さりげなく 想い伝える ほの短歌 PRにも 使えます
クリエイティブサロン Vol.161 高田ほのか氏

今年度2回目で通算161回目にあたるクリエイティブサロンは、歌人・高田ほのか氏をゲストに迎え、「社会に役立つ!短歌の活用法」というテーマで開催された。サロンでは短歌との出会いから魅力、広告とのちがい、創作のコツにまで話が及び、そのやさしい語り口に会場は終始、和やかなムードに包まれていた。

高田ほのか氏

短歌はね 今を切り取り 想いを乗せる まるで流行の インスタグラム

「大学生のころまでは短歌というと格式ばったもの、“なり”や“たり”など文語調で書かなければならず取っつきにくいイメージがありました」。そう語る高田氏が短歌の魅力に引き込まれたきっかけは、大学の図書館でのこと。ふと手にした短歌の月刊誌で見た自然な歌のリズムが心にスッと入りこみ、「これなら私にもできる」と興味を持ち、趣味として創作活動を始めたそうだ。卒業後、短歌のコンクールに応募したところ、5首のうち4首が選ばれ、「自分に合っているのかも」と本格的に短歌の創作を開始。派遣社員として働きながら平日夜と日曜日にカルチャースクールで講師をするようになった。

「思えば小学生のときから少女漫画が好きで、主人公の独り言を表すモノローグの韻を踏むリズムが心地よいと感じていました。後で気づいたのですが、短歌のリズムと共通点が多かったんです」
そんな少女漫画愛好家の高田氏は、90年代に流行した少女漫画を短歌で表現した歌集『ライナスの毛布』を2017年に上梓。本の帯には、映画にもなった「ホタルノヒカリ」(ひうらさとる氏作)を31文字で表現した短歌が掲載されている。

当日のスライド
高田氏の歌集『ライナスの毛布』(2017年・書肆侃侃房)

鳴らないねわかってたわかってたけどわからないから待ってたんでしょ

『ライナスの毛布』

「会場のみなさん、何が鳴らないのかが分かりますか」。高田氏の問いかけに、会場からは「携帯」「家のドアホン」などの答え。「なるほどぉ。みなさん全員、正解です! 短歌は作者の思いを言い当てたから正解というのではなく、受け取った一人ひとりの中に答えがあるんです。このように31音の世界を読み手が好きなように想像できるのが短歌の魅力です。また、31音しかないけれど、100文字分、それ以上のストーリーを喚起できる文学だと思います」

約1,300年前のカメラなどなかった時代。昔の人は、「今のシーンを残したい」「みんなに見てほしい」と思った瞬間を短歌で切り取っていた。まさに現代のインスタグラムのような情報伝達ツールだったと話す高田氏。また、わずか10秒で読むことができ、風景だけでなく、その時に感じた想いまでも一緒に残すことができる。そして創作した人だけではなく、読者が自分の体験のように感じ取れると語った。

天神の 店のこだわり 根っこの部分 人情味を 短歌で綴る

次に短歌と広告のちがいについて話題は移る。「広告は商品の素晴らしさを、これでもかと全面に押し出します。一方で、短歌は商品の本質や作り手の想い、仕事において大切にしている根っこの部分を、さりげなく伝える力があります。これは企業やモノ、街のPRに使えると考えました」。
そこで高田氏が、まず取り組んだのが企業訪問。天神橋筋商店街にある川村義肢の工房を訪ね、手足の不自由な方の手助けをする介助犬のユーザーにインタビューし、介助犬の素晴らしさを31文字に託した。

バンダナを二割の力で引っ張ってゆっくり段差を越えさせてくれる

いかがだろうか。介助犬とユーザーとの絆や、介助犬のやさしさ、そして情景が目に浮かんでこないだろうか。「他人に介助をお願していたときは、感謝はしていたものの、毎回“ありがとう”“ごめんね”などと言うことに、すごく気をつかい心が疲弊していました。介助犬に頼るようになってからは気持ちが楽になりました」とのユーザーの声を聴き、この短歌を創作したそうだ。

川村義肢の工房も天神橋筋商店街にあるが、同商店街と高田氏の関わりは深く、大学時代に遡る。天神祭の「天神天満花娘」に選ばれ、その時にお世話になった商店街の方々に恩返しをしたいとの一念で、商店街に並ぶ店の短歌を詠む活動を始めた。一軒一軒、訪ね歩き、約5年をかけて100首ができた時点でポスターを作成し、「短歌で発見! 天神橋筋の店ええとこここやで百首展」で披露し、本も出版。たとえば、天神橋3丁目の「たまいち土井陶器店」では、大阪生まれのガラス工芸「天満切子」をモチーフに、人情味豊かな店主の姿を次の一首で表現した。

