真水のような自分を作る、ストレスを無くす10のヒント
クリエイティブサロン Vol.153 細川裕之氏

仕事をするうえでストレスはつきもの、というのがクリエイターに限らず多くの人に共通する認識だろう。しかし、「能動的に“ストレスレス”な環境を作ろうとする姿勢が大切」と説くのが、今回のゲストスピーカーであるオルガワークス株式会社・細川裕之氏。シェアオフィス運営、セミナー主催、アパレルショップ経営など、デザイナーという肩書では捉え切れない多彩な活躍を見せる細川氏が、これまでの経験から導き出した仕事への姿勢や意識の持ち方を「仕事をストレスレスにする10のヒント」と題して紹介いただいた。

細川裕之氏

あらゆる分野で才能を発揮するマルチクリエイター

細川氏は照明器具の商品開発、インテリアショップの立ち上げ&店長職などを経験し、2013年に個人デザイン事務所「TENG Meister」を立ち上げて独立。現在は、2017年に共同設立した「オルガワークス株式会社」の専務取締役も兼任する。「職業はなんですか?と聞かれても、うまく表現できないのでデザイナーと答えています」と笑う通り、その活躍はあまりにも多彩。シェアオフィス「ヨリドコワーキン」プロデュース・企画運営、少人数制セミナー「テングのヨリドコ塾」主催、アパレルショップ「TENG STORE OSAKA」経営、一般社団法人「うめらく」企画・ブランディング担当……など、数々のプロジェクトに携わっている。

さまざまな経験から生まれた、ストレスを無くすヒントの伝授の前に、細川氏オリジナルのテスト「仕事づくりの手法診断」が参加者に対して行われた。配布されたシートの質問に回答することで、それぞれの仕事タイプが判断できるというもの。職人気質の“キープ型”、ディレクタータイプの“アレンジ型”、プロデューサー思考の“ミックス型”、アーティスティックな「クリエイト型」の4つのタイプがあり、「プロジェクトチームを組む際には、これらのタイプの人をバランスよく組み合わせると上手くいきます」と、仕事術の一つを教えてくれた。

ヨリドコワーキング
大阪市北区大淀にある「ヨリドコワーキン」。その他、シェアアトリエ+住居「ヨリドコ大正メイキン」などのシェア施設も運営する。

体験を通じて得たヒントたち
頭と体を整理して、素早く的確な行動へ

テストのあとはいよいよ本題へ。「専門的な勉強をしているわけではないので、ストレスにまみれて生きてきた一個人が、経験から得た知恵だと思ってもらえれば」と細川氏。10個のヒントの一覧がスクリーンに映され、参加者が知りたいヒントについて細川氏が回答する対話形式で進行された。

最初に挙げられたのは“一つ始める前に、二つやめる習慣をつける”というヒント。「一つプロジェクトを始める前に、二つの仕事を手放すようにしています。こうして物理的に時間を作り、頭に余白を作るんです」。常に2~3割の余白を持つことで、最初の一歩を踏み出すスピードが上がり、高い機動力を持てるという。「より早く結果が出せるし、やってダメならやめる。退路を断つことで覚悟も決まります」

二つ目に選ばれたのは “楽しくない仕事はしない”。「デザイナーと名乗ってますが、パソコンの前で作業するのが苦痛で (笑)。しかし、私は“喋っているとき”が最もパフォーマンスが高く、楽しいと感じています。なので、最近は“喋るだけで仕事を完結させること”をめざしています」。これはビジネス的に考えても重要な視点で、楽しい仕事だからこそモチベーションが上がり、よりよい成果を出せるという。「楽しいと感じる瞬間を大切にしていけば、おのずと楽しい仕事が入ってくるようになるはずです」

三つ目は“多数派と少数派の両視点を大切にする”。「これは自分の中で天秤を持つことで、どちらに傾いてもいけません。また、ビジネスの現場でコロコロと立場を変えることは、よいことではありません」。多数派に傾くと傲慢になり、少数派に傾くと卑屈になってしまう。両方の視点を理解できる人は常に謙虚で、どんな場所でも真っすぐに進むことができると説明する。

四つ目は“熟考しない”。「パズルに例えると、外枠のピースはハマったが中央のピースが思い付かないときに、“このパズルを進めるorやめる”を判断するんです。長く考えても判断できないことは、まだタイミングではないと考えるべき」と細川氏。答えのない問題を考えること=ストレスと捉え、モノゴトのピースがハマったら進める。または、足りないピースは何か?と考え、スピーディーに決断することが大切だと語る。

五つ目は“自分が世界唯一であることを裏付ける”。評価し合う習慣がない日本では、自己評価が低くなりがちと言う細川氏。「分からないのなら“可視化する”というのが裏付けの意味です。私が高校時代に行ったのが順位付け。自分の絵の上手さは1/100人くらいのはず……センスは1/1000人……と、勝手に順位を付けました。その順位を掛け合わせていけば、すごい数字になるんです」。これを例として、自分の能力を概算の数字でも可視化して裏付けることで、現在の立ち位置が理解できる。強みや弱みを整理でき、自己評価にも繋がっていくという。

