この道15年。SEOライティングで成果を上げ、願いを叶えるまで。
クリエイティブサロン Vol.258 田中十升氏

今回の登壇者、Webマーケッターの田中十升氏を一言で表すなら“たたき上げのSEO職人”。就職活動では挫折を味わうものの、ECサイトのアルバイトを転々としながらスキルを磨き、コトラーやドラッカーを教科書にマーケティング理論を身につけ、Webで成果を上げるノウハウをつかんだ努力の人だ。顧客から「信頼できる」と評価される実直さ、粘り強さがにじみでる語り口で、これまでの歩みを語ってくれた。

5つのアルバイトを渡り歩き、スキルを手に入れる

2019年に「アド・リング」を立ち上げ、SEOコンサルティング、Web広告（リスティング広告、YouTube広告）、Webサイト分析・改善の3本柱で、企業をサポートしている。「強みは、文章を書くだけではなく、検索順位が上がっているか、滞在時間はどうか、問い合わせや注文につながっているかなどを検証し、改善まで導けるところです」

消費者心理を研究してWebマーケティングを行い、見込み客をWebサイトに呼び込むことを得意としている。田中氏自身のSEOの実績としてGoogle検索で“ホームページ文章 ライター”1位、“アクセス解析レポート代行”2位を達成している。

1981年生まれ。「中学のときに発売されたWindows95に衝撃を受け、この分野をめざしたいと思いました」。大学は第一志望の情報系学部に合格する。しかし、当時のITは未知の分野で、心配する母親を説得できず、経済学部に入学してしまう。前年に父親が他界し、母親の気持ちを無視できなかったのだ。

志と違う道を選んだことで、モチベーションが上がらず、大学4年間は往復5時間の通学で精一杯。「部活やアルバイトなど何もしなかったので、就活のエントリーシートの『学生時代に力を入れたこと』は書くことができませんでした」。就職が決まらないまま2004年に卒業。その後、30歳までアルバイト生活となる。

最初の仕事は印刷会社の広告企画・マーケティングの業務。有能なマーケッターの上司にフィリップ・コトラーの著書をすすめられ、マーケティングの面白さに目覚める。3カ月の契約終了後、求職者向けのブランディングセミナーを受講し、人気講師エサキヨシノリ氏に刺激される。

Webの仕事に就こうと様々な求人情報を当たり、ようやく見つけたのが、着物のECサイトの仕事。販売コピーと画像を受け取り、ひたすら商品を登録した。スキルを上げたくて、どんな販売コピーか、どのように画像修正されているかを見ていると、登録が遅くなり、居づらくなって10カ月で辞める。

「次は人とコミュニケーションがとれる仕事がしたい」とブライダル会社に入る。披露宴のBGMや演出アイテムの準備を行う仕事で、2年勤めて「やはりWebの仕事に戻ろう」とアパレル通販会社に移る。商品撮影、画像修正、販売コピー作成など、ECサイトの業務全般を任された。「どんな表現が売れるのか考えるのが面白く、毎朝、何が売れているか見るのが楽しみでした」

この頃、ホームページを独学し、「BGM効果研究」サイトを作る。「たくさんの人が訪問してアフィリエイトで大儲けできる！と期待しましたが、結果はアクセスゼロ。誰もBGMに興味なかったんです」。ニーズの重要性を痛感し、SEOを学びたいと思う。「SNSで知り合った人がアフィリエイトやSEOに詳しく、検索されるキーワードや稼ぎ方を教えてもらいました」

アパレル経験や趣味を生かしてホームページを作ると、「ジャケットの着こなし方」「金運アップ」などで検索1位に。ホームページからの収入は多いときで月15万円ほどになった。「ホームページで稼ぐ道もありましたが、パソコン作業だけで金儲けすることに魅力を感じませんでした」

SEOで結果を出したことで、仕事探しは楽になる。28歳のとき、コスメ雑貨の通販会社でWebマーケッターとして採用され、ECサイトの集客を任される。メールマガジンを週15通送る仕事では、反響が得られるように工夫して作った。

