クリエイティブは個性を超えて 〜広告の未来を語ろう〜
3団体 3世代 トーク3昧 第5弾 APA×JAGDA×OCC in Mebic

日本広告写真家協会(APA)関西支部、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)大阪地区、大阪コピーライターズ・クラブ(OCC)の3団体から、世代の異なるスピーカーを迎えて繰り広げる恒例のトークバトル。第5弾となる2020年の今回は、それぞれ設定された“裏テーマ”で各部の登壇者が選ばれたという。そのテーマはトーク終了まで、来場者にも登壇者にさえも明かされないお楽しみ。さて、そのテーマとは? そして選ばれたクリエイターのトークから見えてきた、広告の未来とは? 今回も会場は熱気に包まれた。

第一部:“しかけづくり”ってオモシロイ!

スピーカー
入交佐妃氏

[APA]入交佐妃氏(フォトグラファー)

林亜衣子氏

[JAGDA]林亜衣子氏(AMO design / グラフィックデザイナー)

廣瀬泰三氏

[OCC]廣瀬泰三氏(電通 関西支社 / CMプランナー・コピーライター)

モデレーター
宮田昌彦氏

[APA]宮田昌彦氏(エムツーフォト / フォトグラファー)

宮田昌彦氏
宮田(MC)
こんにちは。第1部のMCをさせていただきます、フォトグラファーの宮田です。ではさっそく、みなさんがどんなきっかけで、この道に入られたのかということを交えながら、自己紹介をお願いします。

入交佐妃氏
入交(APA)
京都を拠点に活動をしている入交です。私は高校生の時に、初めてコンパクトカメラを手にしたのがきっかけで、写真に興味を持ちました。大学で写真部に入り、卒業後、写真館に勤めました。その写真館では、ほとんどの写真を「絞り8」で撮るように言われていました。そこで3年間修行して、「そろそろ絞り変えたい!」って思って……(会場笑い)、それで広告や雑誌撮影の世界に入りました。

廣瀬泰三氏
廣瀬(OCC)
電通関西支社でCMプランナーをしている廣瀬です。僕は高校生の頃、本気でお笑い芸人になりたいと思っていまして(会場驚き)、大学に通いながら吉本興業の養成所に行こうと思っていました。ところがある日、大学の構内に貼ってあった電通クリエイティブ塾のポスターを見て、CMプランナーやコピーライターという仕事に興味を持ったんです。通い始めて「自分が考えたことで人が反応する仕事ってオモシロイ」と感じ、この道に進むことを決意しました。

林亜衣子氏
林(JAGDA)
グラフィックデザイナーの林です。私は高校生の頃からデザインの仕事に興味を持っていて、卒業後、いろいろな仕事を経験しながら、クリエイター養成塾でアートディレクションを学びました。その後、先輩デザイナーがスタジオを設立する際に「あんたオモシロイから一緒にやろう」と声をかけていただいて(会場笑い)、デザイナーの道に入りました。今も「何か面白いこと考えて」みたいな、プランから一緒に考える注文も多いですね。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
「オモシロイから一緒にやろう」って言う、その人もオモシロイですね! 廣瀬さんと林さんの仕事は、「しかけをつくる」という意味で通じるものがあるかもしれませんね。

廣瀬泰三氏
廣瀬(OCC)
他の人と違うことを経験してきたというのはちょっとした強みかもしれませんね。僕の場合は、若い頃のネタ作りみたいなことが、素地になっているかな。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
なるほど。ところで、より目立つような、また笑いがとれるようなアイデアやしかけって、どうやって生み出されるのでしょうか?

林亜衣子氏
林(JAGDA)
私はまずリサーチですね。大切にしている言葉に、「知りたいことについてたくさん知っている人を、たくさん知っておけ」という、編集者の後藤繁雄氏の言葉があって。知りたいことを誰に聞けばいい情報が得られるのかということを常に意識しています。以前担当した10代の女の子向け商品の広告の仕事では、依頼を受けた時、すごく戸惑ったのですが、その言葉を思い出して、とりあえずゲームセンターに通いました。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
え!ゲームセンター?!

