メビック発のコラボレーション事例の紹介

クリエイターの作品をビジネス展開へと結びつける「Dif」
クリエイティブユニット Dif

柏木二美氏、山口正氏、牧野博泰氏、御宮知清恵氏
左から柏木二美氏、山口正氏、牧野博泰氏、御宮知清恵氏

メビック扇町でのイベントが手ぬぐいとポチ袋展に発展。

クリエイターの中には「自分が創作した作品を広く販売したい」と考える人は多い。そんなニーズに応えようと生まれたのが、クリエイティブユニットDif(ディフ)だ。
結成のきっかけは2011年にさかのぼる。クリエイターを集めたTシャツ展やCD・レコードジャケット展などを主催していたグラフィックデザイナーの牧野博泰さんが、メビック扇町で以前に知り合ったスクリーン印刷業を営む山口正さんとコラボを組み、動物をテーマにしたワークショップ&グッズ展を開催したことに始まる。このイベントは子どもたちが描いた動物の絵を、その場でTシャツやバッグ、ミニハンカチにプリントして販売するというもの。同時にクリエイターが創作した動物グッズも展示販売した。イベントは夏と秋に開催し盛況のうちに終了したが、運営的には赤字を出す結果に。「山口さんには迷惑をかけたにも関わらず、『非常に面白かった』と言っていただきました。これはまたコラボができると思いましたね」と笑う牧野さん。山口さんは「ちょうど当社では、お子さんが描いた絵をTシャツなどにプリントするサービスを手がけ始めた時期で、プロモーションを兼ねて参加したんです。これをきっかけに事業は軌道に乗ったので、結果的に大成功でした」と当時を振り返る。
イベント終了後、作品を出品したクリエイターから「また開催してほしい」という声が相次ぎ、「それならユニットを組んで、しっかりと目標を立てて取り組もう」と、牧野さんをリーダーに、グラフィックデザイナーやWEBデザイナー、イラストレーター、テキスタイルデザイナー、建築家など、さまざまなジャンルのクリエイターたちが集まり「クリエイティブユニットDif」を結成。ユニット名は、融解[fusion]と拡散[diffusion]の造語。多彩な個性が集い、目指す方向に向かって融解[fusion]し、目的を持って大きく拡散[diffusion]し続けようという意味を込めて名付けられた。
活動の第一弾は、メンバーの一人のイラストレーター・柏木二美さんの発案で手ぬぐいとポチ袋の展示販売会に。牧野さんは梅田・阪急百貨店での開催にこだわり、知り合いのイベントプロデューサーに相談して、10階の「うめだスーク」を確保することに成功した。「学生も参加するイベントなので、大勢の若い方が来店しますよ」とプレゼンして了解を得たという。作品はWEBサイトやFacebookなどを通じて募集。最終的にはデザイナーやイラストレーター、建築家、書家、美術・クリエイター系学生など120名約160点の作品が集まった。

「クリエイターズ和雑貨コレクション2014」の会場
「クリエイターズ和雑貨コレクション2014」の会場(於:阪急百貨店10階「うめだスーク」、期間:2014年1月29日~2月4日)。
多くのクリエイターのオリジナル作品が、一般のお客様の目に触れる貴重な機会となった。

次回はTシャツ展の開催を予定。ECサイトや海外展開も計画中。

「クリエイターズ和雑貨コレクション2014」と銘打った展示販売会は、1月末から1週間の期間で開催。和風の作品だけでなく、ファンシー系、アート系、タイポグラフィーをデザインした手ぬぐいなど個性豊かな作品が一堂に並んだ。「エスカレーターを上がってすぐの人通りの多い場所だったので、買い物ついでに立ち寄ってくださる方も多く、みなさん熱心に見ていただきました」とテキスタイルデザイナーの御宮知清恵さん。昔の日本手ぬぐいにならって両端を縫製せず、ほつれたままの状態にしたので、お客様に質問されることもあったとか。「昔の手ぬぐいはケガをした時に切り裂いて包帯にしたり、下駄の鼻緒にするために縫製していなかったんですよ」と説明したという。

展示品
会場では様々なデザインの手ぬぐいやポチ袋を販売。作品は出品者自身が思い思いの価格を設定して販売した。

売れ行きについて尋ねると、「ノーマルな和風の作品が売れると予想していたのですが、クリエイターの個性が色濃く出た奇抜な作品の方がよく売れていました。プロの視点で良いと思ったものと、消費者の目線の違いがハッキリと出て面白かったですね」と牧野さん。
「そのような傾向をクリエイターさんに情報公開していくので、今後の作品づくりに活かしてほしいですね」と山口さんは続けた。柏木さんは「阪急百貨店に自分の作品を出展するという夢が叶って本当に嬉しかった。全く売れるとは思っていなかったのに15枚以上も購入いただきテンションが上がりました」とのこと。御宮知さんは「私が出品したポチ袋も売れて良かったです」と話した。また、ほとんどのクリエイターから「出品してよかった」と感想が寄せられたという。「今回は牧野さんに準備作業が集中してしまったので、今後しっかりと役割分担を決めて効率的に運営していこうと思います。また、主要メンバーの他に、細かいことを手伝ってくださる方も募りたい」と山口さんは次回以降の課題を語った。

展示品

今回の作品については出品者の了解を得て、ECサイトで展開していきたいというメンバーの皆さん。一過性のイベントに終わるのではなく、ECサイトで継続して販売していくことで、出品者にビジネスとして意識してもらえるのではないかと期待する。「今回の展示会では外国人も多く来場し、非常に興味深く見ておられました。海外に発信すれば大きな反響を呼ぶのではないかと思います。その手始めとして今年7月にパリで開催されるJapan Expoに出展したいですね」
次回の開催については、今年夏ごろの予定でTシャツ展を企画中とか。「今後も皆さんのご意見を聴きながら作品の発表と販売の場を提供していきたいので、ぜひ参加してください」

展示会場風景

【クリエイティブユニットDif メンバー(五十音順)】
板谷さやか、Junpichi Imamura、御宮知清恵、梶川達美、柏木二美、佐藤あゆみ、鈴木美奈子、Mai Aimheart、藤野大輔、牧野博泰、松本有里、柳原蓉子、山口正、吉岡扶真子。

イラストレーター・オブジェ作家
柏木二美氏

株式会社山とし

プリンティングディレクター
山口正氏

http://www.yamatoshi.jp/

ヴィジュアル計画マーレ

招福図案家
牧野博泰氏

http://visual-mare.com/

恵 工房

テキスタイルデザイナー
御宮知清恵氏

公開:2014年5月19日(月)
取材・文:大橋一心氏(一心事務所)

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。