コラボレーションは国も言葉も文化も越える
台湾花蓮 翡翠のジュエリー

台湾花蓮 翡翠のジュエリー

迷いを吹き飛ばした
アジアのクリエイティブとの出会い

2018年3月、メビック扇町のスタッフと大阪のデザイナー7名が台湾を訪れ、「台湾デザインセンター(TDC)」をはじめとするいくつかのクリエイティブ関連施設で現地のデザイナーたちと交流を図った。TDCは「台湾のデザインを海外に発信」「国内のデザイナーの海外での活動を促進・支援」「台湾と海外の企業・デザイナーのマッチング」などに取り組む組織で、これまで日本の企業・行政やデザイナーとのさまざまなプロジェクトにも携わってきた。「同じアジアでも文化や産業の違いによって、デザインを考える角度も変わります。日本のデザイナーや企業とコラボすることでお互いの文化を知ることができればという思いから、交流の促進に取り組んでいます」と、産業コンサルティング部門のマネージャー、呉於軒(ビビアン・ウー)さん。滞在中、TDCに加盟しているデザイナーとメビック扇町のメンバーによるデザインプレゼンが実施され、双方のクリエイターにとって大きな刺激となった。そして、このプレゼンに参加していたのがプロダクトデザイナーの南大成さんだ。この時が、今回のコラボのパートナーとなる韓世国(ランス・ハン)さんとの出会いとなった。プレゼン後は次の訪問予定があり、十分に話ができなかったものの、2人は1ヶ月もしないうちに再会を果たすことになる。
そもそも南さんが今回の訪台メンバーに加わったのは、国内のデザイン系展示会への参加が期待する結果に繋がらず​、​自身の表現方法に迷いを感じていた2017年に出展した国際アートフェア「UNKNOWN ASIA」がきっかけだった。「“UNKNOWN ASIA”で出会ったアジア――特に台湾のアーティスト​は、気持ちを感じる方々ばかりだったんです。ただキレイなだけじゃない、感情を表した作品が多く​衝撃を受けました。当時も今も“キモチをカタチにするデザイン”というのが僕のデザインのテーマとしてあるので、彼らの姿に“これで良かったんだ”と背中を押され、​台湾のデザイナーに会って学びたい​と思うようになったんです」

衝撃を受けた「UNKNOWN ASIA」から数ヶ月後、南さんの元にメビック扇町から台湾訪問の話が舞い込む。まさにベストなタイミングで訪れたチャンスに、迷うことなく参加を決めた。

クリエイターと台湾デザインセンターのみなさん
台湾デザインセンターでは企業とデザイナーのマッチングやフリーランスの支援などを行なっている。左よりビビアンさん、ランスさん、南さん、宋同正(デビッド・スン)執行長、林鑫保(オリバー・リン)副執行長、簡思寧(アイシス・ジエン)さん。

デザイナーとして互いに共鳴し
コラボレーションがスタート

一方、台北で十数名のデザイナーを抱えるデザイン事務所を運営しながら自身もデザイナーとして活躍しているランスさんは、海外のさまざまなデザイナーや企業と協働し、現在もグローバルに展開するプロジェクトをいくつも手がけている。プロジェクトは、再生資源を活用したクリエイティブや海外のマーケットを視野にいれたものも多く、南さんは、そういったランスさんのグローバルな視点や社会問題を意識したデザインに魅力を感じたという。「リサイクルマテリアルの使用や環境問題、文化的課題を解決するための本質的なデザインをされているところが素晴らしいと思いました。それと常に視点が海外を向いているところも自分の海外志向と合致したのかもしれません」。またランスさんにとっては、南さんの「細部まで考え抜かれた日本人らしい繊細なデザイン」が印象的だったという。

ランスさんが運営するカフェ
ランスさんは台北市内にあるオフィスの近くで各国のデザイナーの作品が購入できるカフェも運営している。

TDCでのプレゼンの1ヶ月後、南さんが台湾を再訪し、ランスさんと再会。現在進行形のプロジェクトについて意見を交換したり、互いのビジネスやデザイン観について語り合った。このときランスさんが手がけていたのが今回のコラボとなったプロジェクト「花漾好 Hualien Goods」である。台湾屈指の石の産地である花蓮市で、加工の過程で生じる石屑を利用して商品をつくるこのプロジェクトでは、台湾、タイ、中国、韓国などアジアのデザイナーがそれぞれジュエリーをデザインし、各国で販売することで花連の翡翠を海外に広めること、そして本来なら破棄される石屑の再利用を目的としている。「資源を無駄にせず運用して新しいモノを生み出すのはデザイナーの義務」。そんな信念を持つランスさんは、南さんにプロジェクトの日本担当としてデザインを打診。「南さんも同様の考えのデザイナーだと思いましたし、彼のストレートでパワフル、それでいて非常に繊細なデザインも魅力でした。それと何事にも自発的に動く人なので、こういうパートナーがいれば心強いと思ったんです」。南さんの帰国後、ランスさんから南さんに正式に依頼があり、コラボレーションがスタートした。

Taiwan-Dot Design Co., Ltd.のスタッフ
ランスさんの事務所には語学が堪能なデザイナーが多く、海外展開がしやすい環境が整っている。左よりランスさん、陳莞蓓(ペギー・チェン)さん、單禎芝(アリス・シャン)さん。

