完成形のカタチにとことんこだわるものづくり
中村 拓哉氏:グラフィックパワー(株)

中村氏

前回取材に協力いただいた時は、独立されて2年ほどの頃でした。それから早3年。グラフィックパワー社はどのように変化し成長されたのでしょうか。
3DCGだけにとどまらず、ありとあらゆるコミュニケーションデザインを手掛ける中村さん。今回は仕事へのこだわりや今後の展望などといった、中村さんの野望について取材させていただきました。

中村流、仕事の広げ方

グラフィックデザインの分野だけでなく、3Dを使用したあらゆるコミュニケーションデザインの分野で幅広く活躍されている中村さん。
この不況真っ只中の大阪で、「最近ものすごく忙しいです。」と羨ましい愚痴をもらされます。
グラフィックデザイナー、プロデューサーとして経験を積んだ後、30歳後半で独立。
それまで積み重ねた経験が地盤となって独立したために、仕事のスタンスや方向性は、今も創業時と変わらないそうです。
3年前に取材させていただいた時から比べると、すごく仕事の幅が広がってらっしゃるようですが、秘訣は?

「これまでに関わった企業さんに認められたことと、うちにはパフォーマンスしやすい材料がたくさんあるのです。広く知られるよりは、一社一社と深く密に繋がっていく。そうする事で、社内の他部署からも仕事を頼まれるようになりました。一つの仕事のクオリティーにこだわり、信頼を勝ちとることで、次の仕事にも繋がっていきます。」

グラフィックのプロとしての3Dへのこだわり

もともとグラフィックに携わってきた方の作品は、音にしても映像にしても、[無いもの]という設定でやっているため、割と平面的にできあがることが多い。ところが、中村さんが作られるものは、すごく立体的です。
グラフィックの二次元的な手法だけではなく、世の中の使えるものを全て使い、広角的に五感を刺激する……といった印象を受けます。たかが一枚のショット。されど、その先にまるでバックグラウンドがあるかのような、背景にストーリーが見えてくるのです。

「3Dを作る人はいっぱいいるけど、どこまでこだわりをもって完成とするかですね。優秀なCGソフトがいっぱい出て、今はデジタルで誰でも作ることができる。でも、完成形の形が途中でとまっている気がするんです。」

ソフトのチカラだけに頼りすぎたありふれたCG。それはただ単にソフトが賢いだけで、人の心を動かすまでの力は持ち得ないということでしょうか?
そのため、中村さんは3Dの技術に頼りきらず、その後のレタッチ作業にとことんこだわります。そうした結果、映画の一部分をきりぬいてきたかのような厚みのある映像となるのです。これが中村さんのこだわるものづくりです。

3D作品

クライアントとの関係づくり

「映像って結局、最初のつかみだけだけど、後々そのパフォーマンスがいろんな意味で生きてくるんです。」とおっしゃる中村氏。インパクトが最大の武器である映像の世界。パフォーマンスツールを作っておられるだけに、プレゼンの仕方や、営業のかけ方も独特です。
新規の営業ってどんなやり方されているのでしょうか?

「まず、自信のあるプレゼン資料を用意するんです。そして狙っている会社に連絡して、どのランクの人でもいいからおもいっきりプレゼンをする。すると、今度はその会社から電話がかかってくるんです。『すいません。もう一度さっきのプレゼンやってくれないですか?』って。そう言われたら僕の勝ちですね。なぜなら、その人が自分の上司に僕のプレゼンを見てもらいたいと言う事ですから。」

すごい会社がきたぞ!!と思わすのが最大の秘訣。
企業側も今までに様々なデザイン会社と付き合ってきて、多々不満もあるでしょう。新しいところをつねに探しているのです。

「なによりも、僕自身にクライアントさんが興味をもってくれるかどうかですね。」

この人と長年付き合っていきたいな、と思わせる信頼性が一番重要だと考えておられます。

3D作品

挑戦……そして野望

今後のビジョンや、挑戦したいことは?との問いに

「クリエイティブ業界に限った事ではないですが、国内には優れた技術をもった人材がごまんといます。また、趣味の一貫でやっている方も多くいるのです。僕達現場のプロから見たらすばらしい技術なんですけどね……。皆、積極的でないのでアプローチできていないだけ。趣味であれだけのパワーがあるのなら、本気でやったらもっとすごいんじゃないかなって。」

そんな人達を集めて何かやりたい。とおっしゃる中村氏。確かに、CGに限らず、もっている技術を生かして就職している人は意外に少ないものです。相応にコミュニケーションが苦手だったり、きっかけが掴めずにいたりします。

「そういうとこに、親分肌でリードしていくと、意外とついてきてくれたりする。言いやすい年齢だったりしますしね!」

そのために現在、分野や年齢こだわらずに様々な人との接点を増やしておられるんだとか。
また、グラフィックの分野から、音と映像とCGを駆使したパフォーマンスツールの世界に入り、新しいスポンサーにもスムーズに営業をかけることができた中村氏。この経験を元に、今までと違うデザインの切り口でやっていきたい!そして、今までにはないものをつくりたい!!と意気込まれておられます。

中村氏の中で、ビジョンはもう固まっておられる様子。あとは自らの道を突き進むのみといった印象を受けました。今後のグラフィックパワー株式会社の動向に、目が離せません!

3D作品

公開日:2009年03月03日(火)
取材・文:株式会社ライフサイズ 東 恭子氏
取材班:キネトグラフ社 北 直旺哉氏