クリエイティブサロン Vol.121 鷺本晴香氏

「来た!」という、変化のニオイを感じた時こそ、波にのる準備を

アパレルのデザインの企画、ブランディング、関連イベント企画に携わる一方、産業カウンセラーやNLPの心理学トレーナーとして人々の心の問題に取り組む。プライベートでは山を愛し、山々をアタックし、キャンプインストラクターとしても活躍。八面六臂な働きを見せる鷺本晴香氏だがチャンスはとつぜん降ってきたわけではない。「チャレンジ&エラー成功体験が重なって、自分の強さが作られていく。私自身、トレーニングを欠かさず、強さ、弱さを知って前に進む」と語る通り、彼女には確たる道筋があった。一昨日、雪山から降りてきたばかりのシズル感溢れる声に耳を傾けたい。

鷺本晴香氏

成功体験とピンチ、挫折と自己改革、
多彩な波に乗りつつ可能性を切り拓いてきた。

高校時代はデッサン、焼き物、色彩構成、エッチングなどが学べる港南造形高校に通い、漠然とファッションデザイナーになりたいと考えながら陸上部とアナウンス部に所属。教師にすすめられてアナウンス・コンテストに出場したところ、思いがけずNHKから賞状をもらった。「ワタシ、いけるやん!」それは自身の可能性を信じ、夢に向かう成功体験の第一歩となった。卒業後、大阪モード学園へ進み、アパレルデザインを本格的に学び、幸運にも某大手アパレルメーカーへの内定が決まる。しかし、インターンとして社内を訪れた際、約30人ものデザイナーが一方向に並んで無言で作業する様子をみて愕然とし「なんて面白くないんやろう」と就職を辞退した。

結局、自身で理想の職場を探すことに。しかも「世界観を持って、東京コレクションやパリコレで服を発表するような企業に行きたい」と理想は高い。持ち前の行動力で直接会社に打診するうちに面接してくれるという企業があった。訪問するとなんと、担当者はスケジュールミスで不在。ピンチ!と思いきや、受付の奥から四十代の女性がやってきた。事情を聞くと「じゃあ、私が面接する」と引き受けてくれた。その女性は社長だった。社長は彼女の話を丁寧に聞いてくれ、形勢は逆転、なんとその場で就職が決定する。

鷺本晴香氏

「織物、プリントのテキスタイルの柄も、ヘアアクセもネックレスも自社で作り、アディダスのスポーツウエアのブランドを手がけるファッションブランドの会社でした。私は社長付きとなり、社長室である小さな部屋で机を並べて6年間社長と過ごしました」
デザインだけではなく、新しい案件や銀行からの電話にも対応、様々な資料を目にする毎日。社長の仕事を勉強するという貴重な体験だった。起業を志すようになった彼女は同社を退職し、自分の実力試しを目的に新たな企画会社に入社。そこでは1ブランドごとに春夏と秋冬、それぞれ60デザインの商品化、コーディネートとMD、パターンの指示を手がけ、販促の仕掛けを考えるというアパレルの一貫したノウハウを習得することとなった。

2000年には念願の独立、アパレル企画の会社としてサギーデザイン事務所を設立。阿波座の立売堀に事務所を設立、コピー機と机とiMacを買って電話を引いた。「仕事は自分で作らなあかん」と、店頭に出かけてリサーチへ。「このブランドの仕事がしたいと思う服の値札に記載されている電話番号を覚えた。完璧なブランドではなく、どこかに『ん?』と弱点が見える部分があるブランドの会社にコンタクトを取る」。そうした会社の一つが話をきいてくれるという。西海岸風のフィットネスウェアを展開する会社だ。
「自分自身がダンスをやっていること、アディダス社などスポーツウェアの実績をアピール、そしてブランドの改善点を提案しました」
営業は彼女の提案を気に入り、社長は「うち、そこが弱いんよ」と彼女の提案に賛同。同社との取引がはじまった。西海岸での撮影、YOGA体験や現地でのトレンドリサーチなどを体験し、ブランドを成功に導き、取引は5年間ほど続いた。次にユダヤ人デザイナーのYOGAブランドを手がけ、NYでの打合せやリサーチに奔走するが2年目になって、同ブランドと日本企業との契約上の問題で頓挫する。そこで、ブランドと取引のあったバイヤーにアプローチ、流通網を整えた後、鷺本氏自らがインナースマイルというYOGAウェアのブランドを立ち上げた。様々なピンチや変化のおりに、新たな道筋を見出し、事業を発展させるところに彼女の強みがあったのだ。


鷺本氏が自らたちあげたYOGAウェアブランド「インナースマイル」

そんななか大親友が鬱病になった。お見舞いで訪れた彼女に親友はいい放った。
「『あなた、あたしの話、聞いてないわ』といわれたんです。二人きりの部屋で真顔で。『なんで、そういわれたの?』すごいショックだった」
しかし「落ち込んでいる場合じゃない」と気を取り直し、彼女は大学など心理学の先生を訪れ、カウンセリングスキル、人の心を学び始めた。これが心理学関連事業に着手するきっかけとなった。後に心理学のオープン講座をマネージメント、自社事業として展開した。近年では行政や企業の仕事も徐々に増え、小学校、中学校あわせて年間88校でストレスマネージメントの講義も受け持っている。

