カラフルな感性と自由な発想で挑み続ける
ハタヤママサオ氏:

ハタヤママサオ氏

独特な色彩と大胆な発想で自由に描かれる、ハタヤママサオさんの作品。無機質なビルから国宝の大仏様まで、ハタヤマさんのカラフルな感性のフィルターを通せば、ワクワクするようなアートに生まれ変わります。アートイベントへの出店やライブペインティングで精力的に活躍するほか、大手百貨店のメインビジュアルから、雑誌表紙、会社ロゴ、イベントポスターやビールのパッケージデザインといった、企業とのコラボレーションなど、多方面から注目を集めるハタヤマさんの魅力に迫ります。

心のまま、自由に描く

ハタヤマさんの代名詞が、大勢の前で行うライブペインティング。30号、50号といった大きなキャンパスに、お客さんの目の前で描いていきます。下絵は鉛筆。サインペン等でなぞり、色彩はアクリル絵の具で。「最初に好きな色をポンポンと塗っていきます。あ、失敗したな、今観ないでくれと思う事も正直あります(笑)」カラフルさが特徴のひとつであるゆえに、同じ配色にならないようにするのが難しいといいます。「どうしても好きな色がかぶってしまうので。でも最終的に自分の気持ちよい感じになればいいかなと」。
代表作は、『幸せのピンクのブタさん』『フレンチぶる』など動物シリーズ、岡本太郎の『太陽の塔』を模した『たいような塔』、大型作品の『てぃらのザウルス』など。「絵が売れない」といわれる日本において、さらにシビアな大阪でもハタヤマさんの原画にはコレクターがいるほど「売れる絵」なのです。
「まったくの独学」というハタヤマさんが尊敬するのは岡本太郎氏と、木梨憲武氏。「岡本太郎さんはとにかくエネルギーがすごい。たとえば書もすごくて、ほとんど絵のような字を書かれます。木梨さんは、枠をはみ出して壁いっぱいに描く。既成概念のない自由さにあこがれます」。アウトサイダーアートにも注目し、展示会などには積極的に足を運ぶそう。「迷いのなさ」に刺激を受けるといいます。


ライブペインティングの様子

アルバイト先で「なんとなく描いた絵」が…

1976年の元旦に、6人兄弟の長男として生まれたハタヤマさん。幼稚園の頃、描いた絵が先生に褒められ、一気にその気に。小学校で漫画家を目指し、コロコロコミックに投稿した「つるぴかハゲ丸」の4コマ漫画で佳作を受賞。自他ともに認める少年画伯だったハタヤマさんですが一転、中学~大学までは強い空手家(!)を目指し、鍛錬の毎日。大学卒業後は、数々のアルバイトと遊びに溺れ、絵とは無縁の生活に…。そんなハタヤマさんが再び絵を描こうと思ったきっかけは、当時バイトしていたバーで、壁に描かせてもらった絵が、予想以上に好評だったから。「今とまったく違う、アフリカの壁画のような絵」には、売ってほしいという人も現れ、「こずかい稼ぎができるかも」という気負いのない気持ちから、アート活動が始まりました。

お客さんの“生の声”を求めて

初めて参加したグループ展での売り上げは…一週間で150円。「この時の売り上げはいまでも保管しています(笑)」。これがアーティスト魂に火をつけました。「じゃあ、何が売れるのか」を探るため、路上イベントやアートイベントはハタヤマさんのライフワークに。多忙になった今でも、主に週末、大阪・名古屋・東京などで行われる、アートイベントへ出かけます。「こないだは、マグカップを買って行かれた年配の男性が、嫌な事あってもこれで飲んだら元気出るわ!って。けっこう年配の方も多いんですよ。年いくと明るいのがええわ~って。どんなものが売れるか、受けるかを直接感じられますよね」。ハタヤマさんのブースには、老若男女、幅広い層のお客さんが足を止めますが、「かわいい~」「元気が出る!」という声が圧倒的に多いと言います。

