メビック発のコラボレーション事例の紹介

既成概念を変える 中古住宅市場活性化の起爆剤
中古住宅市場活性化

キッチン完成

「大家目線」で提案する新しい空室対策

現在、各地で問題になっている空き家問題。平成24年度経営革新計画に承認された、株式会社カラーズバリューの『ルームリファインスクール』は、この問題を解決するローコストリノベーションだ。代表の大熊重之さんの本業は部品塗装業。「通常、賃貸住宅が空くと原状回復といって、汚れたクロスを取り替えたり掃除する程度。それが次の段階となると大掛かりなリノベーションになり、中間がなかった。そこにニーズを見出し、新規事業を考えたんです」。それからは施工費や人件費の節約について試行錯誤し、工務店発注の約5割の価格でリフォームができるノウハウを習得。リフォームがローコストででき、大家の収益を上げるというこの発想は、中古住宅市場活性化の起爆剤になる。
「当初はこのノウハウをスクールで教えて、各地で実施する人を育てる予定だった」という大熊さん。そこで講師を探すためメビック扇町に相談したところ、株式会社ワサビの笹岡周平さんを紹介された。それが5年前のこと。当時の笹岡さんは会社を休眠させ、カフェを運営していた。「ちょうどカフェを閉めようと考えていて。本業はインテリアデザインですが、当時はコンサルのように問題を見つけてアイデアを出す仕事が重なっていた頃。お話を聞くとブランディングや根幹の部分を一緒に考えられる仕事だと直感したので、お受けしたんです」

スクール風景
2011年の夏から始まったスクールで笹岡氏は講師として、カラーコーディネートや装飾としての塗装などを教えた

やってみないと分からない、実践する力が推進力

スクールのコンセプトは「一人多能工」。専門の職人が講師となり、カーペットの貼り方から教え、クロスや塗装まで一人でできるようになることを目指す。「ぼくも最初はスクール生になりました。職人さん、ひいてはこのあと自分で仕事を取りたい人に教えるので、何を端的に伝えればいいのかを知るためには、体験した方が分かりやすいので」(笹岡さん)
当初は「大家業とスクールとは別のもの」と考えていたが、事業を進めていくなかで一本化できることが分かってきた。「スクールは本来、大家さんに喜んでもらうシステム。そこで市場を知るために不動産屋にも講師として来てもらった。この人が古い家を購入して大家業もされており、購入にかかる費用の安さや利回りの良さなど、実体験を交えてお話されたんです」。それを聞いた生徒が「個別に物件を買ってリフォームし、みずから大家になってサービスも提供する」という流れが生まれた。
このあたりから笹岡さんによるブランディングも本格化する。原状回復とリノベーションの中間を“リファイン”と位置付け、スクールだけの展開予定を軌道修正。大家さん向けのサービスとして独立開業・新規事業になるよう体制や内容も改良し、『ルームリファインスクール』として全国に展開。『カラーズバリュー』は2014年に分社化し、そこから実績を重ね、2014年12月には、「古家再生」施工実績300件を達成するまでに成長した。
驚くことに笹岡さんは戸建住宅の大家にもなっている。家を買ってリフォームし、家賃収入を得るというモデルケースを体験しているのだ。「実践の人なんです(笑)。お金をかけずに何ができるかを考える、いい機会になりました」。購入した中古住宅に家具をディスプレイし、竣工写真も自ら撮影、チラシのデザインまで手がけ、みずから営業も。この姿勢には大熊さんも感激。「スクール生の体験だけでなく、実際に家まで買う。こんなデザイナーいないですよ(笑)」

カラーコーディネート用キット
1枚ずつ素材が貼られ、イメージ写真と塗装状態が見れるカラーコーディネート用キット

「無駄なものはつくりたくない」その思想につながる「古家再生」

「2人が出会った頃は、アイデアと全国展開したいという夢だけで、売上も実績もなにもなかった。そんな状態からアイデアに共感してやってくれたことに、本当に感謝しています」(大熊さん)。互いを同志として認め合う2人、成果が出ていない頃から、とにかく会って話すのが楽しかった。デザインの話を始めても、いつしかビジネスや仕組みづくりに話が変わっていた。もともとビジネス思考の持ち主だという笹岡さん。「今ぼくは37歳ですが、40歳までに手がけたいサービスがあり、それを実現して次のステップに行きたいと考えています。それを実践していくのにいいタイミングで出会えたのも大きかった」
「無駄なものをつくりたくない」。それが笹岡氏の確固たるポリシー。スクラップ&ビルドではなく、継続するものをつくらないといけないし、そこに関わりたい。「古家を再生するという大熊さんとの仕事は、そういうぼくの考えと共通点が多く、一緒に進めるうちにやりたいことがどんどん出てきました」
ルームリファインの事業に関して大熊さんは、今ようやく手応えを実感しているという。現在は大阪を拠点に東京支店、そして初のフランチャイズである名古屋への進出も決まった。初めて会った日に、これがしたいあれがしたいと話し、ロードマップを描いた。その多くはゴールに近づいている。今後の予定をたずねると「今すぐ一緒にやるには、何かが足りない」と口を揃える。「でも終わった感覚はない。ぼくが次のフェーズにいった時、もしくは大熊さんが別の路線にいかれたら、またご一緒できる可能性はあります」(笹岡さん)。二人のコラボにエンドマークはまだ打たれていない。時が来るのを心待ちにしている、そんな感じがひしひしと伝わってきた。

笹岡周平氏、大熊重之氏
左から 笹岡周平氏(株式会社ワサビ)、大熊重之氏(株式会社カラーズバリュー 一般社団法人全国古家再生推進協議会)

株式会社ワサビ

笹岡周平氏

https://wasab.jp/

株式会社カラーズバリュー / 一般社団法人全国古家再生推進協議会

大熊重之氏

https://colors-value.com/
https://zenko-kyo.or.jp/

公開:2016年5月2日(月)
取材・文:町田佳子氏
取材班:土井未央氏(株式会社PRリンク

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。