クリエイティブは世代を超えて。
3団体から3世代3人ずつのトーク3昧 第3弾「クリエイティブってこういうことなのねの話。」
日本広告写真家協会(APA)関西支部、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)大阪、大阪コピーライターズ・クラブ(OCC)の3団体からスピーカーを迎え、モデレーターの巧みな司会を軸に繰り広げるトークバトル第3弾。2017年2月の第2弾「言葉の殴り愛」に続き、今回のテーマは「クリエイティブってこういうことなのねの話」。各団体から1名ずつ選ばれた若手・中堅・ベテランのクリエイターが、世代別に1時間ずつ、クリエイティブについて熱く語り合った。
第一部:若手の部
スピーカー
石田ひろあき氏(APA関西)
POP.photography / フォトグラファー・ビデオグラファー
佐藤大介氏(JAGDA大阪)
株式会社サトウデザイン / グラフィックデザイナー
川村健士氏(OCC)
博報堂関西支社クリエイティブソリューション局 / コピーライター
MC / モデレーター
わきたけん一氏
アンクル / コピーライター
アイデアは、どこからやってくる?
わきた氏
こんにちは。若手の部のMCをさせていただきます、コピーライターのわきたけん一です。今日はお互いに気兼ねなく、ざっくばらんに話し合いができたらと思っています。まずそれぞれの自己紹介からお願いします。
石田氏
私は約8年前に独立しました。「広告写真が撮りたい!」と周囲に言っていたらひょんなことから仕事をいただき、この数年で広告写真の案件も増えてきました。やりたいことを口に出して言うのって大事ですね。
佐藤氏
私も石田さんと同じく約8年前に独立しました。仕事は多岐にわたりますが、特に書籍の装丁デザインは好きな仕事の一つです。カバーや表紙のほか、スピン(しおり紐)や花ぎれ(ヘッドバンド)という製本素材を選び、本全体をデザインすることが装丁のおもしろさだと感じています。
川村氏
博報堂関西支社でコピーライターをしています。大学ではグラフィックデザインを勉強していて、元々プランナーをしていたのですが、3年前にコピーライターに転身しました。
わきた氏
今日は「アイデアはどこからやって来る?」というテーマですが、みなさんはいいアイデアを出すために、日ごろから心がけていらっしゃることはありますか?
佐藤氏
僕は最初の打ち合わせに行くときには、クライアントさんの基本的な情報だけを調べて、あまり詳しく知りすぎないことを心がけています。新鮮な視点や客観的な立場をまず大切にしたいので。
川村氏
確かに、案件によってはまっさらな頭で臨むことって大事ですよね。その方が遠くに飛べると言うか、思いもしなかったところに着地するようなことがあると思います。
石田氏
カメラマンは案件に対して最初にアイデアを求められるということはあまりないですね。でも現場ではできるだけ表現方法や撮り方を提案します。それが取り入れられることもありますが、自由度でいうと、カメラマンはそれほど高いとは言えないと思います。
わきた氏
なるほど。アイデアが生かされるためには、ある程度の自由度が必要ということでしょうか。
川村氏
一概にはそうとも言えないと思います。最近、私が関わった株式会社ロフトの“創業30周年記念ポスター”を見てください。企業の節目の年の記念ビジュアルというと、花やロウソクなどを使ったアニバーサリー風のものが一般的ですよね。私たちも最初はそんなビジュアルを作っていたのですが「あまり面白くないね」となり、「一応こんなのも作ってみようか」という感じで、このアイデアを一緒に出したんです。するとクライアントさんがこちらを気に入ってくださいました。自由度が低いからといって諦めなくても「こんなん作っちゃいました」と苦笑いしながら出すようなアイデアの枠を用意しておくことも大切だなと思った案件です。
佐藤氏
私はどちらかというと、アイデアの自由度が必要というよりは、案件に対して「どんなトーンがいいのか」「どういう方向性を目指すべきなのか」「なぜこの書体を使うのか」など、ビジュアルの一つひとつを制作チームで議論し、納得しながら進めていくことも多いですね。
わきた氏
クライアントさんとアイデアを育てていく感じですね。アイデアの善し悪しの判断って、とても難しいですよね。
川村氏
