デザインってドキドキするでしょ
中村 拓哉氏:グラフィックパワー社

じゃ作っちゃおう。

マウスパッケージサンプル

マウスのパッケージデザインを考えてくれと言われてもマウス自体、まだサンプルがないこともある??デザイン業界じゃよくある話、だそうだ。マウスがないのなら、仕事が出来ない。だからマウスのサンプルが出来るまで待とう。
「そんなんでは時間がもったいない。マウスがないんやったら、こっちで作っちゃう」という考え方をするのは西天満の『グラフィックパワー社』代表・中村拓哉さん。
無から有を作る。
クリエイティブといわれる仕事はそう表現されるが、中村さんは文字通り、それをやっている。と言っても図画工作のように切ったり貼ったりするわけでなく、石膏で作るわけでもない。
その極意は? 記事にしていいんですか?
「それはね、3Dなんですよ」

ピースの噛み合わせ??ある男との出逢いで完成したパズル

水島さん
水島 圭介さん

臨床検査技師という国家資格を有し、医療機関で働いていたという中村さん。
しかし、ジグソーパズルのピースがうまく噛み合わず、どこか違和感が残るかのように、その職を辞して大幅な進路変更。
元々、モノ作りには興味があったので、堺で有名なデザインの先生の下で修業。
基礎から徹底的に教育され様々なデザインを経験した。
のちに商業デザインに憧れ大阪北区で独立するも、抱えきれない案件に当時、何かとアドバイスしてくれていたデザイン会社長の導きでその会社で約10年間デザイナーとして、プロデューサーとして活躍する。
でも、まだピースが合わないような違和感が残っていた。
充実すればするほど、その違和感が大きくなっていったのかもしれない。
そんなある日、完成度の高い3D作品を携えた男性が面接に来た。
かなりきっちりと作ってある作品だったけれども「3Dと商業デザインって関係あるの?」というのが第一印象だった。
その男性というのが現在、一緒に仕事をしている水島圭介さんだ。
「彼の3Dスキルの高さや動画に関するノウハウは群を抜いていた」だったけれども、当時の会社組織の中ではそれを有意義に活かす事が出来ない事情もあった。
それでも、水島さんの3Dスキルの高さは捨てがたい。このスキルを活かして、新たなことが出来ないだろうか?
全てのピースがぴったりと噛み合い、ジグソーパズルが完成する予感があった。
2004年秋、中村さんはその答えに人生を賭け、独立を決意した。

3Dで新境地開拓

プレゼン用動画

鉛色の雲に覆われた中、紺青の大海を雄大に突き進む航空母艦。
BGMにはクラッシックの荘厳な重低音。
そして戦闘態勢を整えた戦闘機が鉛色の雲に向かってテイクオフ??。
グラフィックパワー社のスクリーンに映し出されたのは食玩のパッケージデザインのプレゼン用動画だった。
「かっこいいやろ。3Dだとこんなんまで作れる」
と中村さんは自信ありげにニヤリと笑っていた。してやったりな表情だ。
グラフィックパワー社では、デザイン=中村さん、3D関係=水島さんと分担している。グラフィックと3Dという組み合わせはニッチ的だと感じていた中村さんは企業の反応が予想以上によかったので「これはニッチでもなんでもなく、新たな道だ」と感じ取ったと言う。
「3Dや動画を使ってプレゼンすると、実際に手元にない商品が目の前にあるように見えて、イメージもわきやすい。しかも、他部署の人に見せても一目瞭然。だから平面だけでプレゼンするよりも、受注決定までが迅速なんです」
その手法は名だたる競合が相手となった大手企業のプレゼンでも結果を出している。しかも、その3Dは単にプレゼンだけには留まらなかった。
「良いデザインをしても、その商品が売れなきゃ意味がない。今の世の中、店舗の中で最も良い棚を確保することが売れる要素ですので、営業の方にプレゼン用動画を提供して、棚確保のために役立ててもらっています」
ここまで考えているデザイン会社、聞いたことがない。

社名に賭けた思い

中村さん
中村 拓哉さん

ここまで書くと中村さんは3Dに頼り切っていると思われがちだが、決してそうじゃない。
「デザインを考えている時ってドキドキする」から面白い。そのドキドキした思いを込めて作り上げた自分のデザインをどう人に伝えるか、どう理解してもらえるか??デザインに対する熱い思いがあるからこそ3Dという「飛び道具」を使うのだと中村さんは言う。
「ウチの社名にもそういう思いを込めているんですよ」
Graphic Power??なるほど、そういうわけか。

グラフィックパワー社・中村さんよりプレゼン講座のお知らせ

夕方6時以降であれば(中村さんの気分次第ではありますが)、グラフィックパワー社の“あの”プレゼンを体験させてくれるそうです。ぜひ、体感してください!
中村さんより:「メビックに関わるデザイン会社の発展のためなら一肌脱ぎましょう! グラフィックパワー社のノウハウを見て聞いて、刺激とやる気を持ち帰ってください。ただし! 缶ビール数本の差し入れをお忘れなく」

白川 涼一氏

公開日:2006年08月29日(火)
取材・文:(株)黄栞舎 白川 涼一氏