自分らしく走り続ける!“妄想”を研ぎ澄ませるヒント
クリエイティブサロン Vol.168 石橋智香氏

今回のゲストスピーカーは、石橋智香さん。ファッションイラストレーター・デザイナーでありながら、大学や専門学校で非常勤講師を務め、さらにトークイベントも開催するなどその活動内容は超パワフル! よく「いつも楽しそう」と言われるという、笑顔が印象的な石橋さんだが、実は様々な経験から人生を“オモロおかしく”する方法を体現していた。そんな石橋さんの考え方や、行動を起こすコツなどを教えてもらう。

石橋智香氏

仕事も人間関係も円滑になる「妄想のススメ」

高校時代にファッションの楽しさに目覚め、大阪モード学園に入学。卒業後は大手アパレル商社のデザイナー職を経て、フリーへと転身した石橋さん。
もともとは“石橋を叩いて渡る”怖がりだったというが、その臆病な性格を打破させてくれたのは、心から仕事を楽しむ大人たちだった。
「子どもの頃はかなり根暗でしたよ。振り返れば、10代が一番辛く苦しかった。変わる事のない環境の中でもがいていました」
影響を受けたのは、デザイナーだったお父様と中学時代の吹奏楽部の恩師。「父の仕事への姿勢は子どもながらに憧れました。とにかく熱量が凄くて、真剣で、全力で。顧問の先生も破天荒で、こんなの無理、できっこないと思う事を実現させてしまうんです。生徒より、先生が一番楽しんでいましたね」。そのパワーは弱小だった吹奏楽部を全国大会に出場するまでに育て上げる。
内気な性格は、身近にいたパワフルな大人たちによって次第に感化され、「やりたい事は絶対にやる」という想いが爆発! 現状を変えるには誰にも頼らず自分が行動するしかないと、モード学園では夜間部に通い働きながらファッションを学んだ。「環境を言い訳にしたくなかった。嬉しいこと、悲しいこと、たくさん心揺さぶられた10代でしたが、不可能を可能する二人の大人から、何事も真剣に楽しむ姿勢を教えてもらいました」

アパレル商社時代は、ミセスブランドのデザイナー・図案家としてキャリアを積んだ。そこでの経験から編み出したのが「妄想のススメ」。まだ新人だった頃、当然回りは優秀な先輩ばかり。新人はなかなかデザインをさせてもらえない状況の中、「チーフが厳しくも熱い人だったので、それならば、私ももっと熱くなろうと」と行動を起こす。自分自身を「憑依型デザイナー」とし、ターゲットを研究してミセスファッションを猛勉強。さらに「リサーチレポートの絵型を完璧に描く」「デザインをお願いされたら要望以上の型数を提案」「丁寧な仕事が求められる現場では、とにかく丁寧に描く」ことを実践し、新人ながらも図案が商品採用され、売上に貢献した。
相手を想像して自分ができることを探し、あらかじめ先回りして行動すること。そんな“妄想”を習慣化して、仕事も人間関係も円滑に運ぶように。「今でも、次はどうなるのかな……というときは、まず妄想! 頭の中でリハーサルをやっちゃいます。良し悪し含め何通りもシュミレーションするのでだいたい当てはまります。妄想で一度経験しているので現実では2回目(笑)、より柔軟に対応ができます」

作品

自分の世界を広げるためにメビック扇町へ参加

結婚を機にフリー転身。フリーになってチャレンジしたい仕事のひとつだった講師で教壇に上がった。出産・育児で一旦休業したあと、次に行動に起こしたのは「デザイン道場」への参加。「デザイン道場」とは、デザイン業界の第一線で活躍するデザイナーを講師に迎え、若手デザイナーに実践的なデザインマネジメントをレクチャーする勉強会のこと。「視野も知識も人脈もとても広がりました。今までファッションしか知らなかったので、ジャンルの違うデザイナーとの出会いは新鮮でしたね。行動すれば周りが変わる、フリーランスならではの出会いと楽しさを実感しました」
さらにメビック扇町のイベントにも出席したことで、石橋さんの世界はますます広がることに。多くのクリエイターと出会い、石橋さんの行動力とコミュニケーション力がさらに発揮される。

現在は、台湾・東京・福岡・大阪・名古屋・札幌・仙台の6都市で行われる総合エンタメイベント「CAMPUS COLLECTION 2019」のビジュアル衣装制作や、大阪・和泉市の大型パブリック・クリエイション「ART GUSH(アート・ガッシュ)」への作品出展など、多岐にわたるクリエイティブワークを展開。大阪モード学園などで非常勤講師も務めている。
並行して、メビック扇町で出会ったイラストレーターのかわぐちまさみさん、さらえみさんと結成したチーム「柿間久留乃プロダクション」(通称「柿プロ」)で定期的にトークイベントを開催。毎回、100人近い定員がすぐ埋まるという人気イベントになっている。

