工業用部品をアクセサリーに。メッセージ性の高いブランド展開。
中元 奈央氏:Xi Design


「Xinomeサイノメ」のアクセサリーを身に着ける中元奈央氏

電子部品などの特殊素材を用い、樹脂コーティング、らせん構造など工業的・物理的なアプローチでプロダクトデザインを試みるブランド「Xinomeサイノメ」を展開するXi Design(サイデザイン)の中元奈央さん。機械化を象徴する電子部品を使ったプロダクトを作ることで、“人間とは何か”というメッセージを発信しています。
「自分の店を持ちたい」。かねてからの目標を叶えた中元さんが、自社ブランドにかける思いについて語っていただきました。

SF、サイバーパンクを手法に取り入れ“人間とは何か”を発信

大のサイバーパンクアニメ好きという中元さん。もともと、東京の広告代理店でメディアプランナーとして活躍していた中元さんは、結婚を機に大阪へ。新しい土地で何を始めようかと思ったときに、以前から目標として描いていた「自分の店を持ちたい」という夢へと歩みだしたといいます。
「独立にあたって、“消費者の評価が直接的にアーティストのモチベーションにつながる仕組みを作る”“プロダクトデザインを通じて人間とは何かを問いかける”という二本を軸に活動しようと決めていました。まず、4年前に若手デザイナーを起用したTシャツブランドを立ち上げ、今春には“魂の所在”をコンセプトに自身のデザインによるアクセサリー・アパレルブランドを立ち上げました。表現手法のひとつとして、SFの1ジャンルであるサイバーパンクを用いていますが、特に私はその中でも、映画『マトリックス』シリーズに大きな影響を与えたアニメーション作品『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が大好き。“人間とは何か”という深遠なるテーマについて、機械化を象徴する電子部品を通じて表現したい。そんな思いが強くあり、それを実現したのが『Xinomeサイノメ』です」と中元さんは語ります。電子回路基板を樹脂コーティングして作ったピアスやネックレス、タックピンなどの製品や、耐熱電子ワイヤーを使ってDNAのらせん構造を表現したブレスレットなど、強いメッセージ性のあるプロダクトが特徴のブランドです。


DNAらせんを表現したブレスレット

電子部品ファンは、一見普通のOLさんやサラリーマン

中元さん自身、穏やかで柔らかな外見からは、サイバーアクセサリーを制作、販売しているとは、想像しがたい印象ですが、『Xinomeサイノメ』の製品を購入するお客様も、一見普通のOLさんやサラリーマン風の方が多いのだとか。
「『Xinomeサイノメ』のアクセサリー購入者は20代後半から30代の男性が多いですね。もちろん、理系でプログラマ、という方もいらっしゃるでしょうが、普通のサラリーマンやOLさんも多いです。私自身、大学は経営学部で、根っからの文系人間。ですが、昔から電子部品などのメカっぽいデザインが好きで、ぜんまいとか基板の美しさに惹かれてきたタイプ。そういう層は多数派ではないかもしれませんが確実に存在しているので、その人たちに『サイバーアクセといえばサイノメ』と思ってもらえるように、ブランドを育てていきたい」と中元さん。


コーティングによる光沢が美しいピアス

大阪は独自の技術を持つ工場も多いので、ネットワークづくりにも意欲を燃やしています。
「ブランドのコンセプトを理解していただき、協力いただける工場があれば、積極的に足を運びたい。部品としては使えないけれど、作った製品には自信も愛着もある。そんな熱い思いのこもった製品を廃材として提供いただける工場も探しています」とのこと。コーティングの手法や製品バリエーションなど、よりイメージに合ったプロダクトラインナップを実現すべく、新しいネットワークをどんどん開拓していく方針です。

興味のある人にダイレクトに響くよう、発信力を高めたい

表現するテーマはあくまで“人間性”。それを電子部品を通していかに表現するか、は中元さんの腕の見せどころ。
「“自己組織化”というテーマを表現するために、こんな特性を持つ部品がいいのではないか、とか、留め具やスイッチを使って何か表現できないか、など、考える時間がとても楽しいです。もちろん製品を知って買ってもらわなければ意味がないので、プロモーションイベントなどにも参加しています。今年は、群馬県で行われた産廃サミットに出展しました」とのこと。新規取引の獲得には苦労がつきものですが、同時に大きなやりがいを感じる場面も少なくないのだとか。


産廃サミット2012に出展した際の様子

「産廃サミット後に3331Arts Chiyodaのセレクトショップでの取り扱いが決定いたしました。これは産廃サミットがきっかけでお声かけいただき実現したものです。3331活動には、かねてからシンパシーを感じており、お取扱いいただくことは目標の1つであったので、このような注目される施設で置いていただいたことは、とても光栄だと思っています。」とほほ笑む中元さん。
地道なファンづくりとネットワークづくりを通じ、“選ばれるブランド”として確かな基盤を築いていくことでしょう。

公開日:2012年08月31日(金)
取材・文:ユーモア株式会社 漆垣 美也子氏
取材班:清水 敬二郎氏、株式会社ファイコム 浅野 由裕氏