経営全体をデザインする「超」クリエイターのススメ
クリエイティブサロン Vol.157 エサキヨシノリ氏

今回のクリエイティブサロンは、ブランディング・プロデューサーとして中小企業を支援する一方、メビック扇町などでクリエイター向けセミナーを開催するエサキヨシノリ氏をゲストに迎えた。エサキ氏のセミナーは、受講生の心に響けと熱く語るエンターテインメント性あふれるスタイルが特徴。そんないつものエサキ氏とは異なり、どこかはにかみながら静かな口調でスタートした。

エサキヨシノリ氏

「ゼロからイチを創り、暗黙知を言語化する男」エサキ氏の原点

「僕は大阪の新設公立高校の第一期生として入学し、生徒会役員として学校初の文化祭や体育祭の企画・運営、クラブの立ち上げなど、何もかもゼロの状態からつくりあげた経験があります。それが『ゼロからイチしか創れない』クリエイター気質の原点になったかもしれません」と自己紹介するエサキ氏。高校卒業後はアメリカの大学に進学し、油絵を5年間、専攻。帰国後は日本の広告代理店に就職した後、外資系広告代理店に転職し、大手飲料メーカーの営業担当として数多くのキャンペーンで力を発揮した。そこで上司から「おまえはプランナーが書いた企画書に赤を入れるのが仕事」と言われ、クライアントを説得するロジカルシンキングや、暗黙知を言語化する手法、クライアントとの向き合い方など、さまざまなことを叩きこまれたという。

当時はカタカナ用語を多用し、傍目にも粋がっていたというエサキ氏だが、内心は苦悩の連続。「消費者の身近にある商品を扱っているにも関わらず、広告をつくっている自分たちが普通の暮らしを送っていない。そのギャップに苦しみメンタルをやられ、遂には出社ができず約8ヶ月間、休職して主夫をしていました」
そんな時、ある中小企業の社長と出会い、大きな転機が訪れる。自分たちの会社や技術、商品のことを熱く語る社長であったが、Wordでつくったチラシを見せてもらうと、そのクオリティに絶句。経営者の心にある熱い思いを言語化・見える化し、多くの人に魅力を伝えようと“情熱ブランディング”の原型をつくりあげた。

エサキ流セミナーのこだわり

一方、クリエイター向けセミナー講師としての活動は2005年に始まり、これまで2つの柱で展開してきた。ひとつは「独立クリエイターの営業力アップ塾」で2007~2009年に計6回開催し、2018年、8年ぶりに大阪デザイン振興プラザ(ODP)で復活した。もうひとつは「独立クリエイターのプロデュース力アップ講座」で、2011年から7年間続けて開催。2018年11月からは「『超』プロデュース力アップ講座」としてバージョンアップを果たした。そこに至ったセミナーの変遷が紹介された後、エサキ流セミナーの特徴について話が移っていく。

活版印刷機
エサキ氏のクリエイター向けセミナーの変遷

エサキ流セミナーの第一の特徴は、レジュメの内容が濃く、1回のセミナーで90ページ以上に及ぶこと。たとえば営業力アップ塾なら、ヒアリングの仕方から見積作成、プレゼン手法やクライアントを飲みに誘うタイミング、次の仕事につながる請求書の提出法など、現場で役立つ情報が微に入り細に入り散りばめられている。
第二の特徴は、一人の若いクリエイターがクライアントと関わる中で成長していく姿をドラマ仕立てで描いていることだ。

またセミナーレジュメには、毎回、新しい情報を盛り込むことを徹底。最初から10回シリーズの全編を作らず、数回分をつくって受講者の反応を確かめながら続きを作成しているそうだ。
そしてセミナー講師は、あくまでも裏方であり受講者を光り輝かすための存在でいることを心がけているという。

そんなエサキ氏ではあるが、メビックでセミナーを始めたころ、「自分は本当にセミナー講師なのか」と迷いがあったと明かす。
「エサキは弁が立つが中身がないと、若いころから言われ、自分でもそう思っていました。セミナーも勢いとトーク力で、それなりに伝えることはできましたが、これでいいのかという思いがあったように思います。そんな不安を隠すために、真っ赤なジャケットを着てキャラをつくっていた時期もありましたね。そんな私も回を重ね経験を積むうちに、少しは中身が伴ってきたのでしょうか。『教えてもらった方法をマネしてプレゼンをしたら採用されました』『エサキさんの言っていることが3年後に分かりました』と報告してくれる人が増え、自信が付いてきました」

