「日平さんはご自身でデザインもされる人なので、安心してお願いできるんです。抜け感などを持たせるためあえて余白をもうけていたのに、仕上がりを見ると詰めてしまっている……というようなことがたまにあります。その点、日平さんならお渡ししたデザインの趣旨を汲み取ってくださるので、違和感のない仕上がりになるんです」(高木さん)

「実をいうと、私はイタリア研修の4期生で、金田さんや溝手さんたちが3期生。金田さんとは報告会で名刺交換したくらいでお話をしたことはなかったのですが、イタリアで多木さんから、過去のツアーのおもしろいエピソードは伺っていました。今回お仕事したことで、金田さんの家具づくりへの想いを垣間見ることができ、関わらせていただいて本当に良かったなと」(日平さん)

「SWITCH」ウェブサイトスクリーンショット
オフィシャルサイトでは上質な木材や張り地についてや、職人による手づくりであることなど、こだわりを丁寧に伝えた。

2年がかりでついにローンチ、順調な滑り出しに期待が高まる

さらに、ECサイトの構築は、溝手さんが株式会社ファーストネットジャパンの齊藤真也さんに依頼。実務はディレクターの高松稔之さんが担当することになった。溝手さんと齊藤さんはメビックの交流会で知り合い、今回が初めての協働。高松さんはディレクターとして経験豊富であったが、ゼロから構築するのではなく、リニューアルならではの難しさがあったという。

「既存のサイトのコーディングデータや顧客情報を引き継げなかったので、大変な面はありました。老朽化したサーバの切り替えに始まり、使用していたEC-CUBEというEC構築システムも、2から4へバージョンアップ。さらには購入する際に、まず張り地の素材を選び、次に好みの色を選択するというかけあわせがあるのですが、色展開をすべて含めると、なんと99種類。EC-CUBEではかけあわせの数が多すぎると登録できない場合があるので、入力できるマックスの値を強引に変えたりしましたね」(高松さん)

「SWITCH」ウェブサイトスクリーンショット
ECサイトでは99種類ある張り地を、選びやすい仕様に。別に設けた生地ページで、じっくり比較検討もできる。

制作中はスケジューリングの難しさなどから、進行が停滞した時期があり、斎藤さんが調整に入ったことも。しかし、もともとがメビックのカジュアルな交流会で知り合ったという経緯もあり、関係性がこじれることもなく仕事は続行。そして、2022年1月末、ついに「SWITCH」のリニューアルサイトがローンチされた。早くもユーザーアカウントを更新したり、カタログを請求するお客様がいたりと、順調な滑り出しという。納得のいくサイトが完成したことで、今後はYouTubeなどの動画や、SNSなど、自社で発信できるコンテンツに力を注ぐ土台が整ったのである。

「経営者としては、無事に終えることができてホッとしました。期待通りのビジネス展開でしたし、最終的にはこんなインタビューにまで登場させていただくことになり、弊社を世の中に知っていただく機会にもつながった。メビックのクリエイターはデザイナーさんが多いので、Webシステムについては苦手な人もいると思うんです。そこで我々の出番というか、今後も頼っていただけたら嬉しいですね」(齊藤さん)

集合写真
出会った場所はさまざまながら、メビックを通じて出会った6人が力を合わせ、旧サイトを生まれ変わらせた。
左より、日平結氏、溝手真一郎氏、高木知佳氏、金田直也氏、高松稔之氏、齊藤真也氏

株式会社カナタ製作所

営業部・木工作業担当
金田直也氏

https://www.switch-works.com/

マウントグラフィックス

グラフィックデザイナー
溝手真一郎氏

グラフィックデザイナー
高木知佳氏

https://www.mebic.com/cluster/mt-graphic.html

musubime

デザイナー
日平結氏

https://musubime-design.com/

株式会社ファーストネットジャパン

代表取締役
齊藤真也氏

ディレクター
高松稔之氏

https://www.1st-net.jp/

公開:2022年6月20日(月)
取材・文:野崎泉氏(underson

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。