林亜衣子氏
林(JAGDA)
ゲームセンターに行けば10代の女の子に会えるかなと思って(会場笑い)。プリクラを撮っている女の子に声をかけて「なんでこのプリクラがカワイイと思うの?」と聞いてみたり、10代向けのコスメ売場で「どんなメイクが好き?」と聞いてみたり。たくさんリサーチをしてから制作を始めました。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
廣瀬さんの作品では、ソフトバンクホークスの「熱男」というスローガンがすごく印象的でしたが、このアイデアはどうやって生まれたのですか?

廣瀬泰三氏
廣瀬(OCC)
企業やチームのスローガンというのは、具体的な課題を解決するものではありません。これが正解!と言えるものがないので難しい。なので、ソフトバンクホークスの場合は、工藤監督がどういう野球をしようと思っているかを、まず手がかりにしました。僕、野球がめっちゃ好きでね、話すと長くなりますけどいいですか?(会場笑い)。まぁ、すごく短く言うと、その時、監督が高校野球のような泥臭くて熱い野球をしたいと思っていることを知って。それで熱い男たち=「熱男」が生まれました。結果的に、きちんと機能して場を盛り上げる言葉になったことはうれしいです。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
松田選手がホームランを打ったら、球場のみんなが「熱男―!」と叫ぶのはインパクトがありますね。まさに“しかけづくり”ですよね。ところで、入交さんはどうですか?

入交佐妃氏
入交(APA)
カメラマンの場合は、現場の雰囲気づくりが一番大切だと思っています。まずは私が笑顔で元気にしていると、モデルさんの緊張も和らぎますし、そして周りのディレクターやスタッフのみなさんも笑顔になって、明るい現場になります。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
なるほど。ところで女性カメラマンって増えているんでしょうか。

入交佐妃氏
入交(APA)
確実に増えています。現場スタッフの女性率が全体的に増えている印象ですね。

林亜衣子氏
林(JAGDA)
女性カメラマンって、私にとって頼れる存在なんです。案件や撮影時の相談はもちろん、個人的な不安もきいてくれる。

入交佐妃氏
入交(APA)
確かに、ちょっとした相談がしやすいと言われます。女性ばかりの現場だと、何かアクシデントが起きた時に、一緒に乗り越えていこうみたいな一体感が生まれたりね。

林亜衣子氏
林(JAGDA)
そうそう。それに休憩時間がめっちゃ楽しいですよね〜!

入交佐妃氏
入交(APA)
ね〜! みんなで一緒にランチ行ったりね!

宮田昌彦氏
宮田(MC)
……と女性のお二人が盛り上がっていますが、実は今回の対談にも“しかけ”がありまして……各部に裏テーマがあるんです。第1部のテーマは……

当日のスライドに表示された裏テーマ「ひょうきんな人の部」

廣瀬泰三氏
廣瀬(OCC)
そういうことでしたか! どう考えても僕、若手じゃないし「なんでやろな?」と思ってたんです(会場笑い)。

宮田昌彦氏
宮田(MC)
本日は楽しいお話をどうもありがとうございました。

第二部:“考える力”を鍛えろ!

