メビック発のコラボレーション事例の紹介

CMSを用いた使いやすいウェブサイト構築
中央官庁・行政のウェブサイト

ウェブサイト
photo:東郷憲志(東郷憲志写真事務所)

出会い
知り合ったのは、年に一度の夏祭り会場

皆さんは、CMSをご存知だろうか? CMSは、コンテンツ管理システム(Content Management System)の略称。専門的な知識がなくても簡単にウェブサイトを更新・管理できるシステムで、無料で提供されているものと、有料で販売されているものがある。ご紹介するコラボは、メビック扇町とCMS大阪夏祭り実行委員会の共同開催イベント「CMS大阪夏祭り」でつながった人たちによるウェブサイト制作事例だ。CMSに関わる人が一堂に集うこのイベントは2015年に始まった。3回目の昨年は過去最高の来場者279名を記録。メビック扇町で行われるイベントの中でも1日の来場者数が多い人気イベントのひとつだ。この催しでCMS大阪夏祭り実行委員の紀野惠さん(ANNAI 株式会社代表取締役社長)と太田垣恭子さん(同社取締役副社長)は、同じく委員を務めるスタジオドットラインのウェブデザイナー堀川依子さんとイベント準備などを通じて意気投合。また、このイベントに参加していたこざる舎のフロントエンドエンジニア小寺順子さん、スピカグラフのウェブデザイナー角田綾佳さんとも知り合って話が弾んだ。こうして、同社がウェブシステム開発を手がける際に、堀川さん、小寺さん、角田さんがデザイン・フロントエンド部分を担当するという協業の形が自然にできあがっていった。

イベント風景
「CMS大阪夏祭り」の様子。

つながりから生まれたもの
政府統計ポータルサイトも、経産省のプラットフォームも

制作したサイトは、この5人全員で取り組んだものもあれば、そうでないものあるが、その中から2件をご紹介しよう。一つ目は、「経済産業省ベンチャー支援プラットフォーム」。紀野さんと太田垣さんが窓口になってコンサルティングを担当し、サイト画面の見える部分を角田さんがデザインし、それを小寺さんと堀川さんがブラウザで表示されるようにコーディングした。この案件は、デジタルを前提として行政の在り方を見直す「デジタル・ガバメント」のモデルケースとして取り組まれた実験プロジェクトだ。もう一つは、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト「e-Stat」。何百万件もの政府のデータがまとめられたこのサイトは、制作にあたって「検索が遅い」「サイトが見にくい」などの課題の解決が求められた。こちらもクライアントとの打合せなどは紀野さんと太田垣さんが担当し、角田さんはデザインを、小寺さんはコーディングを受け持った。

ウェブページ
行政の透明性向上や地域経済の活性化などを目的とした京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」の制作にも関わった。

反響の広がり
制作したサイトは、なんと海外でも展開されることに

前述の2つのサイトはいずれもクライアントから高い評価を得ている。政府統計ポータルサイト「e-Stat」はODA(政府開発援助)として東南アジアの国にも展開されることになり、「経済産業省ベンチャー支援プラットフォーム」は同省の共通プラットフォームの雛形になるという。制作時を振り返り、角田さんは「私はクライアントとは直接お話ができなかったので作業は手探り状態でしたが、紀野さんと太田垣さんが間に入り先方の要望を聞いて、私がつくったデザインを調整していってくださったおかげでやり遂げることができました」と二人に感謝する。

「皆さん本当にクオリティが高く、安心して仕事を進めることができます」と太田垣さん。「ときにはビデオチャットツールに入ってもらい、クライアントや他の制作メンバーと直接やり取りをしてもらうこともありますしね」と紀野さんからの信頼も厚い。

ウェブページ
「e-Stat」は各府省が公表する統計データを一つにまとめた政府統計ポータルサイト。統計データの検索をはじめ、さまざまな機能を備えている。

機能するチームとは
リモートで仕事するその前には、やはり

ウェブ関係の人は、在籍する会社のオフィスに出社せず、自宅やレンタルオフィスなど、会社から離れたところで仕事をする、いわゆる「リモートワーク」をする人が多い。ビデオカメラを使って画面を共有しながら話をする方が便利なときもある。

「私は、家にいると家事などが気になるので、集中して仕事をしたい時には十三のコワーキングスペースがあるビルの一室で仕事をしています」と堀川さんはいい、小寺さんは「私の場合は、昼間は子どもが出かけていて、自宅も静かなので集中できますが、コワーキングスペースをドロップイン(一日利用)という形で利用することもあります」という。

「実際に会わなくて済むためのツールもたくさん出ているし、会う時間を作業に回さないと仕事が終わらない、なんてこともありますしね(笑)。ただ、仕事が進み出してからならリモートでも大丈夫ですが、知り合うまではやはり実際に会って話す場がないと。そういう意味ではメビック扇町で開催した“CMS大阪夏祭り”の存在は大きいと思いますね」(紀野さん)

「そうですね。イベントなど仕事以外のところで会っているのは、仕事を頼む上で大きな意味がありますね。仕事がスタートしてから“何かニュアンスが違うんだけど”というふうになれば、後々やりづらいですからね」(太田垣さん)

日本でも珍しいタイプのイベントとして業界の人に認知されつつある「CMS大阪夏祭り」は、わざわざ東京をはじめ、札幌、名古屋、福岡など全国各地から参加する人もいるほど。今年の開催に向けた計画も動き出していると聞く。次回はどんなつながりができ、どんなものが生まれるのだろう。ひょっとすると、読者の皆さんが次に愛用することになるサイトやシステムが、この夏の出会いをきっかけに生まれるかもしれない。

プロジェクトメンバー

ANNAI株式会社

代表取締役社長
紀野惠氏

取締役副社長
太田垣恭子氏

https://annai.co.jp/

こざる舎

フロントエンドエンジニア
小寺順子氏

https://kozarusha.com/

spicagraph

ウェブデザイナー
角田綾佳氏

https://spicagraph.com/

スタジオドットライン

ウェブデザイナー
堀川依子氏

https://sdlweb.com/

公開:2018年6月12日(火)
取材・文:中島公次氏(有限会社中島事務所

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。