目指すは、「アート&サイエンス」
横山 智子氏:(株)エムツーインターフェイス研究所

横山氏

株式会社エムツーインターフェイス研究所は、5年前、あるデザイン会社のWEBデザイン部門を引き継ぐ形でスタートした。以来、医薬品業界から食品、不動産、福祉施設など幅広い分野でWEBデザインを手掛けている。代表取締役の横山智子氏に話を伺った。

「丸投げ歓迎」のデザイン会社

M2(株式会社エムツーインターフェイス研究所)の強みは、「フラッシュ制作をはじめ技術的に高度なものを提供できること」そして「企画を含めた‘丸投げ’に対応できること」と横山氏。仕事が入るとまずはデザインよりもレポートを書く。業界のこと、クライアントのことを徹底的に調べて理解を深めることが発想を広げ、説得力のある企画とよりいいデザインを生み出すと言う。「新しい仕事の度に視野が広がるのが楽しいですね。そういう意味では丸投げで依頼される方が楽しめます」と横山氏。代理店やクライアントからの信頼が厚く、企画段階からどっぷり浸かる仕事が多い。

「牛の解剖経験アリ」のデザイナー

横山氏

ところで、横山氏は農学部出身。修士課程で微生物や免疫の研究をしており、「将来は製薬会社か食品会社の研究者になるものと思っていた」が、在学中に観たNHKの番組で「サイエンス映像」に出会ってしまう。

中学、高校と美術部でずっと絵を描いていたこともあり、もともと持っていたクリエイティブ魂に火が付いた。「将来は科学映像を作る仕事がしたい!」と、大学を辞めて専門学校へ。「最初はデザイナーになりたい、というより科学映像がやりたくて。科学映像の講義が受けられる学校を探して入学を決めたんです」。
生物学研究から一転してデザインの世界へ。全く畑違いの分野ではあるが、意外とその経歴が仕事に活かされることも。「バイオ系企業のホームページ制作の際に、担当者から『さっぱり分からないから直接話を聞いてほしい』と呼ばれたり。デザイナーで理系出身、しかも生物系の経験がある人間なんてほとんどいないので、クライアントと話しが盛り上がることも多いんですよ」と横山氏。「そして、理系に強いデザイン会社であることは、今後M2の大きな特長としてのばしていきたいと考えているんです」。
確かに、理系の知識を持ったデザイン会社なら、クライアントのストレスや説明にかかる手間が軽減するだけでなく、一般の消費者にとって難しい内容も楽しく分かりやすく表現できるだろう。目指すは「ART & SCIENCE(アート・アンド・サイエンス)」だ。武田薬品のホームページ制作をプレゼンで勝ち取ったことは、その大きな第一歩となった。
この春、生物系大学出身のデザイナーを新たに増員し、医療関係や大学、研究所、大学発のベンチャー企業などへの顧客開拓を視野に入れて体制を整えた。「ニーズは少ないかも知れませんが、理系のデザインをしてくれる人がここにいる。理系の小難しい案件はM2に投げてみよう。そう思ってもらえるような存在になれればいいですね」。

「人と人とをつなげる」会社へ

事務所風景

クライアントとユーザーをつなげる。クリエイター同士をつなげる。社内で人を育てて人材を将来につなげる。そして、その「つながりの場」でありたいというのが会社設立当初からの想いだと言う。「エムツーインターフェイス研究所の‘M2(エムツー)’は、場所を表す平米(m²)から来ているんです。そして、‘インターフェイス’は、2つのものの間を媒介するという意味。‘つながりを生む場所’という意味でも、ここで月1回程度、社外のクリエイターも含めたメンバーでデザインの勉強会をしています」。
そして、横山氏は最後に会社の将来についてこう付け加えた。「私個人的には、M2は女の子が勤めやすい会社にしたいと思っています。結婚や妊娠、出産の度に出たり入ったりできるような環境を整えたい。クリエイティブは在宅でもできるし、女性がずっと続けられる仕事だと思うんです」。
制作技術と企画力に優れたWEBデザイン会社が、理系の専門知識を武器にさらなる進化を遂げようとしている。でも、その根底に変わらずあるのは、クライアントや社員、同業者といった人とのつながりを何よりも大切にする設立当初からの真摯な姿勢なのだと思った。

公開日:2010年11月16日(火)
取材・文:わかはら 真理子氏
取材班:株式会社ファイコム 浅野 由裕氏