スピーカー
山口陽平氏

[APA]山口陽平氏(studio plus be / フォトグラファー)

外賀寛子氏

[JAGDA]外賀寛子氏(SINWA GRAPHIC / グラフィックデザイナー)

川口修氏

[OCC]川口修氏(電通西日本 岡山支社 / クリエイティブディレクター・コピーライター)

モデレーター
細川誠明氏

[JAGDA]細川誠明氏(株式会社エーディーグラフィカ / アートディレクター・グラフィックデザイナー)

細川誠明氏
細川(MC)
こんにちは。今回MCをさせていただきます、細川です。今回の対談は各部に裏テーマがあるということでしたが、もちろん第2部にもあります! それはトークの最後までお楽しみということで、始めさせていただきたいと思います。では登壇者のみなさんに、この道に入られたきっかけを交えながら自己紹介をしていただければと思います。

山口陽平氏
山口(APA)
僕は美容・ファッション関係などを中心に撮影をしています。高校卒業後、ヘアメイクを学んだんですが、モデル撮影の実習があったんです。僕はその時まで、写真って見たままが写るものだと思っていました。ところが先生が撮った写真は、目の前のスタジオとは別世界。自分のイメージをはるかに超えたものでした。それを見て、写真ってこんな表現ができるのかとしびれたんです。その時の先生が今の師匠です。

外賀寛子氏
外賀(JAGDA)
私は広告を中心に、VIやパッケージなどの制作をしています。この道に入るきっかけとなった最初の経験は、高校の文化祭の時にみんなで一つのものをつくり上げる面白さに気づいたことです。ちょうど90年代の終わりから2000年代の初めの広告が華やかな時代で、広告の世界に憧れて、大学ではビジュアルコミュニケーションデザインを学びました。卒業後、紆余曲折ありましたが、広告の制作プロダクションに就職しました。

川口修氏
川口(OCC)
僕は電通西日本岡山支社でクリエイティブ・ディレクターをしています。大学の頃に「言葉って面白いな」と思ったことがきっかけで、宣伝会議のコピーライター養成講座に通いました。その時に宣伝会議賞に応募して銅賞をいただいたんです。それで「コピー考えて給料もらえるって、夢みたいな仕事やん!」と勘違いして(会場笑い)。それがきっかけで、最初は東京のプロダクションに就職しました。

細川誠明氏
細川(MC)
なるほど。みなさん、それぞれですね。駆け出しの頃、苦労はありましたか?

外賀寛子氏
外賀(JAGDA)
制作プロダクションに勤めた一年目は、つらかったですね。仕事の全体像が見えなくて、なぜこの作業が必要なのかが分からず、理不尽に思えたりして。上司のことを何度も恨みました(会場笑い)。でも今考えると、仕事を教えてもらいながらお給料いただいて……本当に感謝しています。

山口陽平氏
山口(APA)
僕の場合は、最初は写真館や結婚式のスナップ撮影などのアルバイトからスタートでした。その後、弟子入りしてからは、仕事も私生活も師匠と一緒でした。写真の技法からクライアントへの接し方まで、人としての生き方を学びました。

川口修氏
川口(OCC)
僕は会社に入った最初の一年目は、書いては上司に見てもらっての繰り返しでした。いつもけちょんけちょんに言われて、なかなか自分の書いたものが成果物にならない。でもある日、プレゼン資料のD案に入れてもらえて、またある日C案に、そしてB案にと上がっていって……長かったですね。

細川誠明氏
細川(MC)
やっぱりみなさん、若い頃はいろいろ苦労されたんですね。でもそれがあったからこそ今がある。

川口修氏
川口(OCC)
そう。若い頃は、とにかく数を書いていました。それは今でも大事だと思っています。たくさんのアイデアから選び抜いた提案は、クライアントに伝わる熱量が違う。100本書いても世に出るのは1本です。でも選ばれなかった99本があるからこそ、その1本が生まれる。残りの99本も自分の血となり肉となり、決してムダにはなりません。他の仕事に応用もできるし、書く体力もつきます。汗をかかないと、いいものは生まれませんね。

細川誠明氏
細川(MC)
体育会系ですね! 山口さんは、プロボクサーをめざされていた経験は仕事に生きていますか?

山口陽平氏
山口(APA)
「前の自分を超える」と言うのを常に意識していて、いつも自分と戦っている感じですね。それはボクサーの精神と同じと言えるかもしれません。

細川誠明氏
細川(MC)
ところで、広告のあり方が変化しているこの時代、これからこんなふうに仕事をしていきたいなどの思いはありますか?

