ライターの新しい需要を開拓
北村 盛康氏:合同会社 WRITE STAFF

北村氏

メビック扇町のすぐ近く、野崎公園を臨むビルに「WRITE STAFF」という会社はあった。主な業務は、企業の広報や宣伝に関するコンサルティングや、広報ツールの企画制作、「関西ライター名鑑」の発行。そこで代表を務める、北村さんにお話を伺った。

シナリオライターを目指して

20代の頃はバイト三昧にアメリカ放浪、シナリオライター養成所に通うなど常に動くことをやめなかった北村さん。

「映画が好きだったので、シナリオライターになろうと思って。太秦の撮影所でエキストラのバイトをしながら、俳優の卵みたいな人たちに色んな話を聞いてました。ほかにも、色んなバイトをしましたね。全部で40、いや50種類ぐらいしたと思いますよ。そうやってお金を貯めて、アメリカに行きました。映画=ハリウッドみたいな安易な思いつきだったんですけど(笑)。観光ビザしか持ってなかったので、3カ月経ったら一旦帰国してまた渡米。そんなことを繰り返して、トータルで2年近くアメリカに滞在しました」

その後、東京のシナリオライター養成所に通いながらアルバイトをしていた北村さんは、20代後半で映像製作会社のプロデューサーとして採用された。ところが、これから頑張っていこうかと意気込んだ矢先、体調を崩し関西に戻ってくることに。関西では普通の企業に就職していたが、ひょんなことからライターになった。

北村氏

「2000年ごろに、働いていたベンチャー企業を辞めてライターの求人に応募したんです。やっぱり書く仕事を諦められなくて。ところがその会社がインチキで。まぁ、よくあるパターンなんですけど(笑)、ライターになるための勉強だ、とかいって逆に授業料を取るような会社だったんです。しかも、その会社は教祖的な人がいて、なんかオカルトチックだったんですね。すぐに怪しいとわかって、ほとんどの人はそこで辞めていったんですけど、僕はかなり腹が立ったんでこれをルポにしてやろうと思って。騙されたふりをして、潜入ルポを書き続けたんです。書いてから講談社の『KANSAI 1週間編集部』に持っていきました。今思えば全然ルポタージュなんかとは関係のない媒体なんですけど、当時は何も知らなかったんですよ」

そこで紹介された編集者に、潜入ルポは絶賛されたものの、発行には至らなかった。しかし、その編集者に「ライターにならないか」と誘われ、そのまま編集プロダクションに入社。その後フリーになって独立し、合同会社WRITE STAFFを立ち上げることとなる。

一般企業向けにライターを売り込もう!

関西ライター名鑑

企業や制作会社へのライティングのスタッフィングという、今まで誰もやっていなかったことに着目し、ライターを組織化してその需要に応えるための足がかりとして2005年に「関西ライター名鑑」を発刊。当時はライターの需要が企業にあるとは思われず、ライターや編集者から否定されながらも、「この需要は必ず訪れる」と熱く語るビジネスパートナーとその翌年に法人化する。

「企業の広報誌って、社内でつくるので、自分たちの載せたいひとりよがりな情報を最優先することが多いんですよ。一般消費者に向けるべき内容が全然なくて、データばっかりだったりしてね。それというのも、読者が見えていないからなんです。プロとアマの違いに似てるんですが、アマは自分の書きたい事を書いて、プロは読者のために書きますよね。そういうことだと思うんです。そこで、じゃあ外部のプロに依頼しよう、と思っても企業さんにはネットワークがないですから、探すだけでも一苦労なんですよね。どんな仕事の経験があるのか、どんな文章を書くのか。そういうことを知りたくてもどうやって調べていいか分からない。両者をつなぐ役割を僕らがやろうと思って」

実際発行すると、やはりネットワークが豊富な出版社よりも一般の企業や制作会社からの依頼が多いという。社内で作るときと違い、客観的に作ることによるメリットは多い。消費者目線の判断基準で作れるため、何を載せ何を省くべきなのか、社内の軋轢に関係なく判断できるのだ。徐々に反響が出始めた「関西ライター名鑑」は、2007年からWEBに移行して日々成長を続けている。

会社の成長よりもマーケットの拡大を

WRITE STAFFでは、月一回ライターを集めて、ライターが自分の得意分野を講義する勉強会や、さまざまな編集長を呼んでその雑誌ならではの話をしてもらう講演会を開いている。そんな北村さんが語る、今後の展開とは。

「ある仕事で、某大学主催の作文コンテストの審査員というのがあったんです。文章の良し悪しなんて、その人の感性に左右されるところが大きいんですけど、そこをプロでやろうという話で。ライターを審査員として集め、綿密な打ち合わせをして審査基準を決めて、何万通かの応募を審査しました。これって、今までのライターの需要とは違って新しい市場なんですよ。今後は、会社の成長も大切ですが、広報・営業活動を通して僕たちの企業財産であるライターの新たなマーケットの拡大に尽力していきたいですね」

公開日:2009年02月13日(金)
取材・文:山下 朋子氏
取材班:つくり図案屋 藤井 保氏