セラヴィグッズが“こだわり”となり“思いやり”となり…
宮田 聡氏&谷口 真由美氏:セラヴィ


宮田さん(右)と谷口さん(左)

写植時代から経験してきた職人気質の宮田さんと、パッケージ分野で受賞歴もある作家タイプの谷口さん。互いに別のクライアントを持ちながら、一緒にデザイン事務所を立ち上げ活動している。そんな2人に共通するのは、想いを込めて丁寧に仕上げる“セラヴィグッズ”。オリジナルグッズを年に1回、年初めのダイレクトメールとしてクライアントや親しい知人に送っている。
仕事に対する姿勢や、グッズを作り始めたきっかけ、そしてこれからについてお伺いしました。

積み重ねてきた経験が武器に

デザイナーになる前、宮田さんは写植会社で働いていた。
「写植をやっていて良かったです。文字に対するカンを体で覚えることが出来ました。僕はハサミやものさしを使って、切ったり貼ったりする手作業が好きなんです。当時の仕事のプロセスには手応えがあった。そういった点では、コンピューターのない時代のデザインにはチカラがあったと思います」
もちろんパソコンでの作業は行うが、細やかに積み重ねていく手作業の経験が、宮田さんの力となっている。例えば、パンフレット制作は1冊まるごと受け、企画から立案、ブッキング、ディレクション、デザイン、ページ構成まで自ら手掛ける。
「海外ロケの際に、現地のカメラマンをブッキングしたこともあります。限られた時間の中でスケジュールを組み、撮影ディレクションを行います。撮影ではカメラマンと一緒に自分も動きます。そうやってアクションを起こして動くことで、発見や体験が増え、それが自分の武器になっています」
20年来の付き合いがある総合パッケージメーカーとは「携わることで、力になれていると自負しています」。会社案内に企業ロゴ、ホームページ制作まで、ある意味、会社の歴史と共に歩んできた。
自分の経験を信じて実直に作業をする姿勢が、クライアントに支持され、仕事へと繋がっていく。

宮田さんは、同じ事務所の後輩だった谷口さんと独立し、スタッフ1人が加わって3人で南堀江にデザイン事務所をスタートさせた。そして現在は、2人と事務所猫1匹で活動している。
彼らの“セラヴィグッズ”は、この事務所猫がテーマになっている。

“ミィーくん”からヒントを得た“セラヴィグッズ”


事務所猫ミィーくん

南堀江に事務所を構えていたある日、窓から1匹の猫が突然遊びに訪れ、そのうち居つくようになった。宮田さんは犬派だったが、谷口さんは大の猫好きなのでウエルカムだった。同じ年、ビルの老朽化に伴い南堀江の西側に引っ越した。その際に谷口さんは、サバトラ柄の事務所猫ミィーくんをモチーフにしたデザインで移転案内を作成した。その後、年初めのダイレクトメールとして展開。彼らの“セラヴィグッズ”はこれが起点となる。

“セラヴィグッズ”を手掛ける谷口さんは言う。
「最初はダイレクトメールだったんですが、次第にエスカレートしていき、ミィ―くんの声が入ったレコードをアメリカで作ったり、トートバッグや軍手、リストバンドなど、事務所猫をモチーフにグッズ制作が始まりました」

ミィーくんと、時を経て移転先で加わった同じくサバトラ柄の猫ウーちゃん。この2匹の事務所猫をテーマに、今までの17年間グッズを作り続けている。
年始のダイレクトメール制作に力を注ぐ理由は?
「私たちの楽しみで始めました。仕事って必ずしも好きなことが出来るわけじゃないから、モチベーションを上げるツールになっているんです。送り先へはサプライズ感もあるので喜んでもらえたり、次も期待されると、私たちもダイレクトメールに添えたスペシャルな表現を通じ、その反応が嬉しくてそれに応えたくなります。
そのために素材を探すこともあります。取り扱っている業者さんを探したり、仕事で関わったメーカーさんに協力をしてもらったり。業者さんを見つけて現場に行くことで、新たな発見があったり、アイデアに繋がっていったりもするんです」
そうやって続けているうちに、それが個性となり仕事に繋がることもある。
「パッケージやオフィシャルグッズ制作、店舗関連の依頼も増え、企画、ブランディングなど立ち上げから関わったりもします」。そういった仕事により、高い評価を受け、クライアントから支持されることになる。

彼らに内在する“思いやり感”は目に見えるものではないが、ダイレクトメールでしっかりアピールされ、さらに仕事や作業に対するピュアな取り組みがクライアントへの信頼となり、新規へと繋がっている。
また、ミィーくんとの運命的な出会いがなければ、“セラヴィグッズ”はなかったかもしれない。事務所猫がキャラとなって、自己発信の機会になったのは確かだ。


セラヴィグッズ

「親しき仲にもレベルあり」クライアントと一緒に成長していきたい

さて、今後の展開やあり方について伺ってみた。
宮田さん「20年間の付き合いがある取引先がいくつかあるのですが、取引先は益々発展しているのに、自分たちは変わらずではダメですよね! 自分たちのレベルを上げて、いつでもアクションを起こせる準備が常に必要と思います。どうクライアントさんたちと一緒に伸びていくか、これからの課題として、『親しき仲にもレベルあり』だと思っています」

谷口さん「自分らしさとセラヴィらしさは大切だけど、課題はたくさんあります。ただ、1つでも2つでも変化していきたい。自分を磨き、進化していきたい。それをプレッシャーに向上していきたいです」

20年もの取引をするクライアントがある。それは素晴らしい実績であり、彼らの純粋な“思いやり感”の結果だ。そして常に向上心を持ち続ける。彼らはこれからも、自分たちのこだわりや経験、体験などを通じて、クライアントの気持ちをデザインという形を使って具体的に表現していく。

現在の事務所は2階が作業場、3階がミーティングルーム兼ショールーム。「セラヴィの楽しみでありながら、人にも喜んでもらいたい!」という気持ちで作り出した“セラヴィグッズ”は、ショールームにて公開もしているので、見学の際はぜひお問い合わせを!


3階のショールーム

公開日:2012年07月17日(火)
取材・文:下八重順子 下八重 順子氏
取材班:クイール 松本 幸氏、清水 敬二郎氏