川口修氏
川口(OCC)
確かに広告はどんどん変化していますが、アイデアや企画を考えるというのは、時代が変わっても同じだと思います。例えば、面白い広告を見ると「なるほど」って思いますよね。その「なるほど」って思うのはどんな時かと考えると、何となく感じていたけど言葉にしなかったことが、ぴたっと言葉にはまった時です。僕たちの仕事は、その「なるほど」と思わせるアイデアを、人よりどう先回りして見つけるかということ。広告のあり方が変わっても、考えることは同じです。

外賀寛子氏
外賀(JAGDA)
私もそう思います。以前観た映画の中に「世の中がどう変わっても、考える力を持っていれば生きていける」というような台詞がありましたが、時代が変わるからこそ、私たちは考える力を常に磨いていないといけない。だから若い人たちには、仕事ばかりに縛られず、自主制作をして考える力を鍛えてと言いたいですね。

山口陽平氏
山口(APA)
そうそう。カメラマンにとっても自主制作は大事です。仕事だけでなく、自分の撮りたい写真を撮る中で考えられること、鍛えられる力があると思います。若い頃の自分にも言いたいですね。

細川誠明氏
細川(MC)
みなさん、自分に厳しく、常に鍛え、磨かれている感じがありますね。そろそろ終了時間が近づいてきましたが、実は今回のテーマは……

当日のスライドに表示された裏テーマ「武闘派な人の部」

一同
おお〜!

細川誠明氏
細川(MC)
みなさんハートフルな武闘派でしたね。本日はありがとうございました。

第三部:“広告の定義”が崩れても。

スピーカー
川眞田光夫氏

[APA]川眞田光夫氏(WHA・WHA STUDIO / フォトグラファー)

三木健氏

[JAGDA]三木健氏(三木健デザイン事務所 / グラフィックデザイナー)

田中有史氏

[OCC]田中有史氏(田中有史オフィス / クリエイティブディレクター・コピーライター)

モデレーター
西川俊三氏

[OCC]西川俊三氏(パナソニック株式会社ライフソリューションズ社)

西川俊三氏
西川(MC)
こんにちは。第3部でMCをさせていただきます西川です。それでは登壇者のみなさんに自己紹介をお願いしたいのですが、仕事への向き合い方や大切にしていることなどを交えながらお願いします。

川眞田光夫氏
川眞田(APA)
フォトグラファーの川眞田です。ミュージシャンに請われフォトグラファーになりました。スタジオ設立後まもなく、オーディオメーカーの海外向け広告制作の全てをディレクションすることになり、クライアントとの信頼関係の重要性を感じています。その後、オーディオを中心に趣味性の高い分野で写真撮影をしています。趣味性の高い写真撮影は難易度が高く、いかに広告対象を魅力的に伝えるかがテーマです。

田中有史氏
田中(OCC)
コピーライターの田中です。コピーライターと言っても単にコピーを書くというよりは、「どうすればこの商品やサービスがより多くの人に伝わるか」を考えるディレクションを含む仕事が多いですね。フリーとなった1992年から変わらずテーマとしているのは、“時流に乗らない”ということ。最近では“マイナーに徹する”ということも意識しています。個人で活動を続けるには、メジャーと同じ発想でいてはどうしてもスケールで負けてしまう。それなら対極の発想でやっていこう。「一次産業や個人事業主の志を応援する」というような案件に、いかに「広告視点」を持ち込むか。折しも広告は、マスの時代から口コミの時代へと変わってきています。「口コミレベルのツールしか使えなくても、それらを広告的に機能させることで商品やサービスを広く伝える」ということも、マイナーに徹する上で考え続けている方法論です。

