バンドマンからクリエイターへ。たどり着いたのは、人をつなぐコミュニティづくり。
クリエイティブサロン Vol.166 岡田大誠氏

166回目を迎えたクリエイティブサロン。今回のゲストスピーカーはフリーランスのウェブデザイナーでありながら、コミュニティサロンやコワーキングスペースの運営など幅広く活躍している岡田大誠さんだ。30歳を目前に、バンドマンからウェブデザイナーへ転身したきっかけや自身の肩書きのひとつである「デザイニスト」について、そして現在携わっているコワーキングスペースの運営の難しさや現実などもりだくさんのトピックについて語っていただいた。“ここだけの話”もたくさん飛び出した今回のクリエイティブサロンは、岡田さんの活動コンセプトの原点となった生まれ故郷の話からスタートした。

岡田大誠氏

バンドをやめてクリエイティブの道へ
就職をするも3ヶ月で解雇に

ウェブデザイン、ITコンサル、コワーキングスペースの運営など多彩な事業を手がける岡田さんの活動理念は「自由な選択で世界を広げる」こと。そんな岡田さんが生まれたのは岐阜県の最南に位置する大垣市。田んぼと山に囲まれた自宅の周辺は、たぬきやイノシシ、鹿に猿など熊以外の動物はなんでもいるような自然豊かな環境だったという。「本当にびっくりするくらいど田舎で不便な生活をしていたので、いろんな人に“こんなこともできるんだよ”っていうことを伝えて、可能性を広げることがしたいと思ったんです」と岡田さん。とはいえ、高校を卒業した岡田さんはバンドとアルバイトに明け暮れ、いざ正社員として働こうとしても状況は厳しく、28歳のときにはリーマンショックで派遣切りにあってしまう。このとき岡田さんは真剣に将来のことを考え、職業訓練を受講することを決意。ここでウェブデザインを学び、ウェブの世界へどんどんのめり込んでいく。しかし、デザイナーとしての未来を夢見て卒業したものの、現実は岡田さんが思うよりも厳しかった。いくらスキルが高くても28歳の未経験者がクリエイティブ業界における転職市場で厳しい戦いとなることは想像に難くない。「今考えたら当たり前の話ですよね。結局30社ほど受けて、ようやく入社できた会社も仕事ができなすぎて3ヶ月で解雇になりました」

コワーキングスペース「SHINCRU」
岡田さんが運営するコワーキングスペース「SHINCRU」は京阪枚方公園駅から徒歩4分。クリエイターから学生、会社員などさまざまな人が利用している。

就職を諦めフリーランスとして独立
人生を変えた、中西元男氏との出会い

就職活動に苦戦した岡田さんは、フリーランスの道へ進むことに。仕事の少ない間は派遣とバイトで食いつなぎ、空き時間で受けた仕事をこなしつつ、税金や各種手続きなどフリーランスとしての基本的な知識を学び、取引先の開拓、WordPressなど最低限のスキルの習得、さまざまなコミュニティへの参加など積極的に行動した。そうして少しずつフリーランスとしての基礎を築き上げて行った岡田さんは、ウェブサイトの制作・運用や広報ツールの制作において経営者や行政の担当者と話をするうちに、「デザインで課題解決をする」というプロセスは、ビジネスにも通用するのではないかと考え、戦略デザインコンサルタントの中西元男氏が主宰するSTRAMD(戦略経営デザイン人材育成講座)に通い始める。中西氏は経営者に理解されるデザイン理論の確立とデザイン手法の開発をテーマに研究と実践を重ね、マツダ、ダイエー、ブリヂストン、東レなどをはじめとする約100社のCI・ブランド、事業戦略デザインなどを手掛けてきたクリエイティブ業界では有名な人物。STRAMDでは「デザイン思考+経営戦略+ICT」の鼎立を基本とした戦略経営デザインのプログラムを学ぶことができる。講義の中で中西氏が繰り返し提唱していたのが、「これからの時代はデザイナーではなくデザイニストが求められる」ということ。デザイニストとは作品だけではなく、社会や生活の領域までをてがけるデザイン主義者のことで、この考えに感銘を受けた岡田さんは、「できているかは別としてもう名乗ってしまおうと思ったんです」と、自身の肩書きに「デザイニスト」という言葉を加えた。そして現在、岡田さんは枚方市を拠点に税理士から結婚相談所まで多種多彩なクライアントにウェブ制作やその運用を通して、さまざまな課題を解決するデザイニストとして活躍している。

