ベタに仕事したいんです。
帆前 好恵氏:(有)ガラモンド

企業の会報や広告、パッケージデザインなど幅広いジャンルで、デザインからアートディレクションまで手がけるガラモンド。5名のスタッフを率いる代表取締役の帆前さんに、「クリエイターの姿勢」について語っていただきました。

クライアントとじかに接したい


代表の帆前氏

人気芸人がたくさん登場するにぎやかな冊子と、企業が発行するカッチリとした感じの会報。同じデザイン会社の仕事なのかと思うほど、テイストがちがう。「私自身は堅いのが得意なんですけどねぇ」と笑う帆前さんだが、このレンジの広さがガラモンドの強みだ。

帆前さんはいくつかのデザイン事務所を経て、独立。独立前からつきあいがあったり、1つの仕事をきっかけにずっと関係が続いていたり、1つのクライアントと深くつきあうことを大切にしている。そして、もう1つ、大切にしているのが「できるだけクライアントとじかに仕事をすること」だ。



ガラモンドさんの仕事
会報や情報紙

「代理店とも仕事をしますが、クライアントからの反響が私たちのもとにまで届かない。クリエイターにとって、それって気持ち悪いことなんですよ。だから、クライアントと直接、やりとりしたいんです」

会報など、1冊まるごとのアートディレクションを手がける場合、クライアントのさまざまなスタッフとがっぷり組んで仕事をする。チームで仕事をするのが好きだと言う。「多くの人が関わると、大変なことも多いのですが、私、しんどいことはすぐ忘れちゃうから(笑)。人と顔をつき合わせて、ベタに仕事をしたいんですよね」

デザインで人を元気にする



ガラモンドさんの仕事
パッケージデザインや広告

「自分が手がけたデザインで人を元気にできればと思いながら、仕事をしている」という帆前さん。規模を問わず、自社商品に愛着を持っているクライアントとしたいと考えている。

「当社はパッケージデザインも手がけているのですが、小さな会社の社長さんと『これに社運をかけるぞ!』っていうような商品の開発にデザインで関われたらなぁって。その会社を元気にするお手伝いができるでしょう?」

現在、紙とパッケージの仕事の割合は8:2だが、帆前さんの言葉から、パッケージデザインにも積極的に関わりたいという意気込みが伝わってくる。

「パッケージデザインって難しいんですよね。ある商品のデザインを手がける際、スーパーで売れているデザインを調査したことがあったのですが、デザインのよさと売れ筋は必ずしも比例しない。デザインのよさの“ある程度”のところで販売数はピークを示しますが、それ以上の感度の高いデザインになると逆に下降線をたどってしまう。売り場で人々の印象に残るデザインと、クリエイターがよいと思っているデザインは必ずしも一致しないということを、勉強させられましたね」

夢は発信型の仕事

帆前さんには夢がある。発信型の仕事をすることだ。

「たとえば、日本らしさをテーマにステーショナリーなんかを作って、ヨーロッパで売りたいんです。それで儲けたお金を、メビックのようなクリエイター同士の交流の場につぎ込みたいな」

多くの人と関わりながら仕事をするのが好きという、帆前さんらしいお金の使い方だ。

拠点を東京に移すクリエイターも多いが、「東京には興味がないです」とキッパリ。
「なんかスマートに仕事が運びそうで……。私、ベタなのが好きですから(笑)」

公開日:2008年08月27日(水)
取材・文:細山田 章子氏
取材班: 宮下 大司氏