クライアントが喜んでくれるからビジネスが成立する。
森岡 昇馬氏:(株)森岡WEB企画

※2014年9月に社名を「エムダブ株式会社」に変更されました。

森岡氏

「本当にWEBしかやらないWEB屋ですから」と語るのは、ホームページ制作をメインに行う(株)森岡WEB企画の代表・森岡氏だ。WEB以外の仕事については基本的にお断りするか、仲間のクリエイターを紹介するという。また、クライアントと顔の見える関係を大切にしつつホームページを制作することにもこだわっている。今回は、10年以上前に中国留学中にビジネスをやった話や、仲間と起業して失敗の連続から今の事業を始めることになった経緯、さらには趣味の釣りやコミュニケーションマジックなどについて話をうかがった。

中国留学で、ビジネスの面白さを知る。

森岡氏

子どもの頃は全くパソコンへの興味はなかったという森岡氏は、大学へ進学してサラリーマンとして働くことは考えていなかったという。周囲が受験勉強を始めようとする頃、海外留学、しかも中国への留学を決めた。
「中国を留学先に選んだのは、近くて将来性がありそうで面白そうだったから。でも、将来は“中国への留学経験あり”が自分のブランドになるような気がしたんです。でも、周囲のみんなから『なんで中国留学?』と言われましたね(笑)」

中国語がほぼ話せない状態での留学のため、まずは大学入学を目指して語学学校に入学することに。
「自分の人生にとってオモロかったら良いという程度でした。大学卒業まで5〜6年は中国にいる覚悟でしたが、行ってみると語学学校に日本人が200人ぐらいいて、友達もたくさんできました」
半年ほど経つと、生活に困らない程度の語学力は身についた。
「『中国の大学で4年間も学ぶべき事があるのか』なんて考えたり。ちょっと一人前の気分だったのかもしれません」

そんな時、上海にいた同世代の日本人グループから仕事を一緒にやろうと誘いを受けた。その仕事とは、日本人留学生を相手にした格安の国際電話システムの販売。
「飛びこみ営業なんですが思った以上に契約が取れたんです。それが面白くて、最終的に学校は退学してしまでのめりこんでいきました」
その後は、電車で50時間かけて中国国内の田舎に出張したり、法人営業や中国以外の外国にまで販路を広げた。だが、インターネットの普及に伴って事業そのものに陰りが見えはじめ、次の手を考えるタイミングが訪れた。

失敗から学んだ『やりたい事より、提供できる価値が大切』。

取材風景

国際電話の事業をやっていた仲間が、次のビジネスを考えるために上海に集まった。
「全員で考えていると『ネットベンチャーがカッコイイ』という話になって、日本で会社を立ち上げることになりました。私が代表取締役になったんですが、もちろん名前だけ。実際の意思決定はメンバー全員で行っていました。しかし、理念も強みもなく、すぐに目先の資金に苦労する状況に……今思えば、負のスパイラルに入っていましたね」

結局、手当たりしだいに1年間で10以上の事業に取り組むが、すべてうまくいかなかった。そして1年後、メンバーは自分を含めてたった二人になってしまう。
そんなある日、美容室からホームページ作成の依頼を受けた森岡氏。多くの失敗事業のひとつだった地域ポータルサイト構築に取り組んだ時のノウハウが生かされ、無事サイトを制作して納品した。
「クライアントに喜んでいただけた上に、売上も計上できた。我々がクライアントに提供できる価値は、ホームページ制作の技術だと気づかせてくれたんです。自分たちがやりたいこと、儲ける方法ばかり追いかけてもダメで、やりたい事と提供できる価値は違うと悟りました」

“顔の見える関係”を重視するために独立。

事業の核は“クライアントに喜んでもらうこと”。こうして少しずつではあるが着実にWEBの仕事を増やしていった森岡氏。そんな中、中国留学時代からのパートナーと袂を分かち、独立することになる。
「パートナーはクライアント数を増やして売上を伸ばそうとしていましたが、私は一つのクライアントと密接に関わっていきたかった。我々がクライアントを増やすと、目の前のクライアントの満足度は低下するんじゃないか、と思ったんです」
独立当時から現在まで、クライアントの顔が見える関係の中で仕事を進めていくことは森岡WEB企画の特徴であり、強みとなっている。他にもWEB制作会社として常に意識していることをたずねた。
「自分が思うウェブの形、提案や考え方を必ず伝えることですね。言われた通りに作る、言われた事だけをやるなら他社に依頼しても同じ。常に“物言うウェブ屋”でありたいですね」

釣りとマジックで、自分も世の中も楽しくしたい。

釣果

森岡WEB企画のこれからについてたずねた。
「企業は拡大して利益を出すことは大切なミッションですがそれがすべてではありません。原点はお客様に喜んでいただくこと。会社が大きくなることでクライアントとの関係性が希薄になったり、対応が悪くなってしまうのはあってはならない、これを忘れずにやっていきたいですね」
個人的には、趣味の釣りを楽しみたいという。
「独立したら平日に釣りができると思ったのですが、なかなか行けなくて。今後は折り合いを付けて、一カ月に一回は釣りをしたいですね。海が僕を呼んでいるんですよ(笑)」

手品

また、コミュニケーションマジックも学んでおり、現在は中級レベル。名前は釣り好きだけに“フィッシャーマン”だそうだ。先日はボランティアとして東北へ赴いてマジックを披露し、たくさんの人々が笑顔を取り戻す姿に感動したという。
「“手品”という文字は、手が1つと口が3つあるでしょ? 手の技術よりも話す技術が上手じゃないと喜んでもらえないんですよ。時には失敗しますが、失敗した時のリカバリー方法も技術のうちですから。これからも、釣りやコミュニケーションマジックなどで自分の幅を広げつつ、たくさんの人と出会いながら楽しい人生を過ごしたいですね」

公開日:2011年07月20日(水)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:清水 敬二郎氏