当日上映された、10個のヒント一覧
細川氏が編み出した「生きる知恵」ともいえるヒントたち。各項目に細川氏の経験や思考が凝縮されている。

お金や時間、情報、思考……。 正しく理解、摂取して自分の表現へ

ここまでで10個のヒントのうち半分が紹介された。これらの考え方や捉え方を聞いた会場では、大きく頷く人の姿も多数。それぞれに思い当たるヒントがあるようだった。それでは、引き続いて残り5つも紹介しよう。

六つ目は“英語(外国語)で考えたり喋る機会を作る”。「週1回のオンライン英会話を受講していますが、そのおかげで思考方法や伝え方が変わりました」と、その効果を語る細川氏。日本語は柔らかな表現が得意なだけに、多くの日本人はストレートに意見をぶつけられると引いてしまう。「しかし、英語では“I like”や“I don’t like”など、最初に自分の意見を表現する必要があります。意見を曖昧にしないのは相手への思いやりでもあるし、思考の整理にも有益です」

七つ目は“愚痴を言わない”。「愚痴と相談には大きな違いがあります。言葉は汚いかも知れませんが愚痴=排泄物。しかし、分解され堆肥になると有益な栄養に変わる。相談とは相手に栄養を与えること」。ここで言う分解とは分析のこと。情報を咀嚼し、自分なりに消化してから伝えるべきと説明する。「相談ばかりしても嫌われない人がいますよね?そんな人は、相手に栄養を与えているからなんです。相談上手は人から好かれます」

八つ目は“「時間」と「お金」の価値を理解する”。「毎日『お金』のことを考えていますが、執着は一切ありません。私の一番大切なものは圧倒的に『時間』。仕事とは限られた『時間』という資産を、『お金』に置き換えている感覚です」。しかし、お金を握りしめているだけでは意味がなく、何かに変化するときに価値が生まれると付け加える。「お金は絶対的なものではなく、暫定的な『道具』のひとつ。さまざまなモノに変換できるからこそ意味があるんです」

九つ目は“必要な情報に投資を惜しまない”。インターネットで膨大な情報が手に入る時代だが、細川氏はできるだけ有料の情報を手に入れるようにしているという。「情報の“確からしさ”とお金を等価交換するイメージです。質の悪い情報に惑わされるのはストレスそのもの。取り入れる情報は、“美味しいもの”を摂ろうと考えています」。信憑性の高い有料の情報を手に入れること、見識のある人のもとへ話を聞きに行くなど、そのために道具としての「お金」を使うべきだと語る。

そして最後の10個目は、細川氏のモットーでもある“出し惜しみをしない”。「100%の力を出し切ることって少ないですよね? しかし、出し切らなかった思いや、やり残したことは、不純物として心に蓄積されていきます。逆に、出し切った後の失敗は失敗ではない。100%でやり切ったら、結果はどうでもいいと思っています」。そのときそのときで、持てる全てを出し切ることが大切だと力説する。

当日投影された自己認識、自己投資、自己表現の相関図
「自己認識」「自己投資」「自己表現」を循環させることで、自分の環境を整えていく。

自己認識、自己投資、自己表現 ストレスレスを実現する循環システム

これまで紹介された10個のヒントは、「大きく3つの内容に分類できます」と細川氏。まずは、自分の器を知り整理された状態を作る「自己認識」。これを正しく行うことで余計な不純物を認識し、取り除いていく。そして、綺麗になった器に対して行うのが「自己投資」。確かな情報を得るだけではなく、経験や人脈、技術など、良質なモノゴトを取り込んでいく。それらをしっかりと咀嚼・消化し、価値を理解した後に行うのが「自己表現」。やりたいことやおもしろいと思うことを、良質なアウトプットとして社会へ出していく。そして、また「自己認識」へ。この3つを循環させることが、ストレスを無くすポイントだと語る。「私自身、今は全くストレスがありません。真水が満たされた水槽なような状態です。もし、ストレスというインクが混ざったらすぐに分かります」。真水の状態を保つことで、何にストレスを感じているか認識することができる。逆に濁った状態は、ストレスが感じられない鈍感な状態とも教えてくれた。

「今日からすぐに使えるヒントもあったかと思います。みなさんの未来の可能性を広げる助けになれば」と細川氏。自分を知り、澱みのない状態を作り上げる手法とロジック。クリエイターという仕事をビジネスとして続けていくうえで、大切な視点にあふれたサロンだった。

イベント風景

公開日:2018月10月23日(火)
取材・文:眞田健吾氏(STUDIO amu

細川裕之氏(ほそかわ ひろゆき)

細川裕之氏

オルガワークス株式会社 取締役
デザイナー / プロデューサー / 人生相談屋

1978年生まれ。香川県出身。
2013年にデザイナーとして独立するも、関心が「モノ」から「コト・場・ヒト」へと変化。現在は、「ヨリドコ大正メイキン」「ヨリドコワーキン」などシェアオフィス・アトリエの企画運営、「テングのヨリドコ塾」などのビジネスカウンセリング、「テングマルシェ」などのイベントプロデュースの他、教育、地域活動への参画などソーシャルビジネスの分野で活動の幅を広げている。