仕事とライフスタイルの融合で新たなシナジー、
それを心理学のスキルが深化させる。

アウトドアへの興味は二十代後半、独立の前に屋久島を訪れたことがきっかけだった。「物事を究極的に自問自答するには、一人で考えることで、腹に落ちます。そこで、屋久島へ縄文杉を見に行き、宮之浦岳に登り、エネルギーにあふれた世界のなかで考えました」そこから2年に一度の屋久島通いがはじまった。アウトドアウェアの分野に進出したのはこの時の体験からだ。「自分が一消費者であり、使い手でなくてはいい仕事はできないというのが私の考え。YOGAウェアの仕事の時はYOGAばかり、山をやっているときは山ばかり」。基本、遊ぶこと、楽しむことが仕事に直結している、そうした仕事とライフスタイルの融合が彼女のスタイルであり、強みでもある。
また、アパレルのネットワークを通じて、さらに新しい分野から声がかかった。晒(さらし)メーカーの新事業の依頼に対してベビーウェアの提案、子どもが遊びながら学ぶ知育玩具の開発、さらに、某有名人形のウェアの制作。加えて「あなたの会社に必要な ブランディングは?」というブランディングに関するパネルディスカッションにてコーディネーターと企画を手がけ、立ち上げにも関わったコワーキングスペース中之島SPINNINGでは洋服の交換イベント「xChange」を企画するなどイベントにも携わるようになる。

変化の中に可能性を見出し、ピンチをチャンスに好転させてきた鷺本氏。そうした技術を彼女は「潮目を読む」という言い方をする。
「変化の半年くらい前には予兆がある。『怪しい、なんとなく変わるんじゃないか?』というニオイを感じる。4ヶ月くらい前に『あーやっぱり』ともう一度、波がくる。そして直前に来た!という時に準備できていないと波に乗れない」
そのために、半年前の予兆の時に周囲のネットワークを見直し、次の準備をする。直感的に「潮目を読み」ながら新たな状況を作ることが大切なのだ。

また、事業計画、人生設計は登山計画と似ていると彼女はいう。「仕事で頑張るためには、自分が何をしたくて、何が好きなのかを明確にし、自分がどこに行きたいのかを把握するのがコツだと思います。それは、登山計画に似ています。目的地、日数、誰と行くのか、準備物は?道筋と天候状態を考え、事故が起こった時、どうやって帰るのかを考える。生き方や人生設計とも似ていますよね」

アパレル業界から心理学、セミナーやイベントなど新事業、駆け足でその軌跡を語った鷺本氏。来年の3月には業務上の契約に切り替えもあって、リフレッシュを兼ねてネパールの山を目指すという。その先、彼女がどんな風景を目にするのか、新たな地平線に立つ彼女の声に耳を傾けてみたい。

イベントの様子

イベント概要

クリエイティブサロン Vol.121 鷺本晴香氏
仕事の生み出し方、歩き続けるコツと潮目の読み方

今、周りと同じ行動をとるだけで上手くいく時代は終わっています。
今、いつもと同じ仕事を同じようにしていてもトレンドは変わり次はありません。
忙しいと気づきにくいですが、豊かさの基準も、仕事の内容も、どこで仕事をするのかも各段に変化してきています。そして、女性が独立し仕事を続けるスタイルも……。
独立して16年たちました。だから今回、話す内容はもしかしたら今の時代と異なっていることもあるかもしれませんが、仕事を続けてきた歩き方と経験の「点が線になってつながる瞬間」「ピンチがチャンスになったこと」など潮目をよみサーフィンするように生きてきた、仕事について人生について共有させていただこうと思います。

開催日時

2016年11月24日(木)19:30〜21:00

会場

メビック扇町

鷺本晴香氏(さぎもと はるか)

アパレルデザイナー、スタイリストを経て個人事務所を開設後、2005年法人化。
繊維関連モノ作り支援事業・人材育成事業と2本立てで事業を行う。
おもに、ブランド立ち上げ、感情動向マーケティング、デザイン企画と共にコミュニケーション(人)の育成を提案。
趣味は、雪山登山や沢登り、カヤックなど、普段の様子からは想像できないような、アウトドアの自然派スポーツを好む。
メビック扇町クリエイティブコーディネーター、中之島スピニングチーフディレクター、産業カウンセラー、厚生労働省THP心理相談員 、米国認定NLP心理学トレーナー、中央労働災害防止協会会員、キャンプインストラクター
株式会社Meta-Design-Development

公開

2017年01月16日(月)

取材・文

Solaris 櫻井一哉氏

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