表情のあるデザイン
坂口 友明氏:(有)デザイナーズ フリー

『質感』をデザイン

坂口氏

今回の取材の前に一番興味を引いたのが『サーフェイスデザイン』という今までに知らない言葉を聞いたことである。一体どういうデザインなのか皆目見当もつかないままデザイナーズフリーの坂口さんの事務所に伺うことになった。「一体どういうデザインなのか?」
事務所に着くと気さくで、柔らかな表情で迎えてくれたのが今回取材するデザイナーズフリーの坂口さん。ミーティングルームに案内されるとそこにはインテリア関係の本と、素材、テキスタイルからグラフィックなど幅広い内容の本が置かれていた。早速、坂口さんにサーフェイスデザインとは何か聞いてみた。
「サーフェイスデザインとは物や素材の『表面の質』のデザイン。質感(金属、土、木、布など)をデザインすることなんです。仕事的には物の質を工業製品(壁紙、床材)におとしこむ作業です。」
「日本では織物からサーフェイスデザイン、柄(モチーフ)など幅広い意味で『テキスタイル』と使われていますが海外では『サーフェイス(質)』『テキスタイル(柄)』の分野がしっかりと確立されています。」

文字よりも質感が好き。

作品

現在はサーフェイスデザイン、テクスチャーを手掛ける坂口さんだが、実は大学時代はグラフィックデザインを専攻していた。何故グラフィックよりもサーフェイスデザインに興味を抱いたのか?
「私は文字が得意ではないんです。だんだん、いろんな物を触ったり、ふれたりという『質感』に興味をひかれていったんです。」
大学卒業後、坂口さんは東京のテキスタイルデザイン事務所に入社し、大阪支社に転勤。30歳になる年に独立し、サーフェイス『質』へのデザインに進んでいくことになる。事務所には坂口さんが今まで作成したサーフェイスデザインが数多く飾ってある。金属を腐食させて作った時計、玄関には自ら作成した白いパネルなど、どれも質感が豊かで綺麗なものばかりだ。質感への『こだわり』がひしひしと伝わってくる。

オリジナル「原画」を作り続ける。

作品

坂口さんの作った作品、仕事の中で代表作はあるのか聞いてみた。「代表作はないんですよ、毎月30?40点は作成しているので…、独立してからまだ1万点にも満たないですね(笑)」と驚きの答えが返ってきた。見せて頂いた仕事はどれも美術品と思えるほど綺麗な模様ばかりだ。
これらのデザインはどのようにしてメーカーの製品になるのか?「原画は設計図と同じです。メーカーは原画をもとにシリコンで型をとったり、デジタル化して量産されていきます。メーカーがハードに落すときには思わぬ結果が伴う事があるので原画ほど綺麗にはなりませんね(笑)」
坂口さんは他の販路として展示会にも出品している。「取引先から情報を頂いて作成する場合もありますが、今は展示会に出品して購入して頂くのが多いですね。海外でも年に3回、展示会に参加する度に違うメーカーが購入していくので一定のお客様はなかなかいないんです。その時に気に入った原本を購入していただいています。」デザインといえば受注型で受注者に流されやすいのだが、坂口さんの仕事は『オリジナル』をメーカーに購入して頂く提案型。今後の展開を聞くと「会社を大きくしたいとか、お金儲けをしたいとは思いません。ただ、やりがいのある面白い仕事をやりつづけたいですね。」と語ってくれた坂口さん。私も自らを磨く事の重要性を強く感じた。

公開日:2007年10月01日(月)
取材・文:西村 雄樹氏