常に“人間対人間”でコミュニケーションする。
武田 憲昭氏・吉澤 生馬氏:PROCESS5 DESIGN

武田氏と吉澤氏

店舗や住宅、旅館などの空間デザインをはじめ、建築やインテリアの設計、さらには付随するグラフィックデザインまで手掛けるPROCESS5 DESIGN。空間設計をブランディングと捉え、時にはロゴマークの提案から始めることもあるそうだ。また、武田氏と吉澤氏の両者が代表の肩書きを持つ二人代表体制の事務所でもある。今回は二人が一緒に仕事を始めたきっかけや、空間をデザインする過程で大切にしていることなどについてお話をうかがった。

未来を決めたのは、二人で挑戦したコンペ。


学生時代
表彰状

PROCESS5 DESIGNの代表である武田氏と吉澤氏が出会ったのは大学で、同じ建築学科の仲の良いグループだった。
「学科内のコースも同じで、入学当初から一緒にいる時間が長かったですね。当時から気のあう仲間が集まってコンペに挑戦していました。その時のメンバーが5人だったので、コンペなどで使うユニット名を『PROCESS5』としたんです。それ以来ずっとこの名前を使っていて、私が独立する時にも自然に今の名前に決めました」と武田氏。
「当時はまだ学生だったので、我々はまだ学ぶプロセスにいること、何事も話し合って決めるという意味を込めて、軽いノリで決めたんです(笑)」と吉澤氏。

卒業後、武田氏は横浜、吉澤氏は京都の設計事務所に就職したが、二人は密に連絡を取り合っていた。そんな時、二人でコンペに参加することに。当時のことを武田氏に振り返ってもらった。
「『つくば田園都市コンセプト住宅実施設計』のコンペに参加しようと声をかけて、面白そうだからと手を挙げたのが我々二人だけで。そこで、横浜と京都で仕事中にチャットシステムで議論をして、夜は電話で打ち合わせ。とにかく毎日睡眠不足でしたけど楽しかった。その甲斐もあって結果は2位。手応えを感じました」

一人でできる者同士が一緒にやるから二人代表。

二人の独立&合流にあたり、武田氏は“大学卒業後3年間”という時間を自分に課していたという。
「私は入社前の面接で3年で独立することを約束しました。3年ですべてを吸収するぐらいじゃないと、この業界では生き残れないと思っていたんです」
吉澤氏は、武田氏が独立した2年後に退社して合流した。
「武田が先に独立したので、僕は働きながらそれを手伝っていました。やっぱり、独立するなら二人でやる方が話し合いもできるし、なにより絶対に楽しいと思っていましたね」
先に独立した武田氏は、吉澤氏と一緒にやることを楽しみにしながらも、一人でやっていく気持ちを忘れることなく仕事をしていたという。
「弱い者が集まるのではなく、一人でできる者同士、強い者同士がタッグを組んで良い仕事をしようというスタンスでなければ生き残れませんから」

現在、PROCESS5 DESIGNは武田氏と吉澤氏の二人代表の体制。二人代表体制は何が違うのか武田氏にたずねた。
「代表として二人がメッセージを発することで、代表としてのメッセージが数、力、ともに2倍になり、PROCESS5 DESIGNが伝えたいことをより伝えられると考えての二人代表なんですよ」

すべてはコンセプト、その根源はコミュニケーション。


川湯温泉冨士屋旅館

デザインする上で最も大切にしていることを吉澤氏にたずねた。
「やはりコンセプトですね。図面も現場もコンセプトが全ての判断基準になります。何となくカッコイイ、カワイイといった評価でお金をいただくのは間違い。きちんと論理的に説明できるコンセプトを構築することがプロの仕事だと思っています。だから、コンセプトを決めるまでお客様とたくさん話をしますし、スタッフ同士でも多くの時間を割いてアイディアを練ります。これが我々の生命線になりますから」

特に、お客様とのコミュニケーションを大切にしている。こちらについては武田氏が語ってくれた。
「お客様と話す時は『我々を先生と呼ばないで』とお願いします。“人間対人間”として話したい。なぜなら“先生”の立場では、お客様の本音が聞けなってしまう。お客様と真っ白な状態で対峙するためにも“人間対人間”の関係を大切にしています」
吉澤氏は、
「常にお客様のことを知りたいという姿勢を大切にしています。知りたい気持ちを姿勢で表現すれば、お客様も思わず普段は話さないような想いの部分も語ってもらえます。『思わず喋りすぎました』なんて言われるとシメたものですよ(笑)」

モノづくりの喜びを感じ、コンセプトの向こう側を目指す。

武田氏と吉澤氏

お客様と真剣かつ真摯に向き合うPROCESS5 DESIGNの今後の方向性について、武田氏におうかがいした。
「スタッフにはプロジェクト完成の喜びを数多く感じてもらって、お客様と仲良くなるような関係を築いて欲しいですね。お客様と仲良くなれたお店や空間は、やはり幸せな空間になるんですよ。これからもコツコツと実績を積み上げていきたいですね」

吉澤氏は、さらに未来のROCESS5 DESIGNの姿を想像しているようだ。
「ROCESS5 DESIGNはコンセプトを最重視して活動しています。コンセプトを語れないデザインを見た時、すごく歯がゆい気分になるほどです(笑)。でも、私はコンセプトという言葉では語りきれない何かを持ったデザインが存在すると思っているんです。語り尽くしても語りきれない何か……コンセプトの向こう側と言うんでしょうか。もしかしたらそれが個性、時代を超えて語り継がれる要素なのかもしれません。矛盾するかもしれませんが、そういったものを一度は生み出してみたいですね」

公開日:2011年08月16日(火)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:株式会社ライフサイズ 南 啓史氏