メビック発のコラボレーション事例の紹介

メビックでの出会いが導いた「 どらやきメーカー」の若返り
和菓子メーカーの新商品開発・ブランディング

YODORA

パートナー選びは、調査力と分析力が決め手

「♪あ~ほんま、あ~まんま~」のテレビCMで有名な「茜丸」が、今年1月に発売した新商品が洋風どらやき「YODORA」だ。5つの味と色のベストマッチをめざした洋風どらやきは、これまでにない個性的なビジュアルと個性豊かな味わいが人気だ。この「YODORA」、実はメビックのクリエイター募集プレゼンで出会ったクリエイターとのコラボから生まれたという。

株式会社茜丸は昭和15年に製餡会社として産声をあげ、平成元年には「茜丸五色どらやき」が大ヒット。関西で知らない人はいないほど有名な大阪みやげとなった。それでも新たなパートナーとの新商品開発を決意した北條竜太郎さんは「贈答品として『五色どらやき』が誕生してから30年が経ちました。高齢化と人口減少が進む中で、現在とは異なる若いお客様向けの商品がないと、会社として健全な発展ができなくなる」と危機感を抱いていた。

そこで新商品の開発を決意して知人から紹介されたメビックに相談し、プロジェクトのパートナーを求めてクリエイター募集プレゼンに参加することに。

「以前から依頼しているデザイナーはいますが、今回は従来と異なる層のお客様を獲得しなければなりませんし、単にデザインして終わるものではありません。販促イベントや広告宣伝といった継続的なサポートも含めてお願いしたいと考えていたので、新しいパートナーに依頼しようと決めました」

一方、後に一緒に「YODORA」を生み出すことになる株式会社エンジンの東さんは、「自分の強みは、お客様のプロジェクトを一気通貫でサポートするディレクションやプロデュース。グラフィックや映像、イラストといった単体のパートなら、私に依頼する必要はないんですよ。でも、まだ形がないものを生み出して価値づけしていくという新商品プロジェクトには、自分の力の発揮しどころがたくさんあるな」と考えながらプレゼンを聞いていた。

クリエイター募集プレゼンで初めて顔を合わせ、後日改めて話をした二人。「プレゼン後、多くの人からご応募いただいて話をしました」と語る北條さんは、なぜ東さんをパートナーとして選んだのだろうか。

「業界の動向や他社事例とその結果をしっかり調査して分析していた点が一番の理由です。あと、私自身が大切にしている『マーケット志向』を持っていた。お客様の商品に対する反応から次の一手を考えられる人と一緒に仕事をしたかったので、東さんはまさに意中の人でした(笑)」

ロゴマーク案、パッケージ案
北條さんと語り合った内容をデザイナーに伝え、提案されたロゴマーク案やパッケージ案。

「体験の消費」を狙った新商品「YODORA」

東さんをパートナーに動き出した新商品プロジェクト。まず最初に取り組んだのは「二人で語り合うこと」だった。

「試作品ができる前だったので、ずっと風呂敷を広げるような感じで、アイデアを語り合っていました。今思えば、意識や方向性をすり合わせる良い助走期間になりました」

そして6月頃に最初の試作品が完成したことで、プロジェクトは一気に加速していく。
初めての試食会の評価は散々な結果だった、と北條さん。

試食会
初めての試食会の様子。この時は大きなバターサンドのようで、試食者からの評価も散々だった。

「当社の製造スタッフはこれまでつくってきた経験から、『安くて量が多くて良い品質の商品を』という意識が高いのですが、今は『ビジュアルを含めた体験を消費する』時代。この違いをなかなか商品に落とし込めなかったんです。パッケージやブランディングは東さんがいるので安心していましたが、味わいやサイズ感といった『食べものづくり』の部分で、プラスアルファの価値をどう表現するかは悩みました」

さらに「どらやきであること」にもこだわった。

「初の試食会で『どらやきメーカーとして若返りを図りたい』という想いに改めて気づいたんです。だから、ビジュアルが良くても洋菓子やどらやき以外の和菓子じゃ意味がない。でも、食の志向が洋風にシフトしているのは間違いないので、どらやきでありながら洋風の商品に仕上げたい。この想いは、最初の試食会が散々な評価だったから気づけたんです。失敗が功を奏した好例ですね(笑)」

東さんは「茜丸のYODORA」ではなく、独立した「YODORA」ブランドとしてどう売り出すか、頭を悩ませていた。

「今回は既存のお客様とは異なる若い世代に買っていただきたい商品ですが、『茜丸』は強いブランド力を備えています。当然茜丸ブランドを使う方が認知は上がりますが、それがターゲットに響くかはまた別の話。ブランドの輪郭をどう描くかはかなり頭を悩ませました」

「YODORA」パッケージ
洋菓子をイメージさせる形状の外装はクラフト系の紙を使用。ロゴマークも主張しすぎないサイズ感とし、全体的にシンプルかつおしゃれに仕上がっている。

「YODORA」誕生の立役者はメビック!?

「YODORA」は、1月にECサイトでの販売を開始して想定以上の売上を記録している。北條さんはメビックがもたらしたリアルな出会いだったからこその成果だと強調する。

「時間軸も長くて大きなプロジェクトはお互いの相性も重要なので、顔を合わせたコミュニケーションで相手をよく知りたい。それにはリアルの接点があることは重要だと思うし、そんな場を用意してくれたメビックに感謝します」

東さんも「クリエイターを求める人とクリエイターのハブになっている」とメビックを評する。

「実はデザインやコピーも、メビックで出会ったクリエイターにお願いしたんです。メビックという場が、このプロジェクトを成功に導いた立役者だと言えるんじゃないですか(笑)」

5種類の「YODORA」
マンゴー、ラズベリー、ブルーベリー、抹茶、あんみつの5種類。食べやすく、味わいが広がりやすいサイズ感を求めて、あんこ部分の高さもミリ単位で調整した。

最後に「YODORA」の今後について聞いた。
北條さんは「フレーバーを10~15種類ぐらいに増やしていきます。さらにイベントを開催して、お客様とリアルな接点をつくっていきたいですね」と語り、東さんは「リッチなブランド体験を提供することで、SNS上に『YODORA』が数多く投稿される状況を継続的につくり出したい。そのための準備を進めています」と、ふたりとも未来を見据えている。「YODORA」が大阪の代表的おみやげとして「茜丸」に並ぶ日も遠くないかもしれない。

北條氏と東氏
北條竜太郎氏(左)、東優氏(右)

株式会社茜丸

常務執行役員
北條竜太郎氏

https://www.osakamiyage-akanemaru.jp/

株式会社Engine

事業開発プロデューサー
東優氏

https://www.engine-corp.biz/

公開:2021年6月2日(水)
取材・文:中直照氏 (株式会社ショートカプチーノ

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。