メビック発のコラボレーション事例の紹介

発案したテラリウムの可能性を試したかった女性と新商品を探していた雑貨メーカーの運命的な出会い
ボトルモス・ミニ

イラスト

手のひらにすっぽり収まるキュートなテラリウムを見て、「商品化できる」と即決

「ライフスタイルを楽しく!」をテーマに、雑貨を企画・製造・販売する株式会社シンシア。代表取締役の西森潤氏は、一緒に商品開発をするクリエイターとの出会いを求めて2014年7月に開催された「企業などによるクリエイター募集プレゼンテーション」に参加した。プレゼン後の交流会でのこと。「これ、商品としてどう思われますか?」。ある女性が西森氏に見せてきたのは、本物のコケと動物のフィギュアが入った手のひらサイズのテラリウム「ボトルモス・ミニ」。「見た瞬間、『これはいける』と思いました。アクアリウムが流行っていたし、何より新鮮味があった」。その女性とは、花や植物を使った商業施設のディスプレイなどを手がけるフラワーアンドグリーンプランニングの坂本祐子氏。「昨年、弊社が10周年記念を迎え、お客様に贈るノベルティグッズを…と作ったのが「ボトルモス・ミニ」です。プレゼン当日にお渡しするため、たまたま持って来ていて」。じつはその日、シンシアとは別の会社のプレゼンを聞きに来ていたという坂本氏。しかし、西森氏のプレゼンに「ボトルモス・ミニ」の可能性を感じた。「すぐ商品になりますよ」。西森氏のひと言で、一気にプロジェクトが始動。なんと2ヵ月というスピードで商品販売にこぎつけた。

ボトルモス・ミニ
生きた植物を密封されたガラス瓶で楽しむインテリアグリーン「ボトルモス・ミニ」。980円というお手頃価格で販売。「最初はトライアルということも含め、価格を押さえたかったんです」と坂本氏。現在は販売終了。

西森氏がひと目ぼれした「ボトルモス・ミニ」は、坂本氏の日常から生まれたもの。「スタッフ同士で『植物の世話ってすごく大変だよね』と話すことがあって、水やりのいらないインテリアグリーンだったら忙しい人でも楽しんでもらえるのでは、と」。チーフプランナーの鈴木氏がオフィスで育てていたコケが役立った。「コケの中でもヤマゴケは環境への高い耐性があることも分かっていたし、何より国内の雑貨店を探しても生きた植物を使ったテラリウムがなかった。だからこそ一度作ってみたかったんです」。

販売直後から注文殺到
オフィスの一角がコケのラボに

何もかも順調に進んだものの、やはり壁はあった。そのひとつが配送の問題。「販売店に到着するまでに、揺れた時に土が崩れないようにするにはどうすればいいか、改良するのに一番時間がかかりました。僕らも植物雑貨を扱うのは初めてで、何か問題があるたび坂本さんに相談しました」と西森氏。かたや坂本氏も、「植物の配送では天地がひっくり返るなんてありえないこと。でも、雑貨だと天地がひっくり返ることもあるんだ、とショックで(笑)。それぐらい、我々にとって初めてのことだらけでした」。テスト配送で衝撃に耐えきれず中身がバラバラになって返って来るたび改良を重ね、試行錯誤のすえ接着剤を配合した土を使用することでクリアした。

植物雑貨
「新商品は、『ボトルモス・ミニ』で得たノウハウをベースにしながらも、まったく違うコンセプトで展開する予定です」と西森氏と坂本氏。本物のコケを薬品加工したものを使い、小さな瓶の中でまた新たな世界観を表現する。

さまざまな壁をこまめなやり取りで乗り越え、販売にこぎつけた「ボトルモス・ミニ」は、数千単位で注文が舞い込む大ヒット商品に。「生産が追い付かず、オフィスのひと部屋がコケ専用のラボになるぐらい、スタッフがコケにかかりきりになりました(笑)」

「ボトルモス・ミニ」の可能性を試したかった坂本氏と、新商品を探し求めていたシンシア。「雑貨の世界は競合他社とどう差別化するかがポイントです。植物雑貨を開発するとき、坂本さんに相談できるのはすごく心強い」と西森氏。坂本氏もこう話す。「テラリウムのディスプレイのご依頼をいただく際に、今回のノウハウがすごく役に立っています」

「ボトルモス・ミニ」の成功を契機に、現在はまた違ったアプローチの新しい植物雑貨を開発中。最強タッグの第二幕は始まったばかりだ。

鈴木祥子氏、坂本氏、西森氏、服部俊幸氏
左から、フラワーアンドグリーンプランニング・鈴木祥子氏 / 坂本氏。株式会社シンシア・西森氏 / 服部俊幸氏。

株式会社シンシア

西森潤氏

http://www.sincere-inc.jp/

フラワーアンドグリーンプランニング

坂本祐子氏

http://flowerandgreen.com/

公開:2015年4月27日(月)
取材・文:中野純子氏

*掲載内容は、掲載時もしくは取材時の情報に基づいています。