三木健氏
三木氏(JAGDA)
グラフィックデザイナーの三木健です。僕が大切にしているのは“気づきに気づく”という概念です。どういうことかというと……今、この会場にいい香りがしていることに気づかれている方はいらっしゃいますでしょうか? 実は第3部の前の休憩時間に、少しお香を焚いていただいたんです。デザインとは、社会や企業の課題を見つけ、その問題解決を可視化する作業ですが、目に映るものだけが全てではありません。人は五感を一斉に立ち上げて物ごとを認識しています。今、ここで漂っている香りのように、人の気持ちをリラックスさせる状況も、ある種のデザインではないかと思うのです。心地よいことや、ワクワクすることや、ドキドキすることなど、体の内側から嬉しくなるようなコミュニケーション環境をデザインしてみたい。そして、その喜びを伝播したくなる状況を作り出したい。「喜びをリレー」するようなデザイン。それが僕の理想です。

西川俊三氏
西川(MC)
ありがとうございます。ところで、昔に比べると広告の仕事は減っていると言われています。長く仕事を続けてこられた中で、それを感じられることはありますか? また、仕事を増やしたり、クライアントと長くお付き合いをするために心がけていらっしゃることはありますか?

川眞田光夫氏
川眞田(APA)
私はこれまで仕事をする中で、写真のクオリティがメーカーのブランド力を上げるのに寄与していると実感してきました。広告には必然性があり、撮影の際は、広告担当者だけでなくて、できるだけ営業担当者や開発担当者とも話をして、どういうふうに売りたいか、どういう思いで開発したのかなどをヒアリングするようにしています。

田中有史氏
田中(OCC)
仕事が減っているのを感じるかという質問ですが、広告の仕事を、ただ単にチラシやポスター、カタログなどのツールを制作することと捉えてしまうと、確かに仕事は減っていると言えます。でも広告の一番大切なミッションは「どうすればより多くの人に情報が伝わるか」ということ。そのためにどんな方法が効果的か、という根本から考えていくという関わり方をすれば、一概にそうとも言えません。

西川俊三氏
西川(MC)
依頼されたツールをそのまま制作するのではなく、よりよい方法をご提案するということですか?

田中有史氏
田中(OCC)
僕は“ミッションの再定義”と言っているのですが、その課題に対して本当にそのツールを制作するのが効果的なのかということを考え直すのです。例えば、まちづくりの案件なら移住者を増やすとか、中小企業の自社商品なら商品を広く知ってもらうことなど、根本的なミッションが必ずある。ツールをつくることだけを目的にしてしまうと単なる表現合戦となり、ともすれば価格競争に陥ってしまいます。

三木健氏
三木氏(JAGDA)
それを医者に比喩してみると、もっとわかりやすくなるように思います。患者が「お腹が痛い」と言って来て、「じゃあ、胃腸薬を出しましょう」という対処法ではなく、「お腹が痛い原因がどこにあるのか」を一緒に考えることが大切です。依頼主が「こういうツールが必要だ」と言われても、じっくり問診をするように内容を聞いてみると、抜本的な解決になっていないケースがあります。常々「着眼対局・着手小局」の視点と「不易流行」の思想で、物ごとの根幹を探るように依頼主の話を聞きます。そこに課題が潜んでいることが多いのです。これを僕は「聞くデザイン」と呼んでいて、ここで多くの方針が決まります。後は「わかりやすさの設計」と「語れるものづくり」をベースにデザインを進めていきます。これを「話すデザイン」と呼んでいます。「聞くデザイン」と「話すデザイン」。デザイナーは、コミュニケーションの循環を考える医者のような存在でなければなりません。

西川俊三氏
西川(MC)
すごく分かりやすい説明ですね。ところで、僕はメーカーで宣伝広報関係の仕事をしているのですが、入社時には宣伝部という名称の部署でした。それが宣伝広報部となり、今はコミュニケーション部となっていて、もはや宣伝という言葉さえ付いていません。先ほど第2部でも同じような話がありましたが、広告というものの形や方法がどんどん変化する中で、みなさんはどう対応されていますか? 心がけていることや、大切にされていることなどがあれば教えていただけますでしょうか。

