『BIM LABO』でビジネスを作り出す楽しさを知る
河野 誠一氏:彩's FACTORY

河野氏

3DCAD、3DCGによるバイオテクノロジー関連のゲノム構造や建築設計物の画像制作、サイエンス系ウェブサイトの構築、さらには3DCAD・3DCGを制作するソフトのプラグイン開発まで行う彩's FACTORY。今回は代表の河野誠一氏にこれまでの事業の歩みに加え、メビック扇町のPSO(プロデューサー・サポート・オフィス)に入居し、代表として活躍する『BIM LABO』についてもお話をうかがった。

リーマンショックで自分の「強み」を再認識。

彩's FACTORYの河野氏は,2007年12月末までメビック扇町に入居しており、入所当時は三次元の3Dを使ったソフトウエア開発を手掛けていた。
「メビックでは半期に一度メビック側スタッフとの面談があり、そこで事業展開の方向性についても相談していました。Webもシステムもこなすことができていたのですが、メビックスタッフのアドバイスは『Webやシステムの世界には河野さん以上のプロがいる、だから自分の独自性を大切にした方が良い』というものでした。それで自分なりに考えた結果、三次元のCGで勝負しようと決めたんです」

3Dを使った可視化を事業のメインに据えると、それと呼応するかのようにメビックでは、多くの出会いがあった。その中で見事に花開いたのが大学関連の事業だった。
「大学のバイオ関係の研究内容を3DCGを使って可視化したいという依頼でした。例えばゲノム構造を3DCGで製作したり。結果的に3DCGから派生して、研究内容を『見える化』するための紹介DVDやWebサイトなどを作ったりしました」

そして、2007年12月末にメビックを卒業。卒業当初、順風満帆の彩's FACTORYに水を差したのがリーマンショックだった。
「CADのプラグインアプリを1年間かけて作るという仕事を受け、予定を立てていたらリーマンショックが発生。全く自分には関係ないと思っていたのですが、そのCADのベンダーがアメリカの会社で契約がキャンセルになって、1年間の仕事スケジュールが真っ白に。さすがにどうしようかと思いました(笑)」
だが、時を同じくして建築関係の3Dに関わる仕事が舞い込むようになり、空白のスケジュールも埋まっていった。

『卒業』してわかった、メビックの素晴らしさ。


「宇宙天気」CG 作成支援プログラム制作

メビック扇町に入所している時、中の雰囲気はどんな感じだったのだろうか。
「ライバルや競争というわけではありませんが、あの企業が頑張っているから自分も頑張ろう、という気持ちはありましたね」

卒業後、河野氏の周辺はどのように変化したのかたずねると、真っ先に出たのが『刺激が減った』という言葉だった。
「人に会う『刺激』が減りました。特に事務所を借りて一人で作業している時は、モチベーションを上げるのが大変でしたね」
だが、入所している時はそんな『メリット』を実感する機会が少なかった。
「入所している時は当たり前というか、ありがたさを一切感じませんでしたね(笑)。半年に一度の定期面談も『どうやって乗り切るか』しか考えていなかった。今思えば、自分の事業を他人に評価される機会なんて、起業したら基本的にはありませんから……本当は貴重な機会だったと思います」

実は河野氏は、昨年PSOに入居したことで再びメビックを活用する日々を過ごしている。そして、入居するきっかけになったのがBIMというソフトウエアだ。

『BIM LABO』結成はメビックがきっかけ。


『BIM LABO』のメンバー

BIMとは『ビルディング・インフォメーション・モデリング』の略で、建物に関するすべての情報を一つのデータベースで一元管理する考え方。
「まだマイナーな存在ではありますが、建築に関わるすべての情報が詰め込まれていて、携わるすべての工程の人が、同じ3DCGやデータベースを共有しながら建築を進めていくソフトウエアなんです。私は3DCGと建築分野の両方の仕事をやっていたので興味を持っていましたが、仕事の合間に取り組んでいた程度では、現在の状態まで話は大きく膨らまなかったと思います」

大きく膨らんだきっかけ、それこそがメビック扇町から舞い込んだPSO(プロデューサー・サポート・オフィス)の話だった。
「拠点を作れば何かできるだろう、と考えて生まれたのが『BIM LABO』です。まず、カタチを作らないとアウトプットも目に見えてこないと思ったんです」

この組織の目的は、あくまでBIMでビジネスを生み出すことだ。
「ノウハウ共有や情報発信が目的ではありません。『BIM LABO』が目指すのはビジネスに活用するための活動、BIMを使ったビジネスモデルを構築することです」

そんな想いをもって立ち上げた『BIM LABO』だが、2011年に参加した「BUILD LIVE KOBE」というイベントで転機が訪れた。
「48時間以内に設計からプレゼンまで行うといういわゆる仮想コンペ競技で、最初は無理だと思っていましたが、サポートメンバーも含めてチームワークがあれば、想像以上にできると実感しました。ずっとメビックで言われていたネットワークの重要性、力というものを実感しました。また、このイベントをきっかけに講演の依頼が来たり、BIMベンダーとのコラボまで決まりました。少しずつですが『BIM LABO』の活動がビジネスに繋がっています」

協業によって「任せる楽しさ」を知る。

作業中の河野氏

今後は『BIM LABO』の拡大、組織づくりを進めてい期待という河野氏。
「2012年はBIMを活用しながら街の活性化を考えるイベントをやってみたいと思っています」

最後に将来の目標についてたずねた。
「自分が持つ3Dの専門的なプログラミング、可視化の方法を強みとして事業をさらに安定させていきたいですね」

また『BIM LABO』の目標をおうかがいすると、どうビジネスに繋げていくかを具体的にしていきたいという答えが返ってきた。
「BIMには大きな可能性があります。メンバーで力を合わせてネットワークを広げ、情報を共有していきたい。メンバーのみんなと頑張りたいですね」
河野氏自身は代表として企画を立てたり、今後の戦略を考えられるようになってきた。
「以前は全部自分でやらないと、と思っていましたが『BIM LABO』の活動を通じて『任せる楽しさ』を感じられるようになってきました(笑)。こんな経験ができるのも、メンバーとの出会いやメビックのPSOに入居があったから。本当に感謝しています」

公開日:2012年07月11日(水)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