メビック発のコラボレーション事例の紹介

大阪の中小企業をデザインで支援
NANIWAZA(ナニワザ)

大竹麗氏と井本達也氏
大竹麗氏(左)と井本達也氏(右)

「NANIWAZA」は、大阪のモノ作りに携わる中小企業をクリエイティブな視点で支援する「独立行政法人中小企業基盤整備機構 近畿」によるプロジェクト。「大阪にはものすごい技術を持っているのにPR力やアイデア不足で埋もれている中小企業がたくさんあります」と、中小機構近畿(当時)の井本達也氏。その“アイデア”の部分を電通が補い、産經新聞社が“伝える”という3社連携で支援する取り組みだ。
この仕組みを伝えるための「コンセプトブック」を手がけたのがコヤの大竹麗氏だ。デザイン会社出身の井本氏がかねてからつながりのあったメビック扇町に声をかけ、コンペを開催。メビック扇町の登録企業5社が参加した中で、満場一致での決定だった。大竹氏の企画案は「すでに完成していた」と、井本氏は振り返る。

「その先の物語を描く」編集の力

「私は編集者なので、これを使ってNANIWAZAがどういう物語を描いていくかという視点で制作しました。大阪の優れた中小企業が主人公で、それをNAMIWAZAが語り部として伝える。そんな構成で徹底的に考えると、細かいコピーも企画段階で入れることができるんです」と大竹氏。コンセプトブックでは、バイオ商品製造に3次元パイプ加工、押出成形技術…大阪に隠れた小さなハイテクノロジーがユーモアたっぷりに語られている。
このコンセプトブックは“伝える手段”として最高に分かりやすいものになったのはもちろん、携わる人々が改めて意識共有し、大きく前に踏み出すきっかけにもなった。井本氏は、「言葉の力を改めて感じた」という。
「この1冊を渡すだけでどんどん人が集まってくる。大阪芸術大学の学生と中小企業のコラボなどすでにいくつかのビジネスに発展し、新たに東大阪の中小企業60社の参加も決まっています。銀行からファンド組成の協力の申し出もあり、計画も進行中です。ファンドが実現すれば中小企業は持ち出しなくモノ作りに取り組むことができ、プロジェクトがさらに活気のあるものになるでしょう。まさに今、産・官・学・金の4連携が実現しようとしています」。
プロジェクトを大きく成長させる基盤を作った大竹氏の編集力。大竹氏は、自身の仕事について単に印刷物やウェブを作るのではなく“一緒にその先を編むこと”だという。「それにしても、今回コンセプトブックを通してこんなに多くの展開があったことは予想外でした。最終的に、大阪の小さな企業のすごい技術に世の視線が注がれるようになればもっと嬉しいですね」

コンセプトブック
デザインを担当したのは有限会社ゲイル。デザイン事務所ではなく編集プロダクションのデザイナーと恊働したのは「ビジュアルづくりだけをデザインの仕事としない、私と同じ立ち位置でいてくれる方々だから」と大竹さん。

中小企業×クリエイターが経済を元気に

井本氏は、NANIWAZAの今後について、「もっと多くのクリエイターに参加してもらいたい」と語る。「大阪のモノ作り企業だけでなく、大阪のクリエイターにも。関わる人が多ければ多いほど面白い。そして、アイデアひとつでモノが売れる実例をどんどん作ってもらえれば、中小企業の意識も変わると思う」。
将来的に全国展開ができるということも、独立行政法人中小企業基盤整備機構、電通、産經新聞社という全国規模の組織が手がけるメリットだ。
「NANIWAZA」プロジェクトが、これからの日本の経済の大きな後押しとなるかもしれない。

独立行政法人中小企業基盤整備機構 近畿本部

マーケティング支援部
井本達也氏

http://www.smrj.go.jp/kinki/

コヤ

編集者
大竹麗氏

公開:2013年7月17日(水)
取材・文:わかはら真理子氏(株式会社アールコンシャス)

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。