ほうえカゴ
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芸術家で行こう!と決心させてくれたのも、イベントでした。数万の原画が売れるようになり、周りからも「いける!」といわれたことで、芸術家として生きて行こうという気持ちが固まったと言います。コレクションとして欲しい、という人も増えてきました。事務所に飾ったり、お祝いに贈られる社長さんなども多く、えべっさんがモチーフの『商売はんじょう』に社名を入れたものは、「縁起がよい」と事務所のオープン記念に人気だそう。

原画はオーダーメイドも受けています。「ゆるキャラのような絵を求められる事もあるんですが、そこに僕流のアレンジを入れられるのならOK」。要望はまず受け入れるのが、ハタヤマさんのスタイル。要望を聞いてもらえて、完成後は、新鮮な驚きとともに、笑顔になれる。それがハタヤマさんの作品にハマってしまう理由なのかもしれません。また、アートイベントを通じて、企業からのオファーが発生することも。やり続ける事には大きな意味があると感じさせてくれます。

企業とのコラボレーションにも尽力

ハッピーコーヒー
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2008年、オリジナルキャラ「エアろびん」がMaxel賞を受賞。アートストリームでの初選抜出展などが注目され、テレビ出演のオファーも。その翌年、ハタヤマさんに転機が訪れました。2010年のUCCコーヒーコーヒーアート大賞で、ハタヤマさんの「夢のハッピーコーヒー」が、7000通中、10名にノミネートされたこと。「1位と2位が賞金だったのですが、僕は佳作で奇しくもコーヒーセットでした(笑)」。とはいえその年のカレンダーに掲載され、徐々に企業からもオファーがくるように。2011年には大阪タカシマヤで、2012年、2013年に梅田ロフトにハタヤママサオ期間限定ショップが開催。また2013年は大阪水上バス賞、大阪21世紀協会のW受賞、2014年は「水都大阪 大川さくらクルーズはちけんやお花見フェスタ」のパンフレットにも起用されました。自身のアート活動と、企業からコラボレーションのオファーでめまぐるしい日々ですが、これからも挑戦し続けたいとハタヤマさんは言います。

まだまだ、挑み続ける。

動物シリーズなどもかわいいものから、国民的アニメや通天閣、ピカソの名画を模したものまで、ハタヤマさんの作品はチャレンジ精神があふれています。「『ラスメニーナス』というピカソの作品をアレンジした作品があるんですが、全然ウケません(笑)。でも、ウケなくても勝手に挑みたい。名画シリーズはやり続けたいですね。あと、家具などの立体にペイントしてみたい」。実は今、大仏の絵を見た奈良の方からのオファーで、奈良のイベントで、大仏さんと同じモチーフの立体をペイントするという企画が持ち上がっているとか。人気の阿修羅像を模した立体にペイントするという大胆な試みで、企画が通れば前代未聞のライブショーに!また、古典芸能の古いイメージを、若い人も受け入れられるようにと、2014年9月に大阪城で行われる能楽のイベント「大坂の陣400年記念 大阪城本丸薪能」のパンフレットにも起用されました。良き日本の伝統を、若い人にも受け入れやすく、という想いにはハタヤマさんも共感できると言います。
家具職人さんとコラボレーションして家具を作る、自身の絵をアニメ―ションで動かす…「やってみたい事はたくさんあるけれど、1人では限界がある。いろんな方とコレボレーションしたいですね」。どこでどうつながるかわからないから、やってみる。臆することなく、おもしろそうと思った事は、懲りずにやっていきたいというハタヤマさん。「海外でも勝負したい」と、静かに熱い闘志を燃やします。枠にとらわれず、ますます進化し続けるハタヤマワールドから目が離せません。

フレンチぶる てぃらのザウルス
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公開日:2014年07月04日(金)
取材・文:塚本愛子 塚本 愛子氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏、有限会社ガラモンド 和田 匡弘氏、東 善仁氏、graphic design studio Einsatz 吉田 透氏