コラボレーションは塾広報の定石を超える
塾のブランディングデザイン

若松塾の約束3

メビック扇町が産創館で開催したイベントが出会いのきっかけに

進学塾のウェブサイトといえば、とかく合格者実績や偏差値アップなど、わかりやすい“数字”を前面に打ち出したものが多い。しかし、神戸を中心に展開する「若松塾」のサイトはひと味違う。確かな実績もサイト内に掲載してはいるのだが、アクセスすると、まずトップに出てくるのは塾からのメッセージを伝えるムービーである。
そこに映し出されるのは、子どもたちが友達とはしゃぎながら塾の階段をかけあがる後ろ姿、ホワイトボードを見つめるきらきらした真剣なまなざし、送迎バスに乗る小さな肩越しから見える風景……。授業の臨場感はもちろん、教員が授業中にふと見せるリラックスした笑顔や、街のなにげない空気感までもが、温かなまなざしで捉えられている。
そこに込められているのは、「人を育てる」という開校当時からのメッセージ。さらにコンテンツを見ていくと、「5つの約束」という項目には、「塾の実績のために、子どもを利用しません」などの、はっとするような言葉も並ぶ。この印象的なサイトは、株式会社ビートローグの佐々木哲さんが2017年夏、メビック扇町が大阪産業創造館で開催した「伝わる! 広告宣伝・ブランディング展」に参加したことから誕生した。
若松塾の広報担当者・右近勇人さんは職員の採用や生徒募集にあたり、今後どういう方向に舵を切り、発信を行うべきか、課題を抱えていた。そのため、“ブランディング”というワードが冠されているところに惹かれ、良い出会いがあればと同展示会を訪れたという。

「伝わる! 広告宣伝・ブランディング展」の様子
2017年8月に開催された「伝わる! 広告宣伝・ブランディング展」の様子。両者が出会うきっかけとなった。

「佐々木さんに期待したのは、まさにその“ブランディング”の部分だったんです。弊社は62年という歴史を持つ塾ですが、長くやっているとどうしても考え方が凝り固まってしまう。でも彼はこちらの現状や考えに対して、良いところだけでなく、悪いところも率直に言ってくださったので信頼できると感じました。他業種の経験も豊富でいらっしゃるので、この人なら、新たな風を吹き込んでいただけるのではないかと」(右近さん)
佐々木さんはこれまで、クリエイティブディレクターとして「言葉が持つ力」を通し、多くの企業のメッセージを伝えてきた。単なる「見映え」の問題ではなく、打ち出すべき根幹を考え、課題解決への道筋を提案できる部分が評価され、今回の成果につながったのである。

丁寧なヒアリング&画面構成で“読ませる”サイトが完成

「仕事をはじめるにあたって、まずは現状のサイトで教育理念などをくまなく読ませていただいたのですが、そこですばらしい塾だなと感じたんですね。いわゆる利益偏重ではなく、生徒さんと本当に真摯に向き合っていらっしゃる。ただ、それを理解するには文字の多いサイトをしっかり読み込む必要があったので、この熱い思いを、もっとうまく伝えられたらいいのになと感じました。デザインだけをいくら格好よく整えても、そこに伝えるべき思いがなければ意味がないですから……こういう塾なら、ぜひお役に立ちたいと思いましたね」(佐々木さん)

若松塾のリクルートサイト
ビートローグ×若松塾が初めて手がけた、教員採用のためのリクルートサイト。 ここから信頼関係を積み重ねた。

とはいえ、冒頭であげた若松塾の教育理念を伝える、「若松塾の5つの約束」の部分は容易にはまとまらなかったという。そこで、佐々木さんは理事長にきめ細かなヒアリングを重ね、じっくりと話を聞くことで、新たなエッセンスを抽出。これまでの理念にプラスして新たなワードを落とし込み、「テストで良い点をとるだけで満足ですか?」などの問いを保護者に投げかけるスタイルにするなど、画面構成にも工夫を加えた。一方的に思いを伝えるのではなく、コミュニケーション形式にすることで、ぐっと読ませるサイトに仕上がったのである。
12月末のサイトリニューアル後は入塾テストのウェブ申込が目に見えて増え、右近さんは手応えを感じたという。その後、塾のパンフレットリニューアルにも着手し、ブランドイメージをより強固なものとするとともに、両者は信頼関係を深めていった。

若松塾のサイトリニューアル企画書
若松塾の魅力を保護者へどう発信していくか、コミュニケーション戦略を盛り込んだサイトリニューアル企画書。

塾スタッフによる更新など利便性にも優れたサイト設計に

さらに、コピーワーク以外にもいくつかクリアすべき課題があった。
「若松塾さんには広報ポリシーがあって、フリー素材は基本的に使わず、実際の現場を撮ったものを使うことにこだわられてるんです。そのため、イメージ画像などはすべてオリジナルで撮影することに。ムービーの制作については、子どもたちの個人情報に配慮して、顔が映っていない素材も実はたくさん撮っていたんです。でも、私は現場で見た子どもたちの生き生きした自然な表情や、先生方と生徒さんたちの距離の近さに心から感動したので、ひとまずその思いを仮編集でかたちにしてみようと。そうしたら、右近さんがとても気に入ってくださって」(佐々木さん)

若松塾のパンフレット
紙パンフレットのリニューアルもビートローグが担当。新サイトから資料請求をする保護者も増えているという。

このムービーを通して、若松塾はこれまであまり意識していなかった、自社の魅力を再確認することができたという。そこで、右近さんはぜひこれを世に出したいとスタッフとともに許可取りに奔走し、無事、関係者の理解を得ることができた。
また、ウェブサイトは最新情報の更新も大切な要素である。そのため、逐一外部に依頼しなくても社内で更新できるCMSというシステムを取り入れたことも、両者が特にこだわった点だった。
「若松塾は校舎が神戸、明石、加古川など十数箇所に点在しているのですが、その紹介画面を自社で更新できるようなサイト設計にしていただきました。スマートフォンで手軽に更新できるので、スタッフにも好評です。塾を探す親御さんにとって、わが子が実際に通う校舎がどんなところかというのは重要なポイントなんですね」(右近さん)
新たな時代を生きてゆく子どもたちに、学力だけではなく、人間力やたくましさを身につけてほしい――そんな思いへの共感が軸となって結実した今回のコラボ。そのメッセージは、子どもたちのみならず、教育に関わるスタッフへのエールにつながり、やがて日本の未来をも、明るい方向へ変えていくに違いない。

右近さんと佐々木さん

株式会社聖文館

神戸市須磨区戎町3-1-23
https://www.wa-juku.co.jp/

聖文館が運営する総合進学塾「若松塾」の広報担当。

右近勇人氏

広報
右近勇人氏

株式会社ビートローグ

大阪市西区新町1-10-24 四ツ橋YHビル8F
http://beatlogue.co.jp/

広告代理店勤務を経て2006年にビートローグを設立。クライアントの想いの本質を捉えたモノづくりが信条。

佐々木哲氏

代表 / クリエイティブディレクター
佐々木哲氏

公開日:2019月04月16日(火)
取材・文:野崎泉氏(underson

メビック扇町コラボレーション事例集 2019『コラボレーションは◯◯◯をこえる』

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詳細:メビック扇町コラボレーション事例集 2019発行『コラボレーションは◯◯◯をこえる』発行

メビック扇町コラボ事例集 2019『コラボレーションは◯◯◯をこえる』表紙