三木健氏
三木氏(JAGDA)
僕がいつも心がけているのは、「最小の表現で最大の効果を」ということです。これはレイモン・サヴィニャックというフランスのポスター作家の言葉です。彼の作品は、時代や国境を超えて、一瞬にして僕たちにユーモアを届けてくれます。彼は「ユーモアは魔法の薬」とも言っていて、豊かなコミュニケーションは微笑みの中に生まれます。僕もそれを心がけたいと思っています。それからもう一つ、僕は企業のブランディングに携わることが多く、シンボルやロゴの仕事にも関わります。その時に重要なのが企業理念や哲学。「あったらいいな!こんな商品」と社会から求められるモノづくりやコトづくりをしている企業は、社員がイキイキと輝いています。そこにシンボルやロゴの命が宿るんです。デザインは「理念の顔」です。商品は「理念の子ども」のような存在です。理念なきところにデザインはありません。それをチャーミングに表現できるデザイナーでありたいと願っています。

川眞田光夫氏
川眞田(APA)
私は海外向けの仕事が多く、同じ広告でも国によって伝わり方が異なるので、それによって撮影ライティングを変えています。また、一方で広告写真にアート性を持たせることで、国や時代を超えて普遍的なものになるとも感じています。広告のあり方が変わっても、めざしている根本的なことは変わりません。私たちフォトグラファーがしなければならないことは、いかに広告ターゲットに魅力的な写真を撮影するかということで、その基本は変わりません。

田中有史氏
田中(OCC)
ところでみなさん、広告の定義ってご存知ですか? アメリカマーケティング協会の定義では、「広告とは、特定された発信者により、有料メディアで、非・人的な方法により、アイデア、製品、サービスを提示し、薦めること」と言われています。今、もはやこの定義は崩れていますよね。でも僕たちがやっていることは、やっぱり広告活動です。広告的視点で思考・考察し、解決するという行為です。たとえポスターやチラシからウェブサイトやSNSに変わったとしても、それは道具が変化しているだけで、アイデアを考えているのは僕たちの頭です。 頭を使って考えている限り、本質的なものは変わらないと思いますね。

西川俊三氏
西川(MC)
なるほど。理路整然と答えてくださって、とても分かりやすかったです。さて、今回も裏テーマがあると聞いたのですが、そろそろ発表してもよいでしょうか。

当日のスライドに表示された裏テーマ「インテリな人の部」

一同
なるほど〜。

西川俊三氏
西川(MC)
会場のみなさんも納得ですね。本日はどうもありがとうございました。

エピローグ

今回のトークセッションのテーマは“個性”。「ひょうきん」「武闘派」「インテリ」と設定された“裏テーマ”にふさわしい熱いトークが、各部で繰り広げられた。
それを拝聴しながら、ふと気づく。これって、すべて私たちそれぞれのクリエイターが持っている一つの側面なのではないかと。私たちは、時にインテリジェントに思考し、時にユーモアを持ってアイデアを練り、そして日々己と闘いながら仕事に向き合っている。この著しい変化の時代を、目に見えぬ大きな波に呑み込まれぬよう、クリエイターとして生き抜くために。

公開日:2020月03月26日(木)
取材・文:岩村彩氏(株式会社ランデザイン
撮影:平林義章氏(APA関西)

イベント概要

3団体 3世代 トーク3昧 第5弾
APA×JAGDA×OCC in Mebic

カメラマンとデザイナーとコピーライターが、
それぞれの立場から“広告”について語り合います。
広告の業界にいる人にも、広告の業界をめざす人にも。
役に立つことも、役に立たないことも。
いろんな話が聞けますよ。

開催日:2020年2月15日(土)14:00〜20:00
会場:メビック扇町