「システム受託開発」と「自社サービス販売」の2本柱を目指して
信田 洋氏:(株)NOBシステムズ

信田氏

システムの受託開発をメイン事業とする株式会社NOBシステムズ。代表を務める信田洋氏は、個人事業からスタートし、大阪市の起業支援スペース「立志庵」で半年間の準備期間を経た後、メビック扇町のインキュベーションオフィス入所中に法人化を果たすという経歴を持つ。卒業後に移転した北区天神橋筋のオフィスにて、独立に至った経緯や現在の状況、今後の展望についてなど、お話をおうかがいした。

ゲーム大好き少年から、技術者の道へ

大阪府岸和田市出身の信田氏。小学生のころからコンピューターゲームに夢中な少年だったという。
「兄と一緒にゲームを楽しむ一方、『もっとこうすれば面白くなるのに』と、ゲームのつくりに興味を持っていました。そのうち、兄のパソコンでプログラミングに触れ、自分で作ったゲームを見せ合うようになりました。このころに『自分で作ったもので人に喜んでもらうことの楽しさ』を知ったことが、技術者としての私の原点だと思います」

中学、高校はバスケットボール部に所属。朝から晩までバスケットボール漬けの日々を送ったそう。
「それまでは家の中で遊んでばかりでしたが、バスケットボールを初めてからは、仲間と一丸となってがんばることがとにかく楽しかった。ハードな仕事を乗り切る根性もこのころ身についたと思います」と、はにかむ笑顔で教えてくれました。

大学では、ロボット研究の第一人者・石黒浩教授の研究室に所属。
「カメラの映像を解析して、いかにロボットに周囲のできごとを認識させるかという人工知能の研究をしていました。研究室のレベルが高すぎてついていくのがやっとという感じでほとんど大学に泊まり込んでいましたね。当時はお掃除ロボットのような自律的に動く製品は身の周りになかったので、自分のプログラミングしたものが生きているかのように動くことが面白かったですね」

卒業後は就職し技術者の道へ。初めに就職したシステム開発会社でプログミングやネットワーク構築など改めて基礎から教わったといいます。実践的な技術の習得を積み重ねていくうちに、「この世界で生きていける」という自信がつき、26歳という若さで独立を決断します。

インキュベーションオフィスにて、事業を法人化

独立直後は、販路も営業力もないことから、受託開発をメイン事業に考えたそう。
「以前の勤め先から定期的に仕事を頂くことができたので非常に助かりました。焦ることなく事業を開始できたので、その後も良い取引先に巡り合えたのだと思います。依頼された仕事は全て請け、連日徹夜で納品に間に合わせていました。このころは毎日が勉強でしたが、新しい技術を学ぶのが楽しくて仕方なかった。それで取引先に喜んでもらえるのだから、疲れを感じることはなかったですね」

個人事業として活動して2年ほどたった頃、さらなる発展のためには事務所が必要だと判断した信田氏は、大阪産業創造館が提供している起業支援スペース「立志庵」にオフィスを設けます。ここで準備を整え、半年後にメビック扇町のインキュベーションオフィスへ入所し法人を設立。
「この2つの施設に入ったことで、事務所としての機能以上に、これから創業を目指す人や、すでに活躍している企業家など、様々な人と情報交換や交流する環境があることの重要性に気づきました。本当に色々な人とたくさん出会い、事業の進め方のヒントを見つけたり、刺激を受けることができました」


NOBシステムズの由来

技術力と誠実さをモットーにシステム開発の道を邁進


フェアプライズ

2009年末にインキュベーションオフィスを卒業してからは、北区天神橋筋のオフィスビルに事務所を構え、従業員も雇うことができた。
「メイン事業は、創業以来変わらず『システムの受託開発』です。これは、お客様から『こんなサービスやシステムを作りたいという』というご要望をいただくことがスタート。そのニーズに対してソリューションを提案し、システムをプログラミングして納品するというのが一連の流れです。一方では、既存システムの改修も請けております。担当者が退職されたなどでシステムの中身が分からなくなるケースが多いようですが、当社では多くのプログラミング言語やシステム環境での実績がありますので、既存システムを解析して修正までできるのが特徴です」

クライアントには、創業当時からおつきあいが続く会社などリピーターが多く、そこからの紹介で数珠つなぎに仕事の依頼があることも少なくないという。数多くあるシステム開発事業者の中で、それだけの信頼を勝ち得る(株)NOBシステムズの強みとはどこにあるのか、信田氏が仕事をする上でモットーとすることをおうかがいしてみると、「納期は必ず守る。できるだけ品質の良いものを作る」という実にシンプルな回答。だからこそブレがない。そこに信田氏の技術者としての揺るぎない誇りと自信が垣間見えます。

「システムで一番怖いのは不具合が起こることですので、100%なくすことは難しいにしても、できるだけ品質を上げて確実な納品を行うことが一番だと考えます。そのために大切にしているのが、社内で高い技術力を保つこと。うちでは、システム開発に関しては外注を一切使わず、全て社内で行うことにしています。技術を蓄積するという意味もありますが、問題が発生してもすぐに対応できますし、仕事を外に出して管理が行き届かなくなるのを防ぐことができます。現在の会社の規模でできる範囲のことを誠実にやっていく。会社の規模を大きくするのは、そうやって進んだ上で余裕ができてからのことだと思っています」

達成した目標と、これからの目標


不動産売却コンパス

メビック扇町を卒業してから変化したことは?
「以前から『自社でサービスを持ちたい』という目標を持っていましたが、お客様の要望に合わせたシステムを作ることと新しいサービスを作ることは、また違った力が必要なのでなかなか実現できなかったのですが、提携先に恵まれ『不動産販売のASPサービス』を開始し、やっと形にすることができました。今後は、この横展開として、不動産売却や賃貸を支援するサービスに拡大していきたいと思っています」

では最後に、今後の展望は?
「自社サービスをどんどん増やしていくことですね。今はまだ手がけはじめたばかりで仕事の割合的には受託開発が大きく締めていますが、行く行くは受託開発と自社開発の比率を半々ぐらいにしていくことが目標です。ただ、新しいサービスを作るのは1社では難しいですので、色々な方々と出会い、協力して行ければと思います」

公開日:2012年12月25日(火)
取材・文:C.W.S 清家 麻衣子氏