メビック発のコラボレーション事例の紹介

防災・住宅の耐震化に関する地域住民の理解促進
防災・耐震化啓発イベント

プロジェクトメンバー

ことのはじまり
防災や住宅の耐震化の必要性を若年層に普及

防災・住宅の耐震化について学べるイベント「TAIAN CAFE in 垂水」が垂水駅前東広場で行われたのは、2017年10月17日のこと。テント屋台が並び、まるで地元の祭りのような楽しい雰囲気に誘われて、平日の雨天にもかかわらず子連れの主婦からお年寄りまで200名以上が訪れた。このイベントをプロデュースしたのが、メビック扇町で出会った5人によるクリエイティブユニット・天満販売促進部。彼らが「TAIAN CAFE in 垂水」を手がけるきっかけになったのも、メビック扇町だ。
1995年に起きた阪神・淡路大震災での教訓から、防災意識が高い神戸市。神戸市住宅都市局の平山知明さんは、多くの人たちに住宅の耐震化を啓発する「耐震で安心 TAIAN PROJECT」を手がけてきたひとり。2017年は、とくに今後の神戸市を支える子育て・若年層世帯の住宅の耐震化を進めるために、アイデアを模索している最中だった。住宅に関する神戸市民の相談窓口・すまいるネットの中川和樹さんもまた、平山さんと同じく子育て・若年層の集客に苦戦していた。
そんな中、2016年夏にメビック扇町で行われたイベント後の懇親会でフォトグラファーの竹内進さんと出会い意気投合。5人それぞれが専門分野を持つクリエイティブユニットに「一緒に何かできたらおもしろそう」とピンと来た平山さんは、さっそく「耐震で安心 TAIAN PROJECT」の認知度向上について竹内さんに相談を持ちかけた。

ミーティング風景
違う分野で活躍する5人が集まっているため、ミーティングではさまざまな切り口のアイデアが飛び出したという。

アイデアのもと
ヒントは人が集まる自由空間「ソトパ」

平山さんからの相談を受け、まずは耐震の勉強会に参加した天満販売促進部。かしこまった勉強会ではなく、カフェでリラックスして勉強できたことも後にヒントになった。「2016年に、『ソトパ』という野外型のパーティーを開催したんです。野外で人が自由に集まれる場を作ろうという目的だったのですが、『ソトパ』で耐震化をPRすればおもしろいかなと」とコピーライターの大西崇督さん。
天満販売促進部の企画提案を受け、平山さんが神戸市役所で調整を行い、さらに場所探しにも奔走した。過去のデータから、昭和56年以前の耐震基準の住宅が垂水区に集中していることがわかった。さっそく垂水駅前広場の使用手続きを進め、10月17日に開催が決定。その時点で開催まで1カ月を切っていた。
一方、急ピッチで進めていた天満販売促進部の企画会議も大詰め。創意工夫を出し合う中で盛り上がったのが、「屋台が並ぶお祭りのように、人が寄り集まりたくなるような空間」。建築デザイナーの宮窪翔一さんはふり返る。「僕らが企画会議でのレクチャーで学んだように、楽しさの中で防災知識を身につけるところまでつなげられる空間にしたいと思いました」

広がったつながり
若年層に興味を持ってもらう入り口になったブレンドティー

「紅茶の試飲をきっかけにして、来場者とおしゃべりしながら防災のレクチャーへ案内できるように空間を構成できれば」。5人のそんなアイデアから声がかかったのは、竹内さん・宮窪さん・カツミさんのセミナー仲間であり、紅茶専門店「オネ・テ」代表の西田万智子さん。「竹内さんから相談を受けた時、もし震災に遭って避難所で過ごしている方に紅茶をふるまうなら、どういう香りがいいかなと想像しました。緊迫した状況でも癒し効果のあるラベンダーやカモミールならホッとできるかもしれない。『安心してもらいたい』いう想いを込めて、オリジナルブレンドの紅茶を考えました」と西田さん。
企画の方向性が固まれば結束して形にするのみ。大西さんがパンフレットや配布チラシの文章をまとめ、アートディレクターのカツミさんがデザインを担当。展示会の設営に強いインテリアデザイナーの吉永幸善さんがイベント全体の統括を務めた。とりわけ吉永さんは、故郷の熊本県で被災を目の当たりにしたこともあり、「なんとしてもやり遂げる」という強い思い入れがあった。開催当日は、竹内さんがムービーとスチール撮影を担当。西田さんと宮窪さんは「TAIANティーコーナー」の屋台で来場者に温かい紅茶をふるまい、会話の中で他の屋台を紹介する役割に。新聞紙で防災グッズを作る屋台「ワークショップ」では、大西さんとカツミさんが講師役として大活躍。すまいるネットの中川さんが常駐する屋台「すまいの相談コーナー」や、積水ハウスの東田豊彦博士による「耐震教室」にも若年層が多く足を運んだ。

イベント風景
4つの屋台テントで工夫を凝らし、「防災」「住宅の耐震化」をさまざまな形で発信した。

チームの強み
広告媒体、空間づくり5人が持つすべてのスキルをフルに発揮

「これまでにはない新しい切り口に挑戦できたのは、天満販売促進部の皆さんの支えがあったからこそ。普段どおりの相談会なら出会えなかった若い層の方たちと出会えたのは、とても有意義でした」と中川さん。
カツミさんは今回のコラボを「私たちの特長である広告媒体に強い人間と、空間系に強い人間が集まってアイデアを出し合い、それぞれのスキルをフルに発揮できた機会」と笑顔で語る。また、声をそろえて「この5人ならなんでもできる、もっとできると確信した」と自信をのぞかせる。「今回はまだお披露目段階。次は発展型を見せたい」とも。今後の天満販売促進部の躍進に期待したい。

イベント当日お揃いの法被姿
イベント当日はあいにくの雨。おそろいの法被を着て集客に奔走した。

神戸市住宅都市局 建築指導部耐震推進課

推進担当係長
平山知明氏

http://www.city.kobe.lg.jp/

神戸市すまいとまちの安心支援センター すまいるネット

耐震支援係長
中川和樹氏

https://www.smilenet.kobe-sumai-machi.or.jp/

紅茶専門店「オネ・テ」

代表
西田万智子氏

https://hone-the.jimdo.com/

天満販売促進部

ディレクター / 建築デザイナー
宮窪翔一氏(design rubato

アートディレクター(イラストとデザイン)
カツミ氏(CA-RIN WORKS)

フォトグラファー / ムービークリエイター
竹内進氏(株式会社Sharp Focus

コピーライター / 文筆家
大西崇督氏(37+c

インテリアデザイナー / ディスプレイデザイナー
吉永幸善氏(パラボラデザイン

https://tenma-hansoku.com/

公開:2018年5月15日(火)
取材・文:中野純子氏

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。