売上に直結するパッケージだからこそ、ワンストップ体制で。
孝橋 悦達氏:(株)明成孝橋美術

孝橋氏

天王寺区・清水谷にある明成孝橋美術は、美容系商品や健康食品のパッケージを中心に、POPやポスターなどの販促物も含めた企画デザインや印刷加工を行っている。現在、3代目となる孝橋氏は、父である社長をサポートしながら、パッケージの企画デザインから印刷加工までをワンストップで行う体制を構築し、日々スタッフとともに“売れるパッケージ”を追求し続けている。

いち早くコスト重視から付加価値重視へ。

明成孝橋美術が扱うのは、主として美容系商品や健康食品関連の商品パッケージ。昔はラベル印刷などがメインだったが、少しずつ付加価値の高いパッケージにシフトしていったという。
「美容系や健康食品の商品パッケージの印刷は、高級感が求められることが多く付加価値が高い。それでも数年前までは、高級な紙を使ってもシンプルな印刷で済ますなど、限界までコストを落としたデザインが主流でした。クライアントからの要望がコストを下げつつも上品さはキープ、というものばかりでしたから」

だが、そういった商品ばかりが並ぶと、パッケージ会社の売上が下がるのはもちろんだが、消費者も同じような商品ばかりに見えて差別化できなくなり、商品の売上は下がってしまった。
「最近のパッケージは、“ひたすらコスト削減”から“高級に見せたい”と“コストを抑えたい”のバランスを重視するようになりました。明成孝橋美術では、この絶妙なバランスの上に成り立つ高付加価値なパッケージを狙っています」

顧客ニーズから生まれたワンストップ体制。

取材風景

明成孝橋美術ではデザイナーが4名所属し、パッケージの企画デザインから印刷加工に至るまでワンストップで対応する体制を構築している。
「クライアントのニーズを追いかけた結果、このようなワンストップの体制になりました。もともとは印刷だけでしたが、クライアントのニーズがデザインの領域に広がっていき、その要望に応えた結果なんです」

外部のデザイナーという選択肢ももちろん試したという。
「外部のデザイナーにお願いすると、デザイン的な部分で要望に応えられても、品質・納期・価格の部分でクライアントの要望に応えられない事も多い。具体的には、クライアントや印刷現場とのコミュニケーションがうまくいかず、その上時間的な制約もあってトータル・クオリティを保つ事が難しかった」

その他、社内にデザイナーを配置するメリットとして、やはりノウハウの蓄積という面も大きいという。
「社内デザイナーはパッケージデザインのみならず、写真やコピーなどデザイン周辺のあらゆる仕事を担当します。当然、すべての面でプロになるのは難しい事です。ただ、社内機械の知識や過去の経験を生かして、さらに良いパッケージを生み出すという点では、会社にとってもデザイナーにとってもメリットは大きいですね」

商品の売れ行きが自社収益にも直結するパッケージの世界。

工場

パッケージ印刷の醍醐味を孝橋氏にたずねた。
「やはり、売り上げに直結しているという点でしょうか。その商品の売り上げはもちろん、私たちの売り上げにも直結します。商品が売れれば、当然箱の出荷数量も増えますからわかります。売れているか売れていないか、成果がダイレクトに見えるんです。これは、広告媒体やポスターなどの販促物や媒体制作にはない、パッケージならではの醍醐味かもしれません」

まさに一蓮托生と言えるかもしれない。パッケージは、成果が売上という至ってシンプルな数字で提示されるのだ。
「昔は高効率を追求して、デザインデータを受け取り、箱の印刷・加工だけを受注しようとしていました。
でも、『高効率で出来る仕事=単価の安い仕事』なんです。これだけモノが売れない時代だとそれでは通用しない。なにせ、私たちも商品が売れないとパッケージを作れませんから。だったらクライアントと一緒にモノづくりをする気持ちでかからないと。結果的に、一から真剣に深いところまで掘り下げて考え、簡単にはマネできない高付加価値なパッケージを作り込んでいくという仕事の形が一番良いいう考えに至りました」

“確実に売れる”パッケージデザインを追求する。

取材風景

孝橋氏は、自社のデザイナーや印刷スタッフに「とにかく面白いことをやってやろう」という気持ちを持って欲しいという。明成孝橋美術が担当する仕事は、パッケージデザインのみならず、その商品の販促物のデザインも含めた制作物をデザインし、その商品の世界観を形成する仕事になることが多い。
「自分が考えたイメージが世に出て、商品が売れてお金をいただける、これって幸せなことだと思うんです。
それだけに、もっと面白がって、チャレンジする気持ちを常に持ってパッケージデザインに携わっていただければ最高ですね」

これからの明成孝橋美術は、どんな方向性を目指すのだろうか。
「数は少なくても良いから、買いたい人やその価値を認めていただける人に、確実に売れるパッケージを生み出していきたいですね」

もちろん“確実に売れる”ことをパッケージだけで完結することは難しい。しかし、商品が持つ付加価値とそれに見合ったパッケージビジュアルを構築することに、しっかりと携われるような機会をもっと増やしたいという。
「従来の受注産業目線だと、箱ができたら良い、たくさんパッケージ印刷の仕事があれば良かった。でも、これからの時代は、いかにユーザー目線になるか、いかにクライアント目線になるか、当たり前の事ですが大変重要だと思っています。」

公開日:2010年11月01日(月)
取材・文:株式会社ショートカプチーノ 中 直照氏
取材班:有限会社TTDESIGN 高山 理氏