クリエイターの皆さんへ期待を込めて。
クリエイティブサロンVol.62 小西克弥氏

毎回、さまざまなジャンルのクリエイターをゲストスピーカーにお迎えし、その人となりや活動内容をお聞きし、ゲストと参加者、また参加者同士のコミュニケーションを深める「クリエイティブサロン」が、いつもとは趣を変えた形で開催された。今回のゲストは、ステーショナリー関連事業を展開するコクヨS&T株式会社の小西克弥氏。クリエイターではなく、クライアント側の小西氏はステーショナリープロダクツ事業部開発革新部インフラ革新グループで、商品の企画開発に関わる担当者に対して仕事の効率やモチベーションを上げる為の業務を担当している。“今回は会社を代表する社員としてではなく、一個人としての素直な想いをお話させていただきます。”ということだが、さてさて、クリエイターが日頃から聞きたいと思っている、クライアントが思う「クリエイターの方々に対して望むこと」とは?

小西克弥氏

仕事は、仕掛け人です。

1969年に大阪で生まれた小西氏は、1991年に甲南大学経済学部を卒業後、コクヨ株式会社に入社。1905年に創業し、来年110年を迎える同社は「ひらめき・はかどり・ここちよさ」をブランドメッセージとし、ステーショナリー関連事業、ファニチャー関連事業、通販・小売関連事業の3つを柱として事業展開している。2002年から開催している『KOKUYO DESIGN AWARD』は、使う人ならではの優れた商品デザインを広くユーザーから集めて商品化を目指すコンペティションとして定着。例年の応募件数は約1200件、参加国は日本を含めて20ヶ国におよび、プロダクトデザインの国際コンペティションとしても成長している。
また、ここでしか入手出来ないユニークなコクヨ商品の数々が楽しめる博覧会『コクヨハク』を、昨年に続き今年も阪急うめだ本店で開催。子どもから大人まで楽しめるイベントとして好評を博している。
そんなコクヨで小西氏は、日用・学用文具の販売企画を担当後、2004年から国誉商業(上海)有限公司に勤務し、中国での新規販路開拓を担当。2009年からは現在の部署で、企画・開発担当者が持てる能力を最大限に発揮できる仕組み作りを担っている。
「私の仕事の役割を一言で表現すると、“ひらめき・はかどり・ここちよさ”の仕掛人です。仕事内容を大まかに分けると、次の三つから成り立っています。一つ目は、仕事に役立つ情報を収集すること。社内はもちろんのこと、社外でも販売の現場や雑誌、新聞、TV番組、各種交流会等で情報を集めます。二つ目は、情報の編集・加工です。相手に伝わるように情報を整えます。そして、三つ目は情報発信。伝える相手に合わせて発信し、成果に繋げます。社員専用ポータルサイトの掲示板など、スマホやパソコンで見られる共有ツールや社内の掲示板を用いた発信が、“情報のタコツボ化”防止につながっている、というわけです」

「LOBBY」開催風景
「CEMENT PRODUCE DESIGN」主催の月例異業種交流会「LOBBY」

質問です。あなたはクリエイターですか?

今回のトークの中で、小西氏から会場の参加者にいくつかの質問が投げかけられたが、その中の一つ目が「あなたはクリエイターですか?」というものだ。
「クリエイターは、大辞林 第三版によると、“(1)造物主。神。(2)創始者。創設者。(3)創造的な仕事に携わる人の総称。(4)広告制作者。”とあるので、いま挙手してくださった方は、神様というわけです。(笑)」
その後、小西氏は自分が影響を受けたクリエイターの活動事例を紹介した。一つ目は、金谷勉氏が率いる有限会社セメントプロデュースデザインの事例。同社は、前述の『コクヨハク』やホームページのコンテンツ作りなどで仕事を依頼している協力会社だ。
「ご来場いただいたお客様に“エッ、こんなのアリなんだ!面白い!コレ欲しい!”と思ってもらえる商材やイベント作りでご協力いただいています。既製品にはないユニークな商品が具現化され、『コクヨハク』に登場するので、その意外性と楽しさが集客につながっています。また、ホームページにおいては、用事がなくても閲覧しに来てもらえるような楽しいコンテンツ作りと“コレ欲しい!”と思ってもらえるWEB限定商品のアイデア出し等もお願いしています。私が特に面白いと感じているのは『コクヨのコウコク』というコンテンツ。コクヨ商品とクリエイターの方々のユニークな発想を掛け合わせて広告の様に仕立て上げるセンスは秀逸です。代表の金谷さんは、自分の考えや体験談をさまざまな人を相手にさまざまな場所で語り伝えていますが、話にリアリティがあり、今後の展開に期待と希望が持てます。人と人とが出会う“LOBBY”という“場”づくりも続けておられるところがスゴイと思っています」