アイデアの善し悪しの判断と言うと、以前、屋外広告の案件に関わった時、社内のベテランディレクターに「切手サイズに出力して検討しろ」と言われたんです。どんなに大きな広告でも、街中では切手サイズくらいでしか視野の中に入らない。それでも強く見えるかどうかを検証するためということでした。切手サイズに出力すると文字も読めないし、ビジュアルもよく分からない。でもその上で「何だか気になるものになっているかどうか」がとても大事と教えられたんです。それ以来、どんなアイデアでも一度小さく出力して検証するようになりました。伝わり方が「強いか弱いか」「早いか遅いか」という“強度の測定”だとも言えます。ビジュアルの見え方だけの話なのですが、大切なことだと思うんです。
石田氏
私は職業柄、現場のみんなでひとつのものを創っているというチーム感が、アイデアを生み出す上でも重要だと思っています。現場での機転というか、その場でいかにいい考えを思いつくかという側面が大きいので、場の雰囲気づくりは大切にしています。
佐藤氏
私はどちらかというと理詰めで案件の方向性を探っていくことが多いので、どこかで矛盾点を見つけたり、説明がつかなくなると「この方向性はおかしいのかな」と、その時点まで戻って考え直すということが多いですね。一人で考えることもあれば、クライアントさんを含めたその案件に関わっているみんなで考えることもあります。
川村氏
確かにチームで力を合わせると、アイデアというボールがより遠くへ飛ばせるようなこともあります。でも私は、まず一人で考え込むことを大事にしています。次の段階として別の人に話してみて、アイデアが育つという感じです。それとは別に仕事とは全く関係のない人、例えばオカンなんかに意見を聞いたりすることもあります。オカンから「は? それ、意味分かんないわ」と言われたら、このアイデアはダメだなと(笑)。
わきた氏
オカン! 出ましたね! 最も厳しい批評をされそうですね(笑)。オカンが出てきたところで、そろそろこのトークセッションは終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
第二部:中堅の部
スピーカー
石崎公生氏(APA関西)
株式会社アド ボックス フォトグラフィ / フォトグラファー
鈴木信輔氏(JAGDA大阪)
ボールド / グラフィックデザイナー
押見聡氏(OCC)
killertune / コピーライター・クリエイティブディレクター
MC / モデレーター
西澤洋一氏
クラッチ / コピーライター
お金もうけのヒケツは?
西澤氏
こんにちは。中堅の部のMCを務めますコピーライターの西澤洋一です。では、さっそく自己紹介からお願いします。
石崎氏
私は岡山市でカメラマンをしています。20歳頃からデザイン事務所のカメラマンとして岡山で勤務し、その後フリーになり、今に至っています。仕事は人物、料理、建築物と多岐に渡り、その幅広さがローカルの強みかなと思っています。
鈴木氏
グラフィックデザイナーをしています。仕事としては、商品開発からパッケージデザイン、販路開拓などを含めた、プロジェクト全体をデザインするというような関わり方が多いと思います。また、大阪の価値を上げることも大阪のデザイナーの使命だと思っていて、「面白い大阪って何だろう」と考えながら活動をしています。
押見氏
コピーライターをしています。事務所はもう一人のスタッフと二人で、企業や教育関係の制作物やCM 関係、映像関係など多様です。最近ではディレクター的な立場で仕事をすることも多いですね。
西澤氏
今日のテーマは「 お金もうけのヒケツ」です。それはプロのクリエイターとしてしっかり仕事をして、きっちりお金にしていくということだと思いますが、みなさんは、どうやって新しい仕事と出会っていらっしゃいますか。
押見氏
私の場合は、やっぱり人のつながりから新しい仕事と出会っていると思いますね。その仕事をいかに大切に、期待を裏切らずにやっていくかということだと思います。
石崎氏
私もやっぱり大切なのは人とのご縁だと思いますね。ご縁から生まれる仕事だからこそ、丁寧にしなければという意識は常にあります。ギャラ以上の仕事をすることを心がけていますね。するとまたそこから紹介をいただくというように輪が広がっていくように思います。
鈴木氏
