映像を、国境や時代を越えるコミュニケーションの手段にしていきたい。
薮本 直樹氏:(株)サムシングファン

薮本氏

サムシングファンは、中央区淡路町のオフィスビルの一室にある。今回のインタビューでは、ボイスタレントを経て、20代で映像制作会社を起業した薮本氏に、映像表現のこだわりや創業から現在にいたるまでの経緯をお伺いした。

きっかけは生駒ビルジングでの出会い。

薮本氏

しゃべることが好き。つくることも好き。両方満たされるのが映像の営業だった。
「最初の大きな仕事の依頼は大手企業からの印刷物の仕事だったんです。印刷できる?と聞かれて、『できます』と即答しちゃったんです」。
しかし印刷知識はゼロ。そこで取った行動は印刷会社への訪問だった。印刷や制作の知識を教えてほしい、とお願いし、指導してくれた印刷会社に協力してもらい、見事、納品することができた。

そんなふうに、創業1年目は試行錯誤の連続だった。箕面で創業したものの、大阪市内に出て来ないと業績が向上しないと判断し、辿り着いたのは、有形文化財の生駒ビルジング。年間でかかる家賃は手持ち資金を超えていた。
「さすがに無理だと思って担当者に断ったんですが、生駒ビルジングの責任者が出てこられたんです。20代で、私と同世代の方でした。『応援したい、どういう条件だったら入りますか』と言ってくださって。1年契約がネックだったので、3ヶ月契約でお願いしました。結果的にそこに入ったんですが、その後もその方が私のターニングポイントに必ず登場します。お会いする度にもっとガンガンいかないとダメですよ、とか利益率にこだわらないとダメですよと叱ってくださるんです(笑)」。

会社を成長させるために意識的に取り組んできたこと。

撮影風景

会社が成長してきたのは、「人と会う目的を明確にしてきたから」だと語る。

「例えば、仕事ください!とか、紹介できそうな会社があります!などあまりオブラートに包まずに言いますね。そもそも何の為にお会いしてたんでしたっけ、って常に考えるようにしています。今、相手の得になる商談だと思っても半年後にもまったく逆になる可能性もある。お会いできる人の数は限られているので、自分だけのメリットではなくその場の人全体のメリットを考えています」。

他社と取り組んできたプロジェクト。

IT飲み会

他社と協力した取り組みがIT飲み会だ。
「僕自身まわりにIT系の業務に携わっている友人が多い。彼らにメリットを提供できる方法はないかな、と考えたときに、売り上げをあげるための場をつくっていこうと考えたんです。これをはじめたことで、いっしょに開催させてもらっているEC studioさんのノウハウ的なところなど副次的にいろいろ学ぶことができたと思います」。

逆境からつかんだもの。

この7年間で大失敗がひとつある。2008年に東京に事務所を出したときのこと。
「ある会社に騙されたんですよ。450万円の損。売掛金が全部取り戻せなかった。高い授業料ではありました。本来しっかりとした目的意識があるとぶれなかったはずです。社員に何がやりたいのか聴き、目先のことにフラフラしてしまった」。

取材風景

経営したくない、と思ったこともあった。
「正直めちゃくちゃ凹みました。子供も生まれたのに会う事ができない。そのまま辞めるか、経営する理由ともう一度見つめあうか。やるしかないと思いました」。

そして行ったのが全員パーティー。社員だけでなく社員のご両親や家族も集めて、自分自身の思い、夢を語った。逆境があったからこそ、目標が強固なものになっていた。

ほかにも映像品質向上委員会やビジョン会議など、スタッフ全員で会社の方向性を考えることに積極的に取り組んでいる。自分がつくりたいからのみでつくっているものには経済性がない。映像のクオリティが高いことだけが、お客様が求めていることではない。お客様がもとめる品質とは?を常に考えている。

「映像を使うことにはずっとこだわっていきたいんです。言葉は最強だと思うけれど弱点がある。例えば時代を越えない、国を越えない。映像表現はある意味それらを越えていく手段だと思うんです。映像を、国境や時代を越えるようなコミュニケーションの手段として提案していきたいですね」。

公開日:2010年09月01日(水)
取材・文:狩野哲也事務所 狩野 哲也氏
取材班:株式会社PRリンク 神崎 英徳氏