バナー作成の機会を得たとき、デザインは未経験ながらマーケティングの見地からの表現を行い、消費者の心をとらえて売上に貢献した。しかし、上司の考えるデザイン論と自分のマーケティング論との板挟みになり退職する。

正社員から独立へ。成果を上げながら前へ進む

2012年、30歳のとき、カーテンを扱う通販会社でようやく正社員となる。社長と馬が合い、提案すれば何でも通った。「カーテン」のキーワードで検索1位を達成。カーテン専門店で売上トップになる。「この成果はお金を出してもらえたからでもあります。自分の力だけで成果が出せるか試したいと思い転職しました」

2015年、カラーコンタクト通販会社に移り、入社半年後に月商140万円のサイトを月商1000万円にした。「自分のノウハウで成果が出せると確信し、独立したいと思いました」。しかし、営業が不安で3年間も悩む。「行動しなければ同じ毎日が続くだけと、起業セミナーに半年通いました。やっていけそうだと感じ、やっと独立を決めたんです」

独立した2019年に手がけた、窓フィルム施工会社のリスティング広告では、月商15万円を1年後、月商100万円にする。「職人さん個人の会社で、大手の下請けではなく、お客様から直接仕事を受けたいという要望でした。月商を上げるには、客単価を上げればいいと考え、病院や介護施設から仕事が来るようにしました」

これまでに一番貢献できた仕事は某スポーツクラブのLP作成。1カ月で問い合わせを3倍にした。「『代理店に依頼しているが数字が悪い。もっと良くなるはず』と相談されました。お客様は単にスポーツがしたい人だけではなく、コーチと会話を楽しみたい人や、フィットネスジムの代わりに来る人もいると気づき、表現を変え、コーチの人柄や指導の思いも訴求すると成果が出ました」

「うまくいく案件は、お客様の悩みが検索キーワードになっています」。田中氏のマーケティングの基本はドラッカーから学んだ「最初に顧客を定義する」ことで、顧客は何を悩み、求めているのかを考え、商品を当てはめる。残念ながら、顧客が思う魅力と、クライアントが考える売りが異なることは多い。顧客からの魅力を訴求するようクライアントを説得するが、「売りは変えたくない」と拒否されることも。迎合しないため、「仕事は来ませんが、仕方ないとあきらめます」

願い事を叶えるSEOライティングとは

人脈を広げ、仕事のチャンスを増やそうと、2020年からセミナーの自主開催を始める。ウェブ解析士勉強会にも幾度か登壇しており、ウェブ解析士協会代表理事の亀井耕二氏からは「低予算でもリスティング広告で結果を出すというプロの意気込み。見習うべきことだなと思いました」という言葉をもらっている。

企業や公的機関などからオファーを受けたいと考え、イベント集客サイトのセミナー告知に“講演・セミナーのご依頼もお問い合わせください”と記載している。「主催者に見られたとき、どのように行動してほしいか、願いを書いているんです」。その願いは実現する。オファーにより、2022年にあいち産業振興機構でSEOライティングセミナーを行ったのだ。「前の週に17年前に受講したエサキ氏のセミナーがありました。講師として同じ場所に立てたことは感慨深かったです」。2023年には「ITソリューション総合展大阪」に登壇した。

「無名の私にオファーが来るのは、検索してくる人に私の活動を知ってもらえるからです。SEOライティングは七夕の短冊。願い事を書けば叶います。今後は、SEOライティングで中小企業の知名度アップに貢献していきたいと思っています」

田中十升氏（たなか とおます）

アド・リング
Webマーケッター

1981年生まれ。大学卒業後から15年間、マーケティング関連やネット通販の企業を渡り歩く。カーテン通販会社在籍時には、SEOライティングによりカーテン関係のキーワードで複数上位表示させ、売上に貢献。その後、新天地を求めカラーコンタクト通販会社に転職。楽天ショップを担当し、月商140万のサイトを入社6ヶ月で月商1,000万にする。2019年4月に独立。SEO対策やWeb広告を駆使して、予算が限られている中小企業の集客を支援するネット広告の仕掛け人として活動中。YouTube広告も活用した提案がクライアントから好評を得ている。

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公開：2023年3月28日（火）
取材・文：河本樹美氏（オフィスカワモト）

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