イベント風景
2019年9月開催柿プロ「合わせてフォロワー30万!!! SNS系マンガ家2大巨塔 横山 了一×吉本ユータヌキ 〜SNS大暴露バトル!!!!〜」

柿プロも3人のチームだが、衣装などのアパレル制作案件の際もチームを組むことが多いという石橋さん。そんな時に大切にしているのが「透明性」「思いやり」「適度な自己主張」「受けの美学」。
「この4つに気づけたのは、妄想して先読みするという経験がすごく生きているんです」。チームで動く時は自己主張ばかりで突き進むのではなく、相手を想い、相手の話を聞きながら丁寧に進めていくのが石橋さんのスタイル。「コミュ力を上げるにはどうすれば良いか?と相談を受ける事もあります。基本は、自分がされてイヤなことは、相手にもしない。人によって嫌なことは違うけれど、コミュニケーションのベースって、これに尽きると思います。自分はこうされると嬉しいな、を妄想する。初対面の時に怖そうな人より笑顔で話してくれる人に安心感を覚えるなら、自分も笑顔で接すればいい」
そしてもうひとつが、「今できるベストを尽くす」という考え方。「チームで動くと自分の思い通りになんて、なかなかいきません。失敗したり腑に落ちないことがあっても、そこに囚われて時間を費やすより可能な限り最善を尽くすほうが現状はよくなる。起きてしまったものは仕方ない、次に失敗しなければそれでよし! 怪訝に仕事するより笑いながら仕事をしたい」

イベント風景

フリーランスで必要とされる自分自身の“ブランド力”

そして今まさに、デザイナーとしての自分自身の“ブランド力”を高めているところ。自分から「発信していく側」になることの大切さ、重要性をひしひしと感じているそう。
きっかけは、「Charcoal」シリーズなどをオリジナルキャラクターグッズに展開し、百貨店や専門店の催事で販売したときのこと。次第に増えていく石橋さんのファンの中には、石橋さんの作風はもとより、コミュニケーション上手な人柄に触れてますますファンになってくれる人も。
そこで気づいたのが、「自分自身がブランド」だということ。「それって作家活動やイラスト仕事の時も、デザイナーのお仕事の時も一緒だと思うんです。なぜなら、クライアントも“人”だから。どんなお仕事でも、クライアントに自分の“ファン”になってもらうことってすごく大事、と強く思うようになりました」。石橋さんだけが持つ個性を輝かせることで、「石橋さんと一緒に仕事がしたい」と言ってもらえることも増えた。「だからよけいに、自分自身のスタンスを明確にして、ブランド力を高める努力が必要だなと思っています」

ネガティブな出来事も、妄想力と行動力でポジティブに早変わり。「イキって活きって生きる!」がモットーの石橋さんの、笑顔でパワフルなクリエイティブワークにこれからもファンが増えていくに違いない。

イベント風景

イベント概要

◯◯のススメ ~オモロ可笑しく邁進するヒント~
クリエイティブサロン Vol.168 石橋智香氏

様々な人々と出会って見えてきた、自分と人とのコミュニケーション。嬉しい事にたくさんの方から「コミュ力が高い」とか「いつも楽しそう」とよく言われます。……が! 実は……私◯◯なんです。それも相当な! ネガとポジは紙一重。今、自分らしく突っ走れるのは「◯◯族」だからかもしれない! それはどんな時でもどんな環境でも、おもしろ可笑しく進む為のヒントになるんじゃないかなと思います。

開催日:2019年8月26日(月)

石橋智香氏(いしばし ちか)

イシバシイラストファッションワークス 代表
ファッションイラストレーター tica ishibashi
イラストレーターユニット柿間久留乃プロダクション メンバー
大阪モード学園・京都精華大学 非常勤講師

「こころをズキュンと射抜く、胸に響くクリエーション」をコンセプトに、ファッションを軸としたイラスト・デザイン・教育の分野でクリエイティブワークを行う。モードを意識したファッションイラスト全般、アパレル企画や広告衣装制作、テキスタイルデザインなど。神戸コレクションのvillageブースビジュアルやグランフロント大阪ナレッジキャピタルの制服デザイン制作を担当。教育分野にも力を入れ、専門学校・大学講師の他にイラストセミナーも開催。描いて作ってよーしゃべる生粋の大阪人。

http://tica.cc/
https://kakipro.online-side.com/

石橋智香氏

公開:
取材・文:中野純子氏

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。