メビック発のコラボレーション事例の紹介

未来を築く建築の概念BIMの先駆者として、関西から日本をリードしていきたい
BIM LABO

「BIM LABO」メンバー
左から亀岡雅紀氏、河野誠一氏、新貴美子氏、鈴木裕二氏。
BIM LABOメンバーが集うスペースには、目的を同じくした同志たちの笑顔があふれる。

エキスパートたちの居城

メビック扇町にあるプロデューサーサポートオフィス7号室。そこは、BIM(Building Information Modeling)に関わるエキスパートが2011年5月に立ち上げた組織BIM LABOの居城だ。構成メンバーは、BIMソフトのエキスパート新(あたらし)貴美子さん、教育のエキスパート亀岡雅紀さん、ソフトウェア開発のエキスパート河野誠一さん、構造設計のエキスパート鈴木裕二さん、熱流体解析のエキスパート上中隆史さんの5人。BIM LABOは、BIM 請負の枠を超えて、関西を中心にBIM の基地、相談センターの役割を担う。

そもそも、BIMって何?

さて、読者の皆さんは、そのBIMについてご存知だろうか。BIMは建築分野において設計のやり方を変える画期的な仕組みだそうだ。建物を造る、使う、壊すといった一連のライフサイクルを管理する手法で、設計から監理、維持管理までを行うことができる。コンピューター上で建築部材を使ってモデルを造り上げるわけだが、単なる3DCGとは異なり、品番や価格、耐久年数などの情報も一緒に入力する。だから「ドアの色を替えたらどうなるか」「電球を替えたら光熱費はいくら下がるか」などのシミュレーションもたやすくできる。経年変化を想定した上での管理も可能になるので、「10年後に壁はどのようになっているのか」も分かるわけだ。
「建物を建てる前に、パソコン上のモデルの中を歩くこともできます」と話すのは、専門学校の講師も務める亀岡さん。
これまで設計図面を“見る”作業は、一部のプロが図面を“読む”作業だった。だが、BIMならパソコン上で造ったモデルを施主も設計者も施工業者もみんなフラットな立場で見て、理解することができる。
「図面の整合性が分かるし、施主も想像しやすくなります。トラブル回避としても有用です」と、主に住宅設計と店舗設計を手掛ける新さんは語る。
仕様変更による費用は、今までは回りまわって施主が負担してきたわけだが、BIMなら初めに部材の情報を入れているのでシミュレーションが簡単にでき、工期も短縮でき、経費も安上がりとなる。BIMデータを提供すれば、BIMでモデルを造る際に採用してもらいやすくなることから、積極的に情報を提供する部材・機器メーカーも増えているそうだ。
アメリカでは、公共工事の多くがBIMで発注されるという。欧州でも普通に使われ、アジアでは中国、ベトナム、タイ、インドネシアなどでも普及している。にもかかわらず、日本ではさまざまな障壁があり、うまく進んでいない。特に大阪は遅れている。「BIMを広く知らしめることにより、BIMのメリットに気づく人が増えれば、きっと一気に広まるはず」と一級建築士で事務所代表でもある鈴木さんは、期待を寄せる。

関西から大きなうねりを

BIM LABOは、現在代表を務める河野さんの「BIMの大きなうねりを関西から発信したい!」「BIMでおもしろいことをしたい!」という呼びかけに応えたメンバーが集まり、産声をあげた。みんな関西出身、関西育ち。BIM LABOは協同組合のような感じで進められることに大きなメリットを感じた、とメンバーは語る。通常の仕事では、施主から順に川下へと流れていくスタイルだが、みんなが並列であるところに興味を持ったという。
BIM LABOは、「BIMを伝える」「BIMコンテンツを創る」「BIMを使える人を育てる」「BIMを創るソフトウェアを開発する」の4つをミッションとして掲げ、実践している。一昨年は、バーチャルコンペにも挑んだ。2011年秋に開催されたBIMの耐久レースともいうべき48時間の時間制限コンペ「Build Live KOBE2011」である。大手ゼネコンも参加したこのコンペでは、BIM LABO以外の協力メンバーの支援もあり、神戸市長賞とBIMフロンティア賞をダブルで獲得。顔の見えるネットワークを地道に築いてきたおかげで、プロジェクト協力者を募ったところ、ノリの良い関西特有の気質からか、さまざまな方が力を貸してくれたという。
また、昨年11月には、建築系専門学校で「関西から3D BIMを盛り上げよう!!」をキャッチフレーズに、「大収穫祭 秋(あき)の人(じん)」を開催。そこでしか聞けない、そこでしか学べない数々のセミナーを開講した。その中には、競合するBIMアプリメーカー4社によるプレゼンテーションもあり、大変好評を博したという。これは、BIM LABOがアプリメーカーとのしがらみがないからできたもの。もちろん、その日はBIM LABOのメンバーも、それぞれが講師としてセミナーを受け持った。
仕事としては、あるゼネコンから依頼を受け、BIMモデルを作成し、BIMアプリケーションの使い方の説明までを含めて請け負ったりもした。

協働の手応えは、メンバーみんなに

実績を積み重ね、少しずつではあるが確実に注目される存在となったBIM LABOは、この春新たな人材を専従者として迎え入れる。これからは、ビジネスとしてもBIM LABOの活動を発展させ、社会的責任を果たしたいからだ。そのためにも、成功例としての実例をどんどん出して、大型の案件が来ても大丈夫な受けの体制を作っていきたいという。
「個人で仕事をしているだけではなかなか会うことのできないような有名人とも、BIM LABOでの成果が認められて会うことができました。メンバーの技を盗むこと、互いに学び合うことができるのも、協働のおかげですね。みんなでやっていくと辛くないし、楽しいですよ」
亀岡さんのこの言葉には、メンバーみんなの思いが集約されていた。

神戸市長賞授賞
「Build Live KOBE2011」で神戸市長賞を授賞。「プロ同士のコラボで、我々だけではないつながりができたことが大きな成果」と、河野さん。

BIM LABO

彩’s FACTORY

代表
河野誠一氏

http://www.sizefactory.jp/

有限会社アド設計

代表
鈴木裕二氏

http://www.adds.co.jp/

有限会社アルフォンス

代表
上中隆史氏

ATELIER NEWS

代表
新喜美子氏

ディースタイル カンパニー

代表
亀岡雅紀氏

http://3d-style.com/

公開:2013年7月19日(金)
取材・文:中島公次氏(有限会社中島事務所

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。