コワーキングスペース「SHINCRU」をスタート
コミュニティづくりの楽しさと難しさを経験

岡田さんが、京阪枚方公園駅から徒歩すぐのところにあるコワーキングスペース「SHINCRU」の運営を始めたのは、前任者からの引き継ぎだった。もともとは、「枚方つーしん」という月間300万PV、ユーザー数42万人という人気ローカルメディアの運営会社が「ひらば」というコワーキングスペースを経営しており、岡田さんは会員の一人だった。「前任者に頼まれたから」という消極的な理由ではじめたコワーキングスペースだったが、思いの外運営は楽しかったという。莫大な利益がでるようなビジネスモデルではないものの、なぜかSHINCRUを初めてから本業の売り上げが上がり、さらにコミュニティの形成やあり方についても多くを学ぶことができた。岡田さんが理想とするのは「自走するコミュニティ」。そのために必要なのは、有名人や発信力のあるスター的な存在の元に人が集まるのではなく、それぞれがつながっていることだという。コミュニティの内訳は、リーダーではなくハブとなる「コーディネーター」、コミュニティ活動に積極的に参加し、コーディネーターを助ける「コアグループ」、定期的に活動に参加しつかずはなれずの距離を保つ「アクティブグループ」、めったに顔を出さないが所属しているだけでOKという「周辺グループ」、所属はしていないが関心を持っており、単発で顔を出す「アウトサイダー」の5つ。岡田さんいわく「コミュニティが組織と違うのは、この周辺グループやアウトサイダーという立ち位置が許されること」なのだそう。

コワーキングスペース「SHINCRU」で行われたイベントの様子
「SHINCRU」では頻繁にイベントを開催することで、会員同士のつながりを広げている。「会員同士がつながれば、イベントや仕事が自然に発生する」と岡田さん。

ただの作業場だけじゃない
めざすのは「クリエイティブな公民館」

コミュニティで大切なのは、運営者が一歩離れた目で見ること、そして多様な人を受け入れながらもコミュニティークラッシャーと呼ばれる「ルールを破ったり人に迷惑をかける人」を入れないこと。「コミュニティを形成するのは大変ですが、崩れるのは一瞬です」運営者はその人がクラッシャーなのか単に価値観が違うのかを見極める必要がある。クラッシャーだと判断したら、徹底的に排除すべきだと熱弁する。
SHINCRUには現在、20〜40代の学生からクリエイター、個人事業主、会社員などさまざまな会員が所属している。頻繁に開催しているイベントは、毎回会員の誰かにフィーチャーし、ゆるい雰囲気で語り合う「BAR〇〇さん」や怪談師を迎えて行われる「真夏の怪談ナイト」、世界中の変な食べ物を集めたその名も「変な食べ物ナイト」など、ユニークなものばかりだが、毎回会員たちには好評なのだという。もちろん、ビジネスやクリエイティブに役立つセミナーも充実している。「コワーキングスペースって、単なる作業場所ではなく、地域のさまざまな事柄をつなげるハブの役割もあると思っているんです。地域といっても働く、食、学び、遊び、旅などさまざまな要素がある。全部を創業につなげようと無理にするのではなく、イベントなどで面白がってもらって、交流することでそこに価値を見出してもらえたらなと思います。コワーキングスペースの醍醐味って実はそこにあるのではないでしょうか」そう話す岡田さんが最近、コワーキングスペースの説明をするときに使っているのが「クリエイティブな公民館」という言葉。一般の認知はまだ作業場や勉強場所ではあるが、それならシェアオフィスで十分だ。岡田さんは、作業や勉強に集中しながらも交流ができる、そのバランスを今後も追求していく。

イベント風景
イベント当日は、“ここだけの話”が盛りだくさんで、コワーキングスペースの意外な事実に参加者達も興味津々。

公開日:2019月09月03日(火)
取材・文:和谷尚美氏(N.Plus

岡田大誠氏(おかだ ひろなり)

WEBDAデザイン

枚方を拠点にウェブデザイン、ITコンサル、スクール・コワーキング運営を行うなど幅広く活動中。元バンドマン。28歳の時ふとしたきっかけから職業訓練校にてウェブデザインの基礎を学びウェブの世界にハマる。その後、複数のウェブ制作会社でウェブクリエイターとして勤務し2015年にフリーランスとして独立。ITコミュニティサロンWizcoとコワーキングスペースSHINCRUを運営。

岡田大誠氏

イベント概要
クリエイティブ×コワーキングスペースへ茨の道の話
クリエイティブサロン Vol.166 岡田大誠氏

フリーランスのウェブデザイナーとして活動しながら、コミュニティサロンとコワーキングスペースを運営。元バンドマンだった私がクリエイティブ業界に足を踏み入れたきっかけからフリーランスになるまでの過程、さらに現在携っているコワーキングスペースのシビアな現実をお話します。華やかなイメージを持たれるコワーキングスペースとコミュニティについて、ここだけのぶっちゃけ話をします。

開催日:2019年8月2日(金)19:30〜21:00
会場:メビック扇町