イベント風景
左:株式会社スマイルマーケティング主宰「なにわスマイルサミット」
右:株式会社haruが発行する季刊『ハルガエル新聞』

出会いの場、用意する人、出向く人。

小西氏が影響を受けたクリエイターの活動事例として、次に紹介されたのが株式会社haruの事例。「人と企業と商品を元気にする」を企業理念に掲げる同社は、コミュニケーションツールとして季刊で『ハルガエル新聞』を発行し、関係者に情報提供を行うとともに、社外人脈を活用して実務に役立つ各種セミナーを定期的に開催している。また、自社と社外ブレーンとの情報交換の場として「B(ブレーン)カフェ」も毎月開催し続けている。
そして、最後に紹介されたのは、株式会社スマイルマーケティングの事例。自称大阪国の広報担当大臣・高橋健三氏が代表を務める同社でも、「なにわスマイルサミット」や「マーケティング妄想バー」といった人と人とが出会う場を提供し続けている。
小西氏は、有限会社セメントプロデュースデザイン主催の交流イベント「大阪LOBBY」や株式会社haru主催のワイン会、株式会社スマイルマーケティング主催の「なにわスマイルサミット」に参加したという。その様なイベントを開催し続ける主催者のがんばりも、精力的にイベントに参加する小西氏の情熱も脱帽ものだ。
自身が影響を受けたクリエイターを紹介した後、小西氏は参加者に「あなたが影響を受けたクリエイターは誰ですか?」「クリエイターになる為には、何が必要だと思いますか?」「今日話題に挙がったクリエイターに共通する項目は何でしょうか?」「あなたはクリエイターになれそうですか?」といった質問を投げかけた。
「“あなたはクリエイターですか?”という質問に対して、先ほどは2名の方しか手を挙げられませんでしたが、私はここにいる皆さんがクリエイターだと思います。クリエイターは、特別な資格が要るわけではありません。現に『KOKUYO DESIGN AWARD』で、その道のプロでない方が受賞されている事例も多々あります。中には“カドケシ”の様に、ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選ばれたものもあります」

温泉のような存在になってください。

サロンも終盤に差し掛かった頃、温泉マークとともに、本日の本題「クリエイターの方々に対して望むこと」が紹介された。
“無尽蔵に湧き出る温泉のように、関係者に豊かさと心地よさを提供する存在になってください”が、クリエイターに対する小西氏の望むことだった。
数多くのクリエイターの存在を知り、仕事の内容や考え方を理解するためにメビック扇町をはじめ、大阪デザインセンターや京都リサーリパーク、KNS(関西ネットワークシステム)などのさまざまなセミナーに積極的に参加し、自らの知見の向上に日々努めている小西氏の話は、クリエイターとクライアントの関係について改めて考える、いいきっかけになったはずだ。

イベント風景

イベント概要

クリエイターの方々に対して望むこと
クリエイティブサロン Vol.62 小西克弥氏

メーカーでモノづくりに関わる仕事を担当し、クライアントとして数多くのデザイナーやクリエイターの方々と関わらせていただきました。そこから様々な気付きや学びを得られたのですが、中には、“なぜ、こうなるのかな?”というものや、“こうすれば、もっと良くなるのに……”というものもありました。今回は、その様な経験に基づいて、“クリエイターの方々に望むこと”と題して、一クライアントの立場からお話したいと思います。
今後、取引先や仕事の質・量を共に向上させて行きたいと思われているデザイナーやクリエイターの方々は、是非ご参加ください。

開催日:2014年10月30日(木)

小西克弥氏(こにし かつや)

大手文具メーカーの1社員として、商品の企画開発に関わる担当者に対して、仕事の効率やモチベーションを上げる為の業務を担当している。社外でも、数多くのデザイナーやクリエイターの方々の存在を知り、仕事の内容や考え方を理解する為に、クリエイティブサロンをはじめとする様々なセミナーに参加し、日々自らの知見の向上に努めている。

小西克弥氏

公開:
取材・文:中島公次氏(有限会社中島事務所

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。