熱きロックスピリットから生まれる、常識を突き破るファッション!
亀山 曄氏:(株)バースマーク

亀山氏

愛らしくPOPなテイストと先鋭的なROCKテイストを併せ持ったデザインのアンダーウェアが、ファッション雑誌等でも話題のオリジナルブランド『Nigel Fever』を展開する株式会社バースマーク(以下バースマーク)。大手商社の繊維部門での経験を活かして7年前に起業。現在、同社を牽引する代表取締役兼デザイナーの亀山曄氏にお話を伺った。

進化形アンダーウェアのパイオニア的存在

『Nigel Fever』ポスター

現在、男性用アンダーウェア市場に一つの新しい流れが生まれている。それは、デザインセンスにあふれたボクサーパンツや直近では、クールビズ用のカラフルな模様をあしらったステテコといった、進化系アンダーウェアがトレンド化しつつあることだ。バースマークは、こうしたブームの先駆け役的存在といっても過言ではない。
「私たちは7年前に自社ブランド『Nigel Fever』を立ち上げました。ブランドコンセプトとしたのは、『LOVE&PEACE+ROCK』。そして、デザインだけでなく生地調達から生産までを全て日本で行なうことにこだわっています」
亀山氏の言葉通り、同ブランドの魅力は、感性を刺激するデザイン性だけではない。一度履いたら他のモノでは満足できないほどにこだわった日本人の感性に合う履き心地を、日本の生地・職人の手によって実現していることだ。
“洗練されたデザインと上質な履き心地の両立”という大手では実現できない部分に着目したことが奏功し、現在同社商品を取り扱う店舗は拡大し、オンラインショップでも人気沸騰。さらに期間限定ながらもファッションの先進地・東京渋谷の『SHIBUYA109』 に直営ショップをオープンさせている。
他にも同社のブランド構築ノウハウや展開力が大手衣料量販店や有名ブランドから認められ、売場の企画や新商品・新ブランドの企画立案を依頼されるなど、事業の広がりは留まるところを知らない。

ブランドのデザイン、コンセプトは、幼い頃の体験が原点

亀山氏

ブランドの設立者であり、デザイナーである亀山氏の原点になったものがある。それが「ROCKスピリット」だ。
話は少しさかのぼるが、外国人の血が入り、瞳の色や髪の色、肌の色が少し日本人離れしていることから、幼い頃、同世代の子供たちから度重なる差別を受けたという亀山氏。
「4歳くらいの頃、眼の色が皆と違うということで、いじめに近い仕打ちを受けました。当時私が思ったのは、人と違うことはそんなにいけないこと?皆と一緒じゃない私はどうしたらいいのだろう…。と悩みました。少し大人になって、違うことは個性なんだと認識しはじめ、その頃から私は何がなんでも個性を大事にするという意識が芽生えたんです」
そこから、ROCKミュージックとその既成概念をぶちこわすROCKスピリットに傾倒。いつしか個性を表現する手段の象徴とも言えるファッションの世界を志すようになった。
そんな亀山氏は大学卒業後、大手商社に入社。繊維部門担当としてアパレル人生のスタートを切った。しかし、衣料量販店の担当者と渉外を重ねる中で、亀山氏の中にある疑問が生まれる。
本当にこれでいいのか?—
大量生産・大量販売というビジネスモデルの中では、コストダウンがすべてのモノサシ。少しでも良い生地を、できるかぎりデザインにこだわった商品をということよりも、いかに安くできるかというやりとりの毎日に、気がつくと明るい未来が見えなくなっていった。一方で、高級ブランドに携わるスタッフは、一切の妥協を許さない。生地、縫製に関してはコストよりも質を優先することに刺激を受けた。
対照的なクライアントとのやりとりの中で、亀山氏の心に起業への思いが首をもたげ始める。そしていくつかの商社で10年近く働いた経験を活かし、2004年、バースマークを設立した。

ホンモノにこだわり続け、あきらめない心が生んだ成功

商品

「会社設立時に決めたのは、どこもやっていない斬新さを持ち、しかも徹底的に質にこだわった商品を提供しようということ。そこで最初に誕生したのがカラフルなデザインのボクサーパンツです。でも、最初は『男性はこんな派手なものを履かないよ!』と周りからは否定的な意見ばかりでしたね」
起業時は一月先の未来も見えない暗澹たる状態だったという。でも、商品に対する自信はあった。それもそのはず、パタンナーにはアパレルの世界で大御所と呼ばれる技術と経験を持つ人物を何度もアトリエに通って口説き落とし起用。またゴム紐や生地、縫製も日本の洗練された技術を持った企業を一つひとつ説得して回り、パートナーになってもらった。しかし発売から3年間は、ありとあらゆる店舗を回ったがあまり売れなかった。
そんな時、転機が訪れる。亀山氏のゲイの友人から誘いを受け、エイズ撲滅キャンペーンにボクサーパンツを出展したのをきっかけに、ゲイ専門誌に取り上げられるようになったのだ。そして、一般ファッション誌にも掲載され、その後、大ブレイクとなった。
「ゲイの人たちは、男性だからとか、女性だからとか、既成の概念にとらわれない感性を持っています。だから、本当にデザインの面白さや履き心地の良さといった本質的な部分に共感してくれたのは嬉しい。本当にこの時は、私たちのやり方は間違っていなかった!と実感しましたね」

ファッションを通したコミュニケーションで個性の大切さを伝えたい

バースマークスタッフ

最後に将来のビジョンについて伺った。
「将来的には、私たちのブランドをもっと広げていきたいということは第一ですが、正直なところ、おもしろいことをやりたいという思いはあります。例えばグラフィックデザイナーやイラストレーターさん、映像作家さんたちといった異業界の人たちと組んで、世の中を驚かすようなことをやりたい。それも日本発ではなく、大阪発で!」と亀山氏とブランドディレクター佐竹氏たち社員は、目を輝かせながら語る。
続けて「今の若者たちは平均化されすぎて、個性がないように感じます。だから私たちは、刺激的な商品を提供して、少しでも多くの人に個性を出すことの楽しさを知って欲しいんです」と熱く語ってくれた亀山氏。
“ファッションを通したコミュニケーションによって、多くの人に個性の大切さを伝えたい”。バースマークの生み出すファッションには、そんな強い思いが込められていると今回の取材を通して実感した。

公開日:2011年07月14日(木)
取材・文:文士舎 北川 学氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