私も同じです。独立した時は、全く仕事のないところからのスタートでしたが、まず人と会うことを大切にしてきました。今でもそのスタイルは変わらず、仕事になるかどうかは分からないけれど、まず会って「ご飯でも行きましょう」から始めることが多いですね。仲良くなって、プラスに受け入れられる状況になってから仕事を始める。一番時間を割いているのは、人との関係を築くことかもしれません。もう一つ、セルフプロデュースということで言うと、基本的には仕事がなくても楽観的にしています。焦ってみても、私のキャラクターの見せ方としてはマイナスになると思うので。ちなみに余談ですが、みなさん仕事場に“招き猫”を置かれていますか? ウソみたいな話ですが、事務所に招き猫を置いたら、それ以来仕事が途切れなくなったんです!(笑)
西澤氏
招き猫ですか! お金もうけのヒケツの答えが出ましたね(笑)。ところで、先ほど石崎さんが「ギャラ以上の仕事」とおっしゃいましたが、それは具体的にどういうことでしょうか。丁寧な仕事だと思われるように心がけているということですか。
石崎氏
例えばクライアントさんから懐石料理の撮影を依頼された場合、もちろん基本的なカットは撮影した上で、「お箸で持ち上げたカットも撮りましょう」「お鍋が煮えて湯気が出ているシーンも撮りましょう」など、時間のある限り自分の思いついたシーンを撮影します。もちろんその場でお金が発生するわけではないのですが、それが次の仕事につながっているように思いますね。
押見氏
なるほど。コピーライターの場合はデザイナーやカメラマンと違って、仕事の成果が言葉一つです。なので、その言葉を「きちんと考えました」ということが相手に分かるようにしています。そうすることによって、アイデアの背景や思考のプロセスを理解していただけると思っています。
鈴木氏
私の場合は、プロジェクトとして何をするかという段階から考えることが多いので、なんとなく場を巻き込みながら作っていくというか、クライアントさんの気分を乗せていくという感じです。私自身が案件に対して思い入れのある場合が多いので、「見積りを作って」と言われるのがつらいですね。ギリギリとのせめぎ合いというか、葛藤というか……(笑)
西澤氏
今、見積りという話が出ましたね。私たちクリエイターは、自分の仕事に値段をつけなければなりません。難しいことの一つだと思うのですが、それについてはどうでしょう。
押見氏
見積りは未だに苦手ですね。私は相手に「予算のイメージを教えてください」とお願いすることもあります。 少なければ予算内でできる別の方法を提案することもあり、逆に必要以上の金額を言われれば「そこまで必要ありませんよ」と正直にお伝えします。
石崎氏
見積りを出した後に「この金額でお願いしたい」と言われるのは、私からすると「しめたもの」です。ご縁があって見積りを出しているわけですから、数字だけの理由で他の人に仕事を取られるという事態は一番避けておかないといけない。だから私は具体的な金額を言ってもらえると嬉しいですね。見積りを送る時、メールの文面に「金額だけのことでお困りであれば、いつでも言ってくださいね」と一言添えておいたりします。
鈴木氏
私も石崎さんと同じように数字を下げてほしいと言われることもあるのですが、その時は見積書に赤字で「値下げしました」と書いておきます。見積りって自分の価値付けだと思うので、やっぱり安く見られたくないという気持ちがあります。でも私の場合、とりあえずお金の話は横に置いといて「この人ええ人やなぁ」から仕事になることも多くて、見積りの段階になって「お金の話、横に置いとかんかったらよかった」と後悔することもあったりして(笑)。私にとっては、相手の人柄や仕事ぶりを好きになることが、仕事を始める上で重要なポイントの一つなんですけどね。
西澤氏
確かに、実際に仕事をするときには、金額だけで選ぶわけはありませんよね。仕事の選び方で心がけていることなどはありますか。
鈴木氏
私の仕事の選び方は2つの軸があって「面白いか面白くないか」と「お金がいいか悪いか」ということです。もちろん両方揃っているのが理想ですが、なかなか難しいですよね。私は「面白くてお金のない仕事」も積極的にやるようにしています。
石崎氏
私も基本は同じように2つの軸で考えています。面白いしお金ももうかるというような仕事がいいですが、常にそういうわけでもないですよね。
西澤氏
もし長くお付き合いしているクライアントさんからの仕事が、面白くなくておまけにお金もよくないという場合はどうしますか。
鈴木氏
それはね、面白くなるんですよ。一緒に面白い仕事にしちゃうんです。関係性がきちんとできていたら、より面白い方向に変えていくこともできるんです。
