自社開発サービスで、世の中にインパクトを与えたい!
久田 智之氏 井形 剛士氏:(株)アナザーブレイン


久田氏(左)と井形氏(右)

イベントでリアルタイムに来場者の意見を集約するアナライザシステム『ケータイゴング』をはじめとしたインターネットシステムの企画・開発・運営を行う株式会社アナザーブレイン。今回は代表取締役の久田氏、専務取締役の井形氏に『ケータイゴング』をはじめとした自社サービスについて、メビック扇町入所時代の話、さらには将来についてお話をうかがった。

メビック入所時代から進化した『ケータイゴング』

株式会社アナザーブレインは、2006年4月までメビック扇町のインキュベーションオフィスに入所しており、入所当時は受託開発の仕事をしながら、自社商品の開発に取り組んでいた。
「Googleの20%ルールじゃないけど、会社の中にある2割ぐらいの力で新しい自社商品を生み出せないかと模索していました。入所当時は、完全に商品開発期間でしたね」(久田氏)

間もなく『ケータイゴング』が完成。井形氏はメビック扇町に入居していたからこそ完成させることができたと語る。
「堂野所長に色々な人を紹介してもらって訪問し、意見をいただきながらブラッシュアップを重ねていきました」(井形氏)
当時、法人向けに発売を開始した『ケータイゴング』は、イベント企画会社や広告代理店、大学などに好評を博していた。だが、販売を開始した頃の携帯電話は、まだメールや通話がメインのため、マーケットを作り出すこと自体が困難を極めた。だが、モバイル通信の高速化やスマートフォンの普及などが事業に変化を与えた。
「外的環境が変化する中で『ケータイゴング』を個人向けに展開できるかも、と考えるようになりました」(井形氏)

個人向けの展開を決定づけたのは、イベント参加者のひと言だったという。
「とあるイベントで使用中の『ケータイゴング』を見て、壇上にいたある有名人の方が『結婚式(の二次会)で、このサービス面白いよね』と言ってくださったんです。こりゃあ、やるしかないだろうと(笑)」(井形氏)
そうして個人向けのサービスとして販売開始したのが『ケータイゴング for Wedding』だ。ウエディング市場にターゲットを絞り込み、機能も20問以下の2〜4択クイズに絞り込んで34,800円(税込)で販売を開始。現在も好調な売れ行きを記録しているという。

受託開発をやめて、自社開発サービス一本で勝負!

ケータイゴング for Wedding

現在のアナザーブレインは受託開発の受注を中止し、受託案件ゼロで『ケータイゴング』をはじめとした自社開発商品の企画・開発・販売に会社の資源を集中している。
「受託開発を再び受ける可能性は皆無ではありません。でも、起業した時もシステム開発がやりたかったんじゃなくて、何かを作って売りたかった。最初はその“売り物”が受託開発をする能力だっただけなんですよ。でも本当の理由は、僕が単に受託開発に飽きただけかも……(笑)」(久田氏)

受託開発で他社が儲かる仕組みを構築するよりも、新しい自社サービスの開発や『ケータイゴング』の進化・販売に注力することを選択したアナザーブレイン。なぜなら、自社開発商品に大いなる可能性を感じていて、何より自分たちが楽しいから、と2人は語る。
「IT系の仕事をしている人はみんな自分が考えたアイディアを形にできる。でも見せ方が下手だから売れないんじゃないかなぁ。だって、私たちも同じ思いをしてきたから。だから、新しいのモノやコトに面白がって参加してくれる優秀なデザイナーと出会いたいといつも思っていますね」(久田氏)

卒業後もメビックのつながりを事業に活かす!

メビック扇町から卒業後、目に見える変化はあったのだろうか。
「勉強会や交流会への参加は確実に減りました。外との接点というかチャレンジ中の人と接する機会が減って、刺激不足になっているかもしれませんね」(久田氏)
「普通のビルなら当たり前なんでしょうが、お隣さんとのコミュニケーションが無いですね。メビックに入所していた頃は、ひとつ下の階のあの会社がやってるアレスゲェなぁ、という話をよくしていましたし、別の階に入所している人の顔もだいたい見えていたんですよね。当時は全く気づいていませんでしたが、今思えば貴重な環境でした」(井形氏)

さらに卒業後、メビックがきっかけとなってビジネスに発展した話を教えてくれた。
「メビック大忘年会の時に、偶然隣に座ったナレーターの畑中ふうさんと仲良くなって、『ケータイゴング』のナレーションが必要になった時にお願いしました。『ケータイゴング for Wedding』に畑中ふうさんの声が入っているのは、メビックのご縁のおかげです(笑)」(井形氏)

『あったらいいな』をカタチにし続ける

忘れも

最後にアナザーブレインの未来について聞くと、起業時から忘れずに持ち続けている想い『面白いものを作って世の中にインパクトを与えたい』を具現化し続けたいという。
「もっともっと『ケータイゴング』を普及させたいですね。もっと高いポテンシャルを発揮できると思っています」(久田氏)

新しいサービスもどんどん作っていくつもりだ。
「今後も様々なサービスをリリースしていきます。こんなサービスが世の中にあればいいのにと思い立ったら、すぐに作っていきたいですね」(井形氏)

そんな中で生まれたサービスのひとつが『忘れも』だ。
「忘れ物の多くが、実は警察に届けられずにお店で保管されているそうです。実はこれが日本独特の素晴らしい文化で、外国には忘れ物という概念がありません。忘れたら誰かが持ち去るので(笑)。そこで、忘れ物をシェアすることで、飲んだお店を忘れても、忘れたお店がわからなくても見つけられるサービス『忘れも』を作りました。これは世界中の忘れ物を持ち主の元に返すプロジェクトです。今はまだ収益がない開発段階ですが、こんなサービスをたくさん作って、いずれは収益に結びつけていきたいですね」(井形氏)

最後の久田氏のひと言が印象的だった。
「作ったモノを使ってもらうコトが一番! 『忘れも』をたくさんのお店で使ってもらって、日本中、世界中の忘れ物が減ったら、僕らは最高に楽しい!」

公開日:2012年06月28日(木)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