自らが情報の発信源となる“真のメディア”を目指して。
河野 純基氏:(株)ダイメディア

河野氏

川の向こう岸に読売テレビが望める京橋駅のすぐそばに建つビルに、ドキュメンタリーを中心としたテレビ番組の制作を行う(株)ダイメディアがある。しかも、テレビ番組制作に加えて、インターネットメディア『京橋経済新聞』の運営も行っているという。テレビ番組制作とは無関係に見えるインターネットメディアの運営を始めた理由やテレビ番組制作の裏側について、代表の河野氏にお話をお伺いした。

情報の発信源となることを可能にしたインターネットメディア。


京橋経済新聞

河野氏は東京のテレビ番組制作会社に勤めた後、独立してテレビ番組制作・映像制作の会社、ダイメディアを立ち上げた。事業主体は報道とドキュメンタリーを中心としたテレビ番組制作で、「癒しネタ」から「ヤミ金」ネタまで多種多様な話題を扱っている。
そんな河野氏率いるダイメディアが、新事業として取り組んでいるのがインターネットニュースサイト『京橋経済新聞』だ。京橋周辺を中心に都島区や鶴見区の地域情報を配信している。

テレビ番組制作会社がニュースサイトの運営を始めた理由を河野氏にたずねてみると、
「自分自身が“情報の発信源”になりたかったんです。我々テレビ番組制作会社は、テレビ局にたくさんの企画を持ち込みます。でも、実際に制作されるのはごく少数。しかも、揉め事、ケンカ、世界初……テレビ的に“絵”にならないと企画の採用は難しい。ましてや、街に溢れる小さな日常がニュースになることはありません。でも我々は、自分たちで集めた身近なニュースを“情報の発信源”として発信したかったんです。」

『京橋経済新聞』は一次情報を足で稼ぐメディア。

事務所風景

なぜ、情報の発信源となることにこだわるのか。それは、テレビ番組が“二次情報”に頼るケースが多いからだ、と河野氏は教えてくれた。
「多くのテレビ番組が、リリース文や新聞、雑誌、ネットなどで情報を収集しているのが現状です。制作費の削減や時間・人員の不足といった複数の原因によって、テレビで紹介される情報はいわゆる“二次情報”になってしまいがちなんですよ。」
ここに『京橋経済新聞』を運営する意味があるという。
「どこにも出ていないネタを多くの人に伝えることが、メディアの価値であり役割だと思うんです。それを大きなエリアで実現するのは難しいですが、京橋周辺という小さなエリアであればそれが可能なんです。京橋界隈の情報に関しては、『京橋経済新聞』がどのメディアよりも早く情報発信することを目指しています。」
運営に関しては、最初は苦労すると思ったネタ集めが、実は思ったほど苦労していないという。
「スタッフがランチに行った時に隣の店が閉まっていた、じゃあ次は何の店ができるか張り紙の電話番号に電話して取材……といった具合に、日常の中でネタがドンドン集まってくるんです。これもカバーエリアが地元の狭いエリアだから可能なことです。すでに『京橋経済新聞』は、他の番組制作会社もネタ元としてチェックしているようで、同業他社にネタの提供をしている状態でもあります(笑)」

テレビ番組制作と『京橋経済新聞』運営の相乗効果を目指す。

実は『京橋経済新聞』の運営を始める際、本業であるテレビ番組制作との相乗効果を狙っていたという。
「狙っている相乗効果は三つあります。まず一つめは、一次情報をキャッチできること。自分たちが足で稼いだ情報は、テレビ局への企画提案時に他社にはないネタを出せるという優位があります。二つめは、若手の育成。テレビ番組制作では映像、インターネットでは文字、と表現手段は異なりますが、アポを取り、話を聞き、その人の思いを短くまとめるノウハウは同じです。若手が経験を積む場のひとつになっています。三つめは、『京橋経済新聞』の取材を通じて、地元の取材先からビデオ制作などの仕事が受注したい。これは、これから実現していきたいと考えています。」

地元ネタは地元で制作して全国に流す体制づくり。

取材風景

『京橋経済新聞』の運営は、ダイメディア設立時の河野氏の思いと合致する部分も大きかったという。大阪に本部があるのも河野氏のこだわりのひとつだ。
「例えば、大阪に面白い人がいて、全国放送のドキュメンタリー番組で取材するとしましょう。すると、東京からディレクターとカメラマンが来て制作するんです。その理由は、全国放送されるドキュメンタリー番組のほとんどが東京のテレビ局から放送されているからです。大阪のスタッフが関わることなく、大阪の情報が全国に流れる現状を変えたいと思ったんですね。大阪のネタは大阪の制作会社が取材・制作して、全国に発信するようになりたいんです。」
そんな思いを実際に形にしてしまうのが、河野氏のすごいところだ。
「ダイメディアのテレビ番組制作は、東京に営業拠点と制作部隊を置き、大阪のディレクターがいつでも参画できる体制をとっています。これを体制を岡山、徳島、和歌山、愛媛にも広げて、地域スタッフの手で制作された番組を東京を中心とした全国に発信するべく、日々邁進しています。」

テレビ番組制作で培ったノウハウを新事業に生かす。

河野氏がこれから目指すのは、テレビ番組制作で培ったノウハウを地域に還元することだという。
「ドキュメンタリー番組制作のノウハウを生かして、地域に貢献できる企業ビデオ制作や個人向けの結婚式ビデオの制作などにも取り組んでいきたいですね。また、ウェブの世界にも進出していきたい。ウェブの動画は短い時間で表現することを求められていて、我々にはテレビのCM制作やニュース番組のヘッドライン制作など、短い時間で情報を伝える高いノウハウが蓄積されています。地元大阪のために、テレビ番組制作のノウハウを最大限に生かした新事業で還元していきたいですね。」

公開日:2009年11月02日(月)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏、株式会社ビルダーブーフ 久保 のり代氏