押見氏
そうですよね。そうなるとお金のことも、もしかすると後々どうにかなるかもしれませんよね。
西澤氏
なるほど。信頼し合える仲であれば、お互いに納得し合えるいい仕事になるということですね。便利な時代になりましたが、やはり「人と顔を合わせてきちんと話をし、信頼できる関係性を築くこと」というのが、今日のテーマへの答えでしょうか。もう一つは、いい招き猫と出会うことですね(笑)。今日はどうもありがとうございました。
第三部:ベテランの部
スピーカー
篠原幸男氏(APA関西)
アトリエ・サバス / 主宰カメラマン
杉崎真之助氏(JAGDA大阪)
株式会社真之助デザイン / グラフィックデザイナー・大阪芸術大学教授
礒村輝美氏(OCC)
株式会社 空 / コピーライター・クリエイティブディレクター
MC / モデレーター
田中幹氏
博報堂関西支社クリエイティブソリューション局 / CMプランナー
田中氏
こんにちは。ベテランの部のMCという大役を任せられました、博報堂関西支社でCMプランナーをしている田中幹です。今回のテーマは「クリエイティブって、なんだろう」ということですが、それぞれのお立場から一言で表現していただきましょうか。
篠原氏
カメラマンの篠原です。私にとっては「クリエイティブとは旅」ですね。これまでいろいろな場所でロケ撮影をしました。その中には、あまり人が行ったことのないような場所もあり、その時の天候やたまたま出会ったものなど、思いがけない偶然が重なって素晴らしい写真が撮れたということもありました。特にロケ撮影での写真は、頭で練り上げて創るというタイプのクリエイティブではありません。ハプニングを味方につけて、その場でヒントを拾いながら形にするというものなんです。がんばっていたら神様がプレゼントしてくれるような幸運でもあり、経験知から生まれる勘でもあります。小説家の開高健さんの名言に「釣りは運と、勘と、根」とありますが、クリエイティブにも通じるものがあるように思います。
杉崎氏
グラフィックデザイナーの杉崎です。私は「クリエイティブとは発見すること」だと思っています。クリエイティブというと、真っ白い画面に何かを描くというイメージを持たれることも多いのですが、「発見する」ということが一番大事なんじゃないかと思うのです。先ほどの若手のみなさんの話の中に、案件の自由度という話がありましたが、クリエイティブって実は自由ではなく、逆に不自由な条件の中でどんな自由な発想で答えを発見するか、ということだと思います。だからクリエイターは、常に発見する力を磨かなければならない。それはつまり「問題意識をインプットする」ということ。仕事で言うと資料を読んだりすることかもしれないし、日常生活の中の気づきかもしれません。
磯村氏
コピーライターの磯村です。私は「クリエイティブとは憑依である」と言いたいですね。初めの段階では考えや主張が理解しにくい相手でも、一旦その人の想いを飲み込んで、自分の中で正当化して共感できるところを探して、言葉をつくっていく。そうすると、自分の表現にこだわるよりもずっと人の心に届く言葉になる。でも最近の若いクリエイターの中には自己実現のために仕事をしているというような人も多い気がして、「自分らしい表現ができないならこの仕事はしません」ということを平気で言ったり、少しでも理不尽だと思うことがあると簡単に辞めてしまったり。我慢が足りないようにも思いますし、そういう時代なのかなとも思います。
田中氏
なるほど。今、我慢という言葉がありました。みなさんはこの世界で何十年も活躍されているわけですが、若い頃は理不尽なことを言われたりしながらも、我慢してここまで続けられたということでしょうか。
磯村氏
そう言われて思い出したのは、駆け出しの頃に原稿用紙にコピーを書いて先輩に出した時に言われた一言です。「この原稿用紙、君がコピーを書くまでは2円の価値があったのに、君が書いたから価値がなくなった」と。今となっては笑い話ですが、若い時は「これは私の仕事じゃない」なんて言えるような環境ではなかったですね。
篠原氏
私はカメラマンですが、ディレクターの立場で案件に関わることが多いので、自分の会社の恥にならないような仕事にするという気持ちを強く持っています。納得できなければ何度でもやり直し、万一何かの失敗をしたらその責任は全て自分が取る。それだけの覚悟を持って仕事をしています。
杉崎氏
