もともとはシステム開発のエンジニア
安田 豊氏:(株)マトリックス

自社で開発したICタグのシステムやパッケージソフト、鈴鹿サーキットを自転車で走るという自社主催のレースイベント「鈴鹿8時間エンデューロ」をアピールするため、パンフレットやホームページの作成、プロモーションビデオの編集と、クリエイターとして活躍する安田豊さん。もともとシステム開発のエンジニアとして入社されましたが、今はデザイナーのスキルを積み上げながら自社の制作物に取り組んでおられます。

「モノ作り元気企業」の技術を発信する

安田氏

マトリックスの核となる事業の一つは、アクティブタグと呼ばれる、電池を内蔵した無線ICタグの開発や製造・販売。無線ICタグには、ICOCAやSuicaのように電池の入っていない「パッシブタグ」と呼ばれるタイプと、電池を内蔵し数十メートルの範囲で情報を読み取れる「アクティブダグ」の2種類があります。

マトリックスは、日本では数社しかないというアクティブ型ICタグを手がける会社の一つ。しかも、他社にはマネのできない独自の技術を誇り、経済産業省近畿経済産業局の「KANSAIモノ作り元気企業2008」や中小企業庁の「2008年度版・明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業」に選ばれています。そんな「元気なマトリックス」を広くアピールするのが安田さんの役割です。

特異な市場から社会的な市場へ

今の事業の核となっているタグの開発は、それまで手作業だった自転車レースでのタイムの測定を「自動でできないか」という話が舞い込んだのが発端でした。猛スピードでゴールになだれ込んでくる複数の自転車を、ほぼ同時に計測するのは至難の業。「これまでこの世になかったものを作る」という社長の信念から、幾多の苦難を乗り越えて開発に成功されました。

その後、マラソンや駅伝、トライアスロンなど数々の競技に採用されますが、市場としては狭くて特異な分野。それが、小学校の「登下校のメール通知確認システム」や産婦人科に向けた「赤ちゃん連れ去り警報システム」、病院や介護現場に応用した「徘徊見守りシステム」など、タグの事業が社会的な市場に広がりはじめます。安田さんが「当初はタグで成功するとは思ってもいませんでした」と言うのとは逆に、見る見るうちに柱の事業へと育って行きます。

新設部署でクリエイターに転身

そんななか、システム開発のエンジニアだった安田さんは2007年9月に新設された企画部に配属されます。以来、社内で情報発信の強化が図られ、ホームページの管理はもちろん、各種パンフレットの制作からイベントのセッティング、展示会の仕切りまで安田さんが采配を振るうようになります。
しかし、当初は「会社概要を作ると言っても、何を参考にしてどうやればいいのかわからなかった」と言うほど。そんな手探りの中ながら「パンフレット一つ作るのにもデザイン的なものが気になって」と、独学でデザイナーのスキルを磨いて行きます。

想像もしていない方向へ進んで行く

今ではプロモーションビデオも制作し、展示会でも「見に来られた人にビックリしてもらう」というスタンスでやっているとか。入社以来12年、会社が大きくなるのを肌で感じながら歩んできた安田さん。さまざまなトラブルや失敗も経験して、幾度となくつらい思いを味わったこともあるそうです。
今はタグの事業で注目され「4?5年前までこんな状況は想像できませんでした」と話しつつ、さらに「僕自身がデザインやホームページの仕事をするとは想像もしていませんでした」と振り返ります。

まだまだデザイナーの勉強と経験を重ねる毎日ながら「シンプルで分かりやすくがモットーです」と、独自のスタイルを築きつつあります。

公開日:2008年08月07日(木)
取材・文:福 信行氏
取材班:つくり図案屋  藤井 保氏