メビック発のコラボレーション事例の紹介

等身大3Dフィギュアをコラボで
等身大3Dフィギュア制作プロジェクト

等身大3Dフィギュア完成品
コラボの結晶 等身大3Dフィギュア完成品

クリエイターに会いたい。プレゼンターと話がしたい。その思いが一つに

CGデータからの大型造形サービスを提供する株式会社Izoxと3Dプリンター関連事業を展開する株式会社ロイスエンタテインメントは、CGデータ制作のギアデザイン、塗装担当の株式会社栗山化成工業所と共に「3Dフィギュア制作プロジェクト」に取り組んだ。このコラボレーションのきっかけは、Izoxの代表である佐野剛志さんと135名いるメビック扇町・エリアサポーターの一人との出会いだ。佐野さんは自社が所属する協同組合尼崎工業会の事務局の人に「自分たちは、デザインはできないがモノをつくることはできる。逆にデザイン会社は、デザインはできるがモノづくりを得意としているわけではない。この両者が出会ってかみ合えば、自分たちも生き残れるし、相手にとってもメリットがあるのでは」という話をする中で、尼崎で活動するこのエリアサポーターを紹介された。そして「デザイナーと出会いたいのなら、メビック扇町でプレゼンターとして『企業によるクリエイター募集プレゼンテーション』に参加しては」という提案を受け、2015年3月にプレゼンを参加者に向けてすることに。内容は「発泡スチロールを使った新しい表現方法やデータの有効活用を一緒に考えることができる技術者、手描きデザインをデータ化できるデザイナー、CGデータを創造できるクリエイターの方々と出会いたい」というものだった。そのプレゼン会場にいたのが、ロイスエンタテインメントの会長を務める廣瀬勇一さん。佐野さんとは面識は無かったが、以前からIzoxのことは知っていた。
廣瀬さんいわく「原寸大の飛行機や一軒家といった巨大な物まで3Dモデルで作ってしまうIzoxさんのことは知っていました。メビック扇町に行ったのもIzoxさんと出会うことが目的でした。何か一緒にやりたいなあと思っていましたね」

発砲スチロール切り出し工程
発砲スチロール切り出し工程

4月再会、5月題材決定、6月出展。限られた時間の中で奮闘するメンバー

プレゼン後、他の参加者に先駆けて佐野さんのもとへ向かった廣瀬さん。話をした二人はすぐに意気投合し、その場で次回会う日を決めた。4月に改めて会ったとき、話はさらに盛り上がったが、具体的に何をつくるかの決定にまでは至らなかった。5月に入り佐野さんは廣瀬さんから「6月下旬のメイカーズバザールに向けて何かつくらないか?」との提案を受けた。メイカーズバザールは、3Dプリンターや電子部品、プログラム等を使ったデジタルものづくりワークショップを体験できるイベント。出展までの期間は約1カ月しかなかった。ちょうどその頃、ギアデザイン代表のCGクリエイター大上さんからコンタクトがあった廣瀬さんは、大上さんが描いたCGの絵『艦コレ陸奥』を見ることに。この絵に衝撃を受けた廣瀬さんは、その場で題材制作を依頼。大上さんは3日間徹夜して作品を仕上げた。その題材をもとに、佐野さんと廣瀬さんは手分けして制作に取り掛かった。大きなパーツの制作と組み立てはIzoxが、小さなパーツはロイスエンタテインメントが担当。出展までに残された時間が少ない中で苦労は続いた。
「今回のフィギュア制作で初めて使うシステムがいくつかあり、それを使用した場合、どのくらい時間がかかるかがまったく読めず神経を使いましたね」と佐野さんは語る。
塗装作業を依頼しようとしていた担当者が入院してしまい、新たな塗装会社を探さなければならないというアクシデントにも見舞われた。
「髪の部分だけでも16のパーツに分かれていて、これが技術的にも難しい部分でした」と語るのは廣瀬さん。
「1回のプリントだけで8時間近くかかる上、出来上がったものをチェックしたら全然ダメで一からやり直しということが何度もありました」
すべての作業が終わったのは、出展前日の夜の12時。出来上がったフィギュアは組み立てた状態で運ぶ必要があり、その際活躍したのが仲間内で「棺桶」と呼ぶ箱だ。Izoxが自社でつくった発泡スチロール製の「棺桶」で、これにフィギュアと緩衝材の風船を一緒に詰めて運んだという。
「眠れる森の美女をイメージしたものなんですよ。真っ白な箱の中に色とりどりの風船があって、結構メルヘンでしょ」と楽しそうに佐野さんは笑う。

塗装前のフィギュア
塗装前のフィギュア

中小企業が生き残っていくために、いますべきことを考えて行動する

「小さな会社が小さいなりに生きていくためにはネットワークを活かしていくしかありません。一社で出来ることはたかだか知れています。ロイスエンタテインメントさんとは、お互いが事業領域を邪魔せずに補完し合える関係が築けていると思っています。廣瀬さんとは歳も近いので、これからも長く一緒に仕事をしていきたいですね」と佐野さん。
この言葉を受けて廣瀬さんは続ける。「今の時代、中小企業は一発ヒットを出しても3年も持ちません。生き残っていくためには、さまざまな人から情報を集めて、それを共有し、存在価値をつくり上げていくことが大切ですね。チャレンジしていかないと、新しいサービスは生まれて来ないと思います」
出会ってから一年余り、事業取り組みとしての補完関係はもちろん、人としても補完し合える間柄を築いた二人。3Dフィギュアに関する引き合いも見積もりレベルで既に数件来ているという。今年2016年のメイカーズバザールへの出展も決定。信頼できるパートナーを得た両社の協働がますます楽しみだ。

佐野剛志氏、廣瀬勇一氏
左から 佐野剛志氏(株式会社Izox)、廣瀬勇一氏(株式会社ロイスエンタテインメント)

株式会社Izox

佐野剛志氏

株式会社ロイスエンタテインメント

廣瀬勇一氏

http://www.3dstudio.jp/

公開:2016年4月26日(火)
取材・文:中島公次氏(有限会社中島事務所
取材班:尾崎守彦氏(株式会社エムリンク)

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。