私の事務所でも、厳しいことを言うと辞めていくクリエイターたちもいました。若い人たちは、悩みながら試作をたくさん生み出し、そこから答えを見つけていくという作業ができにくくなっているように思います。私は「クリエイティブとは悩むこと」だとも思っているのですが、若いクリエイターとの違いは、ベテランは紆余曲折しても必ず目的地にたどり着けるということ。それは常に悩み、それを乗り越えてきたからなんですね。悩むことを恐れてはいけません。そして私たちの世代も、若い人を傷つけることを恐れているように思います。世代を超えたコミュニケーションが不足しているのではないでしょうか。
田中氏
確かに、厳しい先輩として若い人に接するということが難しくなってきた時代かもしれませんね。みなさんも若い頃は傷つくことが怖かったですか。
篠原氏
もちろん昔は怖かったですよ。 私も、これまでに会社を辞めないといけないというような失敗を何度もしました。例えば若い頃、ロケ撮影に持って行ったレンズが壊れていて、撮影したはずの写真が1枚も写っていなかったという大失敗は忘れられません。それ以来、ロケ撮影には必ずカメラを2台 持っていくようにしていますが、そんな恐ろしい経験を乗り越えてきて今があるのです。数々の失敗で傷つき、たくさんのことを学んで、度胸がついたんです。
磯村氏
私も若い頃、雑誌広告に致命的なミスをしてしまった経験があります。その時は会社を辞めて責任を取らないといけないと思いましたね。
田中氏
そんな修羅場を乗り切るコツってありますか。
篠原氏
それは機転ですね。そのミスを乗り切る方法を思いつくか、思いつかないか、ということです。普段から真面目に仕事に向き合っていると、乗り切る方法が思いつくんです。先ほどの言葉でいうと“勘”が効くんですね。
杉崎氏
私も若い頃は、致命的なミスを何度もしてきました。でも今は、例えばWebサイトだったらすぐに修正ができますよね。そんな怖い経験をする機会が少なくなってきているように思います。パソコンのない時代は、例えば正方形をきちんと描けるようになるのに1年かかるというように、現場の作業を何年もかけて身体で覚えました。技術を身に付けるのに時間がかかったので、当然そこには上下関係も生まれ、厳しい言葉も飛び交いました。
篠原氏
そうですね。写真の世界も徒弟関係がはっきりしていて、何かあると先輩や上司に厳しく叱られました。
杉崎氏
けれど今は、デジタル技術のおかげで、職人技術的な訓練が昔ほど必要ではなくなりました。逆に考えると、きちんと思考能力を持っていれば、クリエイティブな仕事ができるということです。世代によって方法や経験は違いますが、クリエイティブの本質は同じ。ものごとにきちんと向き合い、思考し、表現するということではないでしょうか。
田中氏
なるほど。スタートは世代間のギャップという話でしたが、やはりクリエイターとして世代を超えて共通するものがあるということですね。もっとお話を聞きたいのですが、今日はここで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
エピローグ
職業というヨコのつながりと、世代というタテのつながり。“ヨコ×タテ”のトークセッションから見えてきたのは、職業ならではの視点と、世代ならではの本音。そして共通するクリエイターとしての信念だった。「方法や経験が違っても、クリエイティブの本質は同じ」という杉崎氏の言葉は、わたしたちクリエイターの心に深く届いたはずだ。これからもわたしたちは人とのつながりを大切に、そして失敗を恐れずに、世の中に対して健全な問題意識を醸成しながら日々を過ごそう。いつかこんな場で、笑って話せるエピソードを披露する日が来ることを願いながら。
イベント概要
3団体から3世代3人ずつのトーク3昧 第3弾 「クリエイティブってこういうことなのねの話。」
APA×JAGDA×OCC in Mebic
写真(APA)、デザイン(JAGDA)、コピー(OCC)の3つの団体が世代ごと(若手、中堅、ベテラン)にスピーカーを選抜。インタビュー上手なモデレーターに導かれて、それぞれの職業、経験に基づいたクリエイティブなトークバトルを繰りひろげます。各世代ならではの、どんな話が飛び出るか。
開催日:2018年3月17日(土)
公開:
取材・文:岩村彩氏(株式会社ランデザイン)
*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。