人情が息づく店に飾られた天満切子に真夏が光る

当日のスライド
天神橋筋商店街の店を訪問し、インタビューする高田氏。

天神橋筋商店街4丁目の串焼き屋「一富士」では、串焼きに大阪天満宮の湧き水をブレンドした出汁を放っている姿がカッコイイと感じ、こんな短歌を記した。

ああここが私の舞台仕上げには天満天神のお出しを放つ

そして、本の締めくくりとして101首目に詠んだのが次の作品。直線距離にして日本一の長さを誇る天神橋商店街全体を表したものだ。

左右から響くらっしゃいに包まれてまっすぐ歩む二.六キロ

それぞれの 思い出を 乗せ創ること それが短歌 創作のコツ

サロンは終盤に入り、参加者のみなさんに「次の上の句に合う下の句を創作してください」という問題が出題された。

あまりにも直球過ぎて告白は 〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇

参加者のみなさんが考えた下の句は……

ジョークにとられ笑顔に涙
あなたが好きで返事はごめん
わたしの目には止まらず消える
汗でべたべた高校の夏

……など、約3分間しか考える時間がなかったにも関わらず、秀作が揃った。

「天神祭献詠短歌大賞」ウェブサイト
高田氏は天神天満花娘に選ばれた大学時代に、当時の天神橋筋商店連合会の土井会長と共に「天神祭献詠短歌大賞」を立ち上げた。その大賞は10回目を迎える今年、最後を迎える。

トーク終了後、質疑応答の時間が設けられた。その中から、いくつかをピックアップしてみた。

Q:
短歌が上達するには、どんなトレーニングをするのですか。
A:
いい短歌をたくさん読んで、たくさん創ることです。そうすると短歌の本質が自然と分かってくると思います。私の短歌教室では300首を、まず創作してくださいとお伝えしています。悲鳴をあげられますけどね(笑)。また最初は31音で31音分の意味しか伝えられない「棒立ちの短歌」しかできませんが、慣れていくうちに31文字以上の意味が伝わる、広がりのある短歌ができるようになります。

Q:
短歌を創るときに気を付けることはありますか。
A:
たとえば祭りというお題なら、大輪の花、花火がきれいなど、美しすぎる短歌を創ってしまいがちです。そうではなくて、ご自身の思い出を入れて、手触りのある短歌を創作していただきたいと思います。現代短歌は非日常的な“ハレ”ではなくて、ささやかな日常を表す“ケ”を詠うものなのです。

次のAとBの短歌……
A. 病院へ 続く坂道 じいちゃんは きれいな花を 写真に撮った
B. 病院へ 続く坂道 じいちゃんは つくしをそっと ティッシュに包む

どちらが心に残ると思いますか。Aの短歌は作り物のように感じますが、Bは隣にいる、おじいちゃんの姿が見えてくるような気がしますよね。

Q:
短歌と俳句のちがいは?
A:
俳句は季語を中心に詠みます。短歌は季語が不要で、自分の心を中心に詠む文学です。また、短歌は七七がある分、奥深いところまで詠むことができます。

高田氏は、今年はじめから在阪企業の社長にインタビューし、創業の原点や苦労話、仕事の上で大切にしていることなどを短歌にしているとのこと。「2025年の大阪・関西万博までに100首を創作したいと考えています。起業を考える若者に勇気を与える作品にしたい」と語る高田氏。どんな心温まる短歌が生まれるか。今から楽しみだ。

イベント風景

公開日:2019月07月25日(木)
取材・文:大橋一心氏(一心事務所

高田ほのか氏(たかだ ほのか)

歌人 高田ほのか

未来短歌会所属、関西学院大学文学部卒。
角川全国短歌大賞、全国短歌大会他受賞歴多数。
短歌教室講師(朝日、産経など4校)。
少女マンガのモノローグに惹かれ2009年より短歌の創作を開始。
2010年 ~天神祭献詠短歌大賞の運営、選者。
2017年 『ライナスの毛布』(書肆侃侃房)出版。
2018年 5年かけ天神橋筋の店主100人の話を聞き、店主の想いを100首の短歌に詠んだ「短歌で発見!天神橋筋の店 ええとこここやで百首展」が文化庁の協力名義の承認を受ける。
2019年 朝日新聞のウェブサイト「好書好日」で「歌人・高田ほのかの短歌で味わう少女マンガ」連載。
五大全国紙、NHKなど多くのメディアで短歌の裾野を広げる活動が取り上げられ共感を呼んでいる。

高田ほのか氏

イベント概要
社会で役立つ! 短歌の活用法
クリエイティブサロン Vol.161 高田ほのか氏

宣伝したいことも長文では時間がかかって読んでもらえない。
短歌を読むのに必要な時間はたったの10秒!
しかも、短歌は31文字の中に100文字以上の想いを凝縮できる。
10秒で、100文字以上の内容が伝えられる。
広告はこれでもか!というほど商品の素晴らしさを前面に押してPRする。
短歌は押せ押せ!のPRではなく、PRしたい物の本質、経営者の信念、仕事において大切にしている根本を伝える力がある。
短歌を、企業やまちの魅力を伝える社会的なPRに活用する。

開催日:2019年6月24日(月)19:30〜21:00
会場:メビック扇町