メビック発のコラボレーション事例の紹介

交流会を発端につながったチームで、会社案内をリニューアル
ホース販売加工会社の企業ブランディング

パンフレット、名刺、卓上カレンダー
ホースを実際に曲げて制作した“HKH”のマークに、「曲げることに、まっすぐです」のコピーを効かせた会社案内は、名刺やカレンダーにも発展。

かつての信頼関係を、Mebic Talk-inが現在につないでくれた

デザイナーの井門直美さんが独立まもない2020年に、「Mebic Talk-in(交流会)」に参加したことから始まった今回のコラボレーション。Talk-in は、2003年から続く、さまざまな業種の参加者が集い、リラックスした会話から人脈を広げられる場である。そこで井門さんは、株式会社日光プロセスの代表・原田一徳さんが参加していることに気づき、声をかけたという。実は20数年前、井門さんが新卒時に入社した広告事務所が同社と密なつながりがあり、営業担当者とは何度も大きな仕事を乗り越えた間柄だった。井門さんと原田さんはTalk-inが初対面だったが、駆け出しの頃にあたたかく見守ってもらったことへの感謝の想いを伝えたところ、以降も交流が続くことに。

その後、2023年7月に原田さんが奈良でホース販売加工業を営む八興販売株式会社の会社案内リニューアルを手がけることに。その際に、原田さんの頭に真っ先に思い浮かんだのが井門さんだった。

「僕らにとっても、八興販売株式会社さんとは初めてのおつきあい。信頼できる人とチームを組みたいと考え、井門さんなら安心してお任せできるだろうと考えました。弊社がめざす方向性や強みをよく理解してくださっていますし、何を大切にお客様と関係を築き、クリエイションしていくのかを共有できているのも大きかった。八興販売さんにも単に見栄えがするものというよりは、ストーリー性を大事にしたものをつくりましょう、とお話ししていたので」(原田さん)

「新人時代、大きな案件ほどスケジュールぎりぎりまで修正がくるため、つねにプレッシャーを感じつつ作業していました。日光プロセスさんはそんなとき、最後の最後でいつも助けてくれる存在でした。印刷技術はもちろんのこと、仕事への誠実な姿勢に信頼を寄せていたので、この縁が先につながればいいなと。また、私自身がまさにそうなのですが、初対面同士が集う交流会は緊張するからそこまで得意ではない、というクリエイターさんも多いと思うんですね。そんななか、過去につながりのあった方が参加していたことで、とてもほっとできたんです。Talk-inは新しい出会いの場であるとともに、過去の縁をもう一度、つないでくれる場でもあるんですね」(井門さん)

会社案内にはコピーワークも必要であることから、井門さんは尊敬する先輩であった納健太郎さんに依頼。日光プロセスでは樋口彩香さんが担当者となって、チームでの制作がスタートした。

会社案内との統一感を感じさせる名刺。右上を角丸にすることで、曲げたホースを表現した。

会社案内が好評だったことから、名刺やカレンダー制作にも発展

八興販売株式会社の最大のアピールポイントは、「ホースを曲げて固定する」という他にない技術である。通常、ホースを曲げるときには継手(ジョイント)が必要となるが、同社ではさまざまな素材のホースを継手なしで曲げることが可能。これによりコストダウンや省スペースにつながり、医療や工業などさまざまな分野において、作業効率を高めることができるという。

そこで井門さんはメインヴィジュアルにおいて、社名を表すHKHをホースを曲げて固定することで表現。これは、実際にホース加工に従事するスタッフに、現物を作成してもらったもの。ほぼ加工することなく、そのまま使っているというから驚きだ。

コーポレートカラーは黄緑が社内外に浸透していたことから、そのまま踏襲。しかし、リブランディングすることで、「希望」「好奇心」「意欲的」といったポジティブな意味を新たに付与した。全体のコンセプトとなるコピーは複数案を提案したなかから、満場一致で「曲げることに、まっすぐです」に決まったという。

左:左が以前の会社案内、右がリニューアルした今回のもの。
右:導入ページにも、さりげなくコーポレートカラーの黄緑を効かせている。

「ヒアリング時に八興販売さんの誠実さやまっすぐさ、自分たちの仕事に対する誇りに感銘を受けたので、現場で皆さんからうかがった言葉をなるべく生かすように心がけました。訴求ポイントが最初から明確だったので、コピーも悩むことなく、すっと出てきましたね」(納さん)

印刷にも工夫を凝らし、ホースを曲げることをイメージした角丸の抜き加工を提案。こうして3ヶ月後の9月に納品された会社案内は、業務内容が一目瞭然でわかると好評を博し、名刺やカレンダーにも発展した。

「『関係者に見せびらかしています』とおっしゃっていただくほど、喜んでいただきました。その後の名刺デザインも井門さんにお願いしたのですが、ホースをあしらった右部分を、会社案内との統一感を意識して角丸に。製造業としては珍しい遊び心のある名刺で、ノリノリで制作しましたね」(樋口さん)

「社内の壁に会社案内をピンで留めて、飾ってくださっていると聞いたときは嬉しかったですね。次は社内に貼る、大きいポスターもつくってほしいです(笑)」(納さん)

人との縁を未来につなぐには、誠実に仕事をしていくしかない

中面では「社会のために、曲げる」「命のために、曲げる」といったコピーとともに、ホースの素材や特徴、納入実績について、用途別にわかりやすく紹介。曲げているさまが伝わりやすいよう、立体的に見える角度をカメラマンとともに苦心したという。

パンフレット中面
中面では「何のために曲げるのか」をカテゴリー別に紹介。営業マンも自社アピールがしやすくなったとか。

「こんなにかっこよく撮ってもらったのは初めてだ、と喜んでいただきました。振り返ると、八興販売さんがものづくりに対してとても真摯でいらっしゃるので、私たちもジャンルは違いますが、自分自身の技術でものをつくっていく仕事なので刺激を受けましたね。全体的にはとても順調にすすんだお仕事でしたが、唯一、苦労したのはボルトなど細かな商品の撮影。パッと見では見分けがつかないようなものが何種類もあるので、遅くまでの撮影時はみんな無口に(笑)。そんなときにも、樋口さんの明るさにずいぶん助けられました」(井門さん)

ちなみに樋口さんは社内に置いてあるメビックのコラボ事例集を見て、いつか自分も掲載されるのが念願だったという。

「井門さんが過去に掲載されているのを拝見して、私もぜひいつか出たいと思っていた夢が叶いました(笑)。今後も弊社は関西での業務を拡大していきたいと思っているので、このチームでまたがんばっていきたいですね」(樋口さん)

さらに、原田さんは人と人の縁を価値ある仕事につなげていくことは、一朝一夕にはなしえない、と振り返る。

「自分たちが仕事というものに対して誠意を持ってやってきた、その積み重ねが未来の仕事につながっていくことを痛感しました。信頼関係は、すぐには築けません。たとえば、弊社の営業が新人だった井門さんに対してぞんざいな扱いをしていたら、交流会で僕らが出会ったとしても、その場限りの関係だったわけですよね。今後も、その根幹を大切にしていかなければならないと気持ちを新たにする、大変良い機会になりました」(原田さん)

集合写真
左より、原田一徳氏、樋口彩香氏、井門直美氏、納健太郎氏

株式会社日光プロセス

代表取締役
原田一徳氏

営業
樋口彩香氏

https://nikkop.co.jp/

デザイナー
井門直美氏

https://imonnaomi.com/

コピーライター
納健太郎氏

https://www.mebic.com/cluster/osame-kentaro.html

公開:2024年3月29日(金)
取材・文:野崎泉氏(underson

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。