仕事をカタチにすることが次につながる
宮田 昌彦氏:(株)エムツーフォト

m2photo(エムツーフォト)のスタジオ

スタジオを併設したエムツーフォトのオフィスは、ビルの最上階で天井も高く、とても心地いい空間だ。取材当日は撮影日ではなくスタジオはとても片付いていて、こんなところならとことんこだわって、クリエイティブな作業をいくらでも続けられる、憧れの「カメラマンの城」に見えた。

起業するのは、10年後の自分を想像した時に決まっていた。

宮田氏

(株)m2photoの宮田氏は高校時代から好きだった写真を生業に、3名のカメラマン(ウーマン)とコマーシャルフォトやイメージ撮影、人物写真などで幅広く活躍している。
大阪芸大の写真科を卒業後、メーカーの企画部署で写真撮影を担当、当時の会社で毎年恒例の正月の決意表明を話す際に宮田氏は「10年後はサラリーマンか、もしくは独立するかのどっちかです」と発表してしまい、その勢い止まらず退社。また在職中に、あるカメラマンに面会した際に「しかし人物を撮るのがヘタですね」って正面きって言われ、退職後にその助手を志願。その後フリーのカメラ助手として活躍した後、1992年には念願の法人化も果たし、ただ今16期のベテランカメラマンだ。
もっぱら悩みは、このままカメラマンとして「自分のわがままな写真」をしつこく追い求めるのか、もしくは若手の技術的なサポートに徹し育成するのか。起業を決意した時のように、ここ3年以内が大きな岐路になるという。

クリエイティブの便利が変わってきている

m2photo作品

この北区を選んだ理由は、その頃の写真スタジオの立地条件は「お客様より現像所に近いところ」で、撮影した写真を現像している間にスタジオで作業しつつ、あがってきた写真を同時にチェックしたりして、効率をあげられたからだ。今ではその便利さも変化し、機材の環境がデジタルに移行したので、特に必要を感じていない。しかし、この地のおかげで、周りで活躍する他業種のクリエイター同士の出会いや、これからの情報交換や協業には興味があり、これからも進んで取り組んでいく楽しみがあるという。
「自分のクリエイティブ魂をカメラにかけるのが一番楽しめる仕事です。特に、写真のテーマを大切にするイメージ写真は、かなり燃えますね。技術のみのブツ撮りでは味わえない写真の意図や表現が組み込める仕事ならいくらでもやりたい。」特に人物・料理・雑誌やフリーペーパーの表紙や取材写真も好きな仕事らしい。(ちなみに弊社制作のb-platz pressの表紙の多くをm2photo撮影している)

刀鍛冶の匠の写真集を2010年までに出版する

m2photo作品

奈良県吉野の日本刀鍛冶職人の仕事現場を収めた写真集を制作し出版したい、と夢を語る宮田氏。この写真はライフワーク的な存在で、良い仕事(写真)にはそれを表現できる良い媒体があってこそ広がるもの。その写真集から発注元も仕事のイメージができ、「是非撮って欲しい」と波長が合ってから仕事に繋がって欲しい。松下電器男性用シェーバーの商品広告のイメージとして、この刀鍛冶の匠と刀の写真が使われた事例もある。
「刀鍛冶の撮影も、最初は桜井にある地元の印刷会社の依頼で予算も無く、発行に協力する条件で1度撮影。そのときに河内國平刀匠の魅力に感銘して個人的な視点での撮影を依頼したのが始まりでした。気がつけばそれから8年も撮影しています。」宮田氏は現在、その写真集の全体構成を書き始めている。出版に漕ぎ着ける日はもっと早いかもしれない。「この先も自分の仕事だけを載せたカレンダーを企業の依頼で作ってみたい。全面に自分の写真を使った駅貼りポスター広告などで多くの人に影響を与える仕事がしたい。」と、宮田氏の夢は果てしない。

公開日:2007年10月02日(火)
取材・文:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