ロジックと造形美を両立させた
3つのコンセプトと​デザインを提案

デザインに関してランスさんから南さんに対するオーダーは「花蓮の翡翠を使ったネックレスのデザイン」。この一点のみだった。「あまり要求しすぎると南さんのデザインではなくなりますし、あくまでコラボレーションですから、デザインはすべてお任せです」。そんな自由度の高い環境で南さんが提案したのは「カットイン」「幾何学」「体に沿うカタチ」という3つのコンセプトと​デザイン。重視したのは石が一番キレイに見えること、そして今の市場に受け入れられることだ。「お土産物屋さんでよく見る翡翠の勾玉​アクセサリーは角を落としすぎていて、デザイン的に若い人に受け入れられにくいと思ったので、そこを解消することと、翡翠は光によって見え方が変わるところがとてもキレイだったので、石本来の魅力が伝わるデザインを心がけました」。入念な市場調査に基づいた論理的かつ、美しいデザインにランスさんは驚いたという。

デザイン初期提案の一部
南氏が最初に提案した3つのコンセプトと​デザイン初期提案書より一部抜粋。

「ここまでしっかりとしたコンセプトを最初に持ってきてくれるデザイナーさんは珍しいですし、シンプルで簡潔なデザインは市場に合致していると思いました。もともとプロジェクトが始まった時に私たちが直面した課題――つまり、翡翠自体が宗教的なツールとして扱われていることや、アクセサリーにしてもお年寄りだけに好まれる傾向にあったということと、南さんの考えてくれた方向性が完璧に一致していました。そして、もともと独特な性質のある翡翠は複雑な加工や飾りを施さなくても十分に美しいと考えていたところ、石の特性を発揮するデザインがあがってきたので“さすがだな”と思いました」

製品化前の3Dレンダリング
製品化前の3Dレンダリング。ネックレスとピアス、2wayでの使い方を想定。

同じ課題を違う視点でカタチにする。
それがコラボの醍醐味。

2人が出会った2018年3月から2ヶ月後の5月にプロジェクトがスタートし、同年9月には試作品をタイの展示会に出品。現在、商品化に向かって進んでいる。会って間もない、さらに言語も文化も違う相手とのビジネスに不安はなかったのだろうか。「プレゼンの翌月に再会して話した時にはもう信頼関係ができていたと思います。僕は以前、たくさんの異業種交流会に参加して、そこで会った人に騙されたりしたこともありますが、メビック扇町で年間200〜300人に会う中で、人を見る目が養われたかもしれませんね」と南さん。そしてランスさんも言う。「私も騙された経験はありますが、まず信じてみないとなにも始まりませんよね。ただ、南さんに関しては私も数回お会いしてすぐに信頼関係ができていたと感じています」

タイの展示会
石の魅力を引き出すデザインはタイの展示会でも高い評価を受けた。

現在2人は、桃園市文化局のプロジェクトの一環である「大渓区の木工製品と日本の伝統技術のコラボレーション」に取り組んでおり、2人の出会いであるメビック扇町の台湾訪問をきっかけに、他のクリエイターたちによるコラボもすでにはじまりつつある。同じ課題を違う国の視点でカタチにすることで新たなクリエイティブと価値が生まれる―そんなコラボの真髄を体現すべく、メビック扇町では今後も台湾のクリエイティブ界との交流に力を注ぎ、大阪のクリエイターの海外展開を支援していく。

單禎芝(アリス・シャン)さん、南大成さん、韓世国(ランス・ハン)さん、陳莞蓓(ペギー・チェン)さん

繁体字版はこちら
攜手合作跨越國家語言和文化的藩籬「台灣花蓮 翡翠珠寶」(PDF)

HIROMINAMI.DESIGN / 合同会社Arlequin Product

大阪市西区立売堀1-5-2 立売堀bldg. 5F 64
http://hirominami-design.com/

鹿児島県出身。英国でデザインを学び、2011年に独立。「生活者視点のデザイン」を理想に掲げ活動中。

南大成氏

プロダクトデザイナー / 代表社員
南大成氏

Taiwan-Dot Design Co.,Ltd.

台北市大同区甘州街48号
http://www.ddoott.com/

2003年 DotDesign設立、デザインに軸足を置き、オリジナルブランドも展開。様々な素材の組み合わせと量産プロダクトを得意とし、国際ブランドとデザインの異業種コラボにも積極的に参画。より良い未来を願い、循環型経済をテーマに活動。

韓世国(ランス・ハン)氏

プロダクトデザイナー
韓世国(ランス・ハン)氏

財団法人台湾デザインセンター

台北市信義区光復南路133号(松山文創園区内)
http://www.tdc.org.tw/

台湾政府がクリエイティブ産業の推進を図るため、2004年に立ち上げた国家級デザインセンター。

財団法人台湾デザインセンターロゴ

公開日:2019月06月25日(火)
取材・文:和谷尚美氏(N.Plus

メビック扇町コラボレーション事例集 2019『コラボレーションは◯◯◯をこえる』

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詳細:メビック扇町コラボレーション事例集 2019発行『コラボレーションは◯◯◯をこえる』発行

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