誰もがデザインシンキングを語る時代。
クリエイターのレベルアップが必要

こうしてサロンは佳境に入り、本題である「クリエイターに伝えたいこと」について話題が及ぶ。
これまでクリエイターは企業活動のマーケティングの一部であるプロモーションの、さらに下層にある広告・販売促進を担うという、経営トップからとても遠いところで仕事をしていた。しかし最近はデザインシンキングという言葉を、中小・零細企業の経営者も“なんとなく”使うようになり、クリエイターに対して経営全体のデザインを求めるようになってきた。また、多くの企業が独立クリエイターに直接、発注することが増え、クリエイターが自分なりのデザインシンキングを語り、実践する必要に迫られている。クリエイター全体のレベルアップこそ喫緊の課題と説く。
「このようなクリエイターにまつわる環境の変化が、プロデュース力アップ講座を『独立クリエイターの「超」プロデュース力アップ講座』としてバージョンアップした理由です。超講座では、ある自転車メーカーからホームページ制作の依頼を受けた若きクリエイターが、ヒアリングを重ねるうちに経営者の心の奥底にある本当の悩みに気づき、チームの仲間と協力して人・モノ・金・情報のすべてにおいてブランディングしていくというストーリーになっています」

第66回全国カレンダー展の授賞式
これからの時代、クリエイターは経営全般に関われる

クリエイターは価値ある仕事。今の報酬を倍にしよう

クリエイターが広告や販促だけではなく、企業理念から人事や財務経理、社風、社内の人間関係など、経営のすべてをデザインできるようになれば、今の倍の報酬を得られるというエサキ氏。クリエイターは、そのぐらい価値ある仕事で、これからの時代にもっと求められる存在になるはずだと言い切る。
「クリエイターのみなさんには、クリエイティブの部分だけでなく、活躍する場を広げてほしい、自信を持ってくださいと強く訴えたい。『そんな難しいことは私にはできない』と思う方もいるでしょうが、企業理念やコンセプトという根っこの部分を考え管理するようになれば、クライアントはすべて、あなたに相談してくるはずです」
さらにエサキ氏は続ける。「たとえば、今までと少しちがう忘・新年会を企画すれば社内の人間関係をデザインできるでしょうし、エクセルの請求書ではなく、その会社らしい書類をデザインするとか、行政や銀行に対して動画でプレゼンしましょうと提案してもよいわけです。そんな面白い発想はクリエイターしかできないはずですから」

サロンの最後に、自身の今後の展望を語りはじめた。
「僕は2018年に50歳になりました。80歳90歳まで、この仕事を続けたいと考えています。その基盤づくりとして拠点を持ち、クリエイターさんの相談を個別に受けたいと考えています」
ますます厚みが増していくエサキ氏の活動に、さらに期待が集まることだろう。

イベント風景

公開日:2018月12月27日(木)
取材・文:大橋一心氏(一心事務所

エサキヨシノリ氏

エサキヨシノリ氏

情熱の学校 代表
情熱ブランディング・プロデューサー

純日本系&外資系、両方の広告代理店営業マンとして各種企業のコミュニケーション活動をプロデュース。その後、2005年に独立し、中小企業のブランド力向上を通じて、自社の想いをちゃんと伝えられる会社を一社でも多く創りだす為のコンサル&セミナー事業、そして同時に独立クリエイターを対象にした営業・プロデュース力アップセミナーを大阪を拠点に展開中。

イベント概要
セミナーを通して、僕がクリエイターさん達に伝えたい事
クリエイティブサロン Vol.157 エサキヨシノリ氏

「情熱の学校」創業当初からブランディング・プロデューサーとしてお仕事させて頂く一方でセミナー講師としても10年以上、クリエイターさん達に対し、営業・プロデュース力アップの重要性をお伝えして参りました。そこに込め続けた想いとは? そして、これからの時代に向けて、今、改めてお伝えしたい事とは?これまで、あまり明かす機会のなかったセミナー制作の裏側についてお話しします。

開催日:2018年12月3日(月)19:30〜21:00
会場:メビック扇町