メビック発のコラボレーション事例の紹介

絶妙な三人四脚が生みだした子どもの心を掴むゲームキャラクター
BINOBA

イラスト

勉強に“ワクワク”を付加する子ども向けのゲームアプリ
野心を抱いた新米社長の挑戦

冒険をしてモンスターを集め、バトルをしながら勉強ができる小学生向けの学習ゲームアプリ「BINOBA(ビノバ)」。久世尚氏は、この構想を実現するために2014年3月に大手通信会社を退職し、3ヵ月後に起業した。「この事業を成功させるには、“モンスター”が最も重要な柱になる」と考えてイラストレーターを探していたところ、メビック扇町とつながり、幅広い作風を持つ吉田透氏と出会うことに。吉田氏は、久世氏と初めて話した時のことをこう語る。「すごいことを考えるなぁと思いました。ゲームアプリって、大企業が大人数を投入して作っているイメージがあるじゃないですか。起業したての短パン姿の兄ちゃんが挑戦するの?!と(笑)。でも、魅力的な企画だと感じましたよ」。そんな吉田氏の脳裏に、専門学校時代の後輩でイラストレーターの野上雄大氏が思い浮かんだ。「一昨年から仕事を頼んでいて実力もクオリティも確かだとわかっていたので、あいつと一緒ならできる、と」

BINOBA
BINOBA」は基本機能無料で遊べるiOSアプリ。バトル結果を統計し、各教科の成績管理もできる。

さりとて、久世氏が提示したキャラクター数はなんと300体以上。それも年内に仕上げるというのだ。数社で分担する案も出たが、それを阻止したのがほかでもない野上氏である。吉田氏が話を持ち掛けたところ、「300体全部、一人でやり切る!」と野上氏は宣言。できるだけ他人の手を加えたくないという野上氏の強いこだわりを生かす方向で、7月末に三人四脚でのキャラクター制作がスタートした。

久世氏と吉田氏でキャラクター案をディスカッションし、上がったラフを元に野上氏がイラストとして仕上げる。1ヵ月も経つとすり合わせが不要なほどにチームワークができあがり、スムーズに進むようになった。久世氏は教材の用意やシステムの構築などでも忙しく、一つのモンスターについてじっくり議論する時間が取れなかったのだという。「最初こそ、どんなものが上がってくるかなとドキドキでしたが、こちらからキーワードを2つ3つ投げるだけで想像以上のものが出てくるので、途中からは2人に任せて大丈夫だという安心感がありました」

キャラクター
吉田氏のラフ(左)を野上氏がブラッシュアップして完成(右)。レベルごとに進化していく仕組み。

3ヵ月間で300体超
ひと息つく間もなく続いた、時間とクオリティのせめぎ合い

日中はデザイナーとして勤めているため、野上氏がイラスト制作に打ち込めるのは帰宅して寝るまでの数時間。それでも、「キャラクター作りは楽しい」と寝る間も惜しんで毎日1~5体を描き上げた。「100体を越える頃には効率も上がって技術もレベルアップした感じがありましたが、そのぶんクオリティに欲が出て描き込むようになってしまった」と野上氏は頭を掻く。プログラムの都合で納品期限が1ヵ月早まったことと、難易度の高いキャラクターが多く残っていたこともあって、9月からは吉田氏もイラスト制作に加わり、急ピッチで仕上げにかかった。

三者三様に時間や完成度と闘い、わずか3ヵ月で生み出された300体以上のモンスターたち。リリースに先駆けて小学生の柔道大会に体験ブースを出展したところ、ゲームそのものはもちろん、モンスターのカードが子どもたちに大人気。トレーディングが始まるほどの盛況ぶりで、見学に訪れた野上氏もその光景を見て喜んだという。

カード
体験ブースのために用意した「ビノモンカード」。名前やプロフィールも3人で苦悩しながら考えた。

久世氏は、まっすぐな眼でこのゲームへの自信を語った。「キャラクターの仕上がりは120点満点。このモンスターたちを最大限に用いて、子どもたちに勉強が“楽しい”と感じてもらいたい。やがてはポケモンや妖怪ウォッチにとって代わる国民的なキャラクターになれば…。そのために、まずは『BINOBA』を周知していきます!」

久世氏、野上氏、吉田氏
左から、ゲーム開発の指揮を取った久世氏、イラスト制作を担当した野上氏、キャラクター制作のディレクションを行った吉田氏。定期的にイベントを打つなど、今後の展開を思案中。

GUTS LUCK

野上雄大氏

graphic design studio Einsatz

吉田透氏

株式会社ファンスパイア

久世尚氏

http://funspire.co.jp/

公開:2015年4月30日(木)
取材・文:大久保由紀氏(プレス・